【提言】日本は「デジタル国家」に脱皮できるか 

2020/5/13
新型コロナウイルス対策の一つの鍵を握るのが「接触確認(コンタクトトレーシング)アプリ」だ。
コロナ感染者との「濃厚接触者」にアラートを通知するもので、すでにシンガポールやオーストラリアなどでは導入が進んでいる。
日本では、3月末にソースコードを公開した「COVID-19 Radar Japan」を皮切りに、民間のエンジニアコミュニティがアプリ開発に取り組んできた。
その動きを受け、4月下旬からは内閣府の「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」が「公式アプリ」の検討に着手。5月中のリリースを目指して準備が進められている。
マイクロソフトに所属しつつ、パーソナルデータの保護に取り組むITコミュニティ「MyData Global」の理事を務める安田クリスチーナ氏は、今回、民間の接触確認アプリの開発を支援した一人だ。
今回の取り組みを通じて、さらに政府がITの力を駆使するために、必要なことが明確になったという安田氏。日本にもGovTechを根付かせるためには何をすべきなのか。当事者の視点から寄稿してもらった。

行政のアップデートは不可避

新型コロナウイルス感染症は、日本全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を暴き出した。
自宅勤務中も押印するために出社せざるを得ない「ハンコの壁」の打破や金融業界におけるビジネスチャットの本格導入の実施など、各業界がICTシステムの導入やプロセスの見直しを含めたデジタル化を実行に移す必要性を突き付けられている。
政府対策本部会議(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
昨今では、若林恵氏の書籍『Next Generation Government 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』(日本経済新聞出版)など、産業のデジタル化とともに加速する生活のデジタル化のボトルネックとならないように、行政システムのアップデートが必要だという議論もされるようになってきた。
アフターコロナの世界では、一日も早い経済回復や国力強化という意味でも、特に政府のDXを進めていく必要があると思う。