政府がPCR「陽性率」を正確に把握できない事情 12都県は厚労省の報告要求に応じず
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本件は、何であれ物事を決する際には、比較考量の上、優先順位を付けることが必要ということの実例といえる。
以下に、(ⅰ)「陽性率」(※検査実施人数のうち、陽性と判定された者の割合)が正確に出せない原因、(ⅱ)解決するためにどれくらい何をすることが必要か、(ⅲ)解決せねばならない度合い、という点について、検討してみたい。
(ⅰ)「陽性率」を正確に出せない原因は、例えば以下のようなことがある。
・検査をする機関が多くある上に、その検査結果が判明する日にちも、バラバラになりがち
・「検査人数」と「陽性者数」の間にタイムラグがある
・新型コロナでは、退院時の確認検査などで同じ人が複数回の検査を受けるため、「件数」と「人数」が一致しない。
・厚労省は、「件数」は検査機関から直接報告を受ける一方、「人数」は都道府県の情報を基にしている。
・「人数」の集計には都道府県でばらつきがある。4月下旬に入り検査全体の3~4割程度は医療機関が民間検査機関に依頼した分が占めるが、例えば東京都では、民間検査機関分は週1回しか報告を求めておらず、正確な検査数はすぐに反映されない。
(ⅱ)こうした課題を解消するためには、基準の統一や、国と地方や医療機関と保健所との調整等が必要になるが、今現在、自治体、保健所、検査機関、医療機関等の現場は、実際の検査実施や患者対応等に追われ、極めて逼迫した状況にある。
(ⅲ)自粛規制を緩和するための指標の一つとして「陽性率」を使うために、できるだけ現況を正確に反映した数値を出したい、という発想は、もちろん理解できるし妥当である。
ただ、そのために、なにがなんでも、分母(検査人数)と分子(陽性者の数)の時期や数の整合性を取るというのは、人材や時間にものすごく限りがある現状で、あえて、膨大な時間と手間を使うこととなり、必要な検査の実施が損なわれるなどのマイナスの方が大きいと考える。
「正確な数字を出すには多大な人手と労力がかかる。今は陽性者への対応を優先するしかない」という現場の言葉は、重い。
注目のコメント
ここの集計対象となっているPCR検査は、医療保険適用対象となる検査のはず。いつ何件検査して、何件陽性だったかは、最終的にNDBに入るのでは?
その前段階で集計する件数の基準が、何故にバラバラなのだろう?緊急事態宣言の基礎となるデータのレベルは、この程度なの?
>NDB(ナショナルデータベース)は厚生労働省が構築したレセプト情報・特定健診等情報データベースであり、国民皆保険制度の日本における保険診療レセプトの全数データです。
http://square.umin.ac.jp/ndb/index.htmlこの新規検査数に基づいた陽性率を正しく出せない点は、先日のニコ動で行われた首相インタビュー番組でも問題になっており、山中教授などはその場で
「正しく算出された新規感染者数によりR(再生産数)をウォッチしていくことで、制限を緩める道筋が描けるのでは」
というふうに詰めていたのだが、首相はまさにこの新規感染が正しく出せていない点が問題となっていることは認識しており
「保健所は大変な状況だけど出せるように頑張ってくださいとお願いしている」と言っていたと記憶する。
それを聞いて国民として素朴に思うのは「お願いするほかにできることはないんだろうか?」ということなのだが。
元厚労官僚の豊田先生の見解もざっくり言うと「現場が人が足りてない状況でやっても混乱するので今はできません」という話なんだろうが、「知恵を出す」「人を出す」では解決しえない世界であるということなのだろうか。
検査設備や検査技師を増強するというような極めて専門的な世界とは異なるのでは、というのはあくまで外野から見える風景にすぎない、ということなのか。