【解説】ヨーロッパ「観光解禁」への長い道のり

2020/6/9

「トラベルバブル」の是非

西欧諸国において、新型コロナウイルスの脅威が少しずつ弱まっていく中、夏の観光シーズンが近づいている。
各国のリーダーたちは、緊急事態の中で慌ただしく断行された国境封鎖をどのように解除していくべきか、難しい判断を迫られている。
欧州委員会はEU加盟国に対し、観光の再開に向けて調整を行うよう、強く働きかけている。もっとも、各国の方針はバラバラだ。
イタリアやドイツでは、広範な対象に向けて、早期に国境を開こうとしている。一方で、スイス、デンマーク、バルト三国などの国々は、入国を許可する対象国を限定する、いわゆる「トラベルバブル(注:安全な“バブル=泡”の内側に限って旅行の選択肢を増やすという考え方)」を選択した。
どちらの方法に対しても批判はある。
トラベルバブル(安全な“通路”に例えて「トラベルコリドー」とも呼ばれる)の設定は、混乱の原因になりかねないうえ、旅行者を差別しているように見られる恐れがあると、ヨーロッパの有識者の一部は考えている。
とはいえ、ウイルス流行のレベルが著しく異なる国の間で国境が開かれると、感染拡大を招く恐れがある。各国当局としては、是が非でも避けなくてはならないシナリオだ。
実際のところ、これまでに発表されている各国の方針は、いずれも重大な「ただし書き」付きと言える──新型コロナウイルスの流行に揺り戻しが見られるようであれば、国境は再び封鎖されなければならない。
「旅行解禁」を急ぐドイツのハンブルク市(Andreas Meichsner for The New York Times)

「入国制限」は当面続く

「夏の観光シーズンを実現するために、感染の第2波という代償を支払うようなことがあってはならない」。ドイツのハイコ・マース外務大臣は、先月のインタビューでそう述べている。