【小林弘幸】睡眠の質を高める「3行日記」と3つのルーティン

2020/6/10

理想の睡眠時間はあくまで目安

自律神経のバランスを整えるには、質の良い睡眠をとることも重要です。
心身の健康を維持したり、仕事のパフォーマンスを高めたりするための睡眠時間は、1日7時間前後が理想とする調査報告が多くあります。
(写真:baona/iStock)
しかし、適切な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても違ってきます。一般的には、年齢を重ねるごとに、睡眠時間が短くなる傾向があります。
私自身は、若い頃から1日の平均睡眠時間は6時間未満でした。最も多忙だった時期は3〜4時間睡眠でやってきましたし、50代後半の今は5時間程度です。
おそらく多忙なビジネスパーソンも、6時間以上の睡眠時間を確保するのは難しいという人が多いのではないでしょうか。
理想の睡眠時間はあくまで目安と考えて、時間よりも、目覚めたときに「ぐっすり眠れた」と感じられる質を重視すればいいと、私は考えています。
(写真:Nattakorn Maneerat/iStock)

寝入りの90分の睡眠を深める

睡眠の質を高めるには、寝入りの90分が肝心です。一般にも知られているように、睡眠には浅い眠りと呼ばれるレム睡眠(脳は働いているが、体は休んでいる状態)と、深い眠りと呼ばれるノンレム睡眠(脳も体も休んでいる状態)があります。
眠りについて最初に訪れるのは、深い眠りのノンレム睡眠。このノンレム睡眠をいかに深めるかが、その日の睡眠の質を左右します。
寝入りの90分のノンレム睡眠を深められれば、自律神経を交感神経優位から副交感神経優位へとスムーズに切り替え、細胞のダメージを修復したり、記憶を定着させたりといった睡眠の機能を高め、心身をリカバリーすることができます。
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)/順天堂大学医学部 教授、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年埼玉県生まれ。87年順天堂大学医学部卒業。92年同大学大学院医学研究科修了。 ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。95年順天堂大学医学部総合診療科に大学病院では日本初となる便秘外来を開設。2006年同総合診療科、病院管理学教授に就任。国内における自律神経研究の第一人者、腸のスペシャリストとして、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのパフォーマンス向上指導に関わる。『聴くだけで疲れがとれる 自律神経リセット』『「寝入りが9割」の睡眠技術』(ポプラ社)、『心穏やかに。人生100年時代を歩む知恵』(齋藤孝氏との共著)『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』(6月17日発売、プレジデント社)などの著書のほか、メディア出演も多数。
この寝入りの90分のノンレム睡眠中には、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンの分泌が活性化されます。
成長ホルモンは傷ついた組織を修復し、新陳代謝を促すなど心身の活力やアンチエイジングにも関わるホルモンです。
成長ホルモンの分泌は、かつては夜の10時から深夜2時ごろの時間帯に活性化すると考えられ、その時間帯に眠っていることが大切だとされていました。
しかし、今では時間帯よりも、寝入りの90分=最初のノンレム睡眠の質が重要だとわかってきています。
ですから、寝入りの90分のノンレム睡眠が浅ければ、早い時間に就寝しても、長い睡眠時間をとっても、成長ホルモンの分泌は低下することになります。

就寝時にもルーティンを

私は寝入りの90分の質を高め、短時間の睡眠でもぐっすり眠るために、就寝時にもルーティンを作っています。