【亀山×家入】SNSに宗教。人はなぜ「居場所」を求めるのか

2020/3/29
DMM.com会長の亀山敬司氏が各方面からゲストを迎える、「亀っちの部屋」Season2。脱力系ながらビジネスの本質をつく対談企画だ。
今回のゲストは家入一真氏。引きこもり時代を経て21歳で「paperboy&co」を創業、史上最年少でジャスダック上場を果たす。2011年にはクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を立ち上げ、現在は100を超えるスタートアップへの投資を行う。
対談では、居場所の話からSNSや宗教、起業家のメンタルヘルスまで、哲学的なトークが繰り広げられた(聞き手:NewsPicksプロアナ・奥井奈々)。
*本記事は、音声番組「亀っちの部屋 Season2」から一部を抜粋、編集したものです。音声はこちらからお聞きください(マナーモードを解除してください)。

全国に広がる若者の居場所

奥井 今日のゲストは家入一真さんです。家入さんはクラウドファンディング「CAMPFIRE」の創業者であり、100社を超えるスタートアップを支援してきた投資家の顔を持つ一方で、シェアハウス「リバ邸」のファウンダーでもあります。
亀山 へぇ~。「リバ邸」って世界展開してるんだ。
家入 全部で約60あるリバ邸のうち、3~4軒ほどですね。
亀山 地方にもあるの?
家入 ええ。最初は六本木にシェアハウスを作って「いつでも来ていいよ」と開放したら、日本中からさまざまな若者がやってきて、泊まっていきました。
滞在した若者のうち、何人もが地元でリバ邸を始めてくれてるので、今は日本中の地域地方に広がっています。
家入 一真(いえいり・かずま)/CAMPFIRE代表
1978年、福岡県生まれ。いじめがきっかけで高校を中退後、ひきこもりに。就職後も対人関係に悩み「誰も会わずに仕事がしたい」と起業を決意。2001年、自宅で「ロリポップ!レンタルサーバ」をリリース。2003年に株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)を創業。2008年最年少でJASDAQ市場へ上場。退任後は「CAMPFIRE」「BASE」などのウェブサービスを立ち上げ、取締役に就任。悩める若者の立場に立ち、シェアハウス「リバ邸」などを展開。
奥井 リバ邸を作ったのは、どんな理由があったんですか。
家入 それは、僕自身が中学生のときにひきこもりを経験したからです。学校に行けなくなった途端、居場所といえば家しかありません。でも親に申し訳ない気持ちが強くて家にいるのもつらいんですが、かといって他に行く場所もなかった。
当時の僕のような生きづらさを抱えた若者が、学校や会社でもなく家でもない、何の肩書を持たなくても、人と人として付き合える居場所が必要だと思い、リバ邸を開きました。
亀山 初期のころ住んでいた鶴岡くん(「BASE」創業者の鶴岡裕太氏)や、他にもいろんなやつが起業したよね。あの頃、彼らが起業するイメージはなかったな。
家入 いやあ、僕も思わなかったです。リバ邸で暮らしていると、生きるコストが低いから、自分の好きなことに時間を費やすことができる。でも起業家を輩出することを目的にしていたわけではないから、今の状況には驚いています。

居場所を失いつつある弱者たち

奥井 「居場所」といえば、家入さんはNewsPicksの討論番組「UPDATE」に出演されたときも、印象的な発言をされていました。
家入 番組に出演する少し前に、大阪・西成(にしなり)の「あいりん地区」の視察に行ったんです。そこで感じたことが、SNSと共通していたので。
亀山 路上生活者や日雇い労働者が多いエリアだね。で、どんなことを言ったの?
家入 あいりん地区は今まで、治安が悪いと言われてきた場所ですが、さまざまな資本も入り始め、安全できれいな街になりつつあるんです。
たしかに治安は良くなります。でもそうなると、あの場所でしか生きていけなかった人たちが追い出されて、彼らの居場所が今、なくなりつつあるそうなんです。これを「ジェントリフィケーション」と呼びます。
あいりん労働福祉センター。2019年4月に閉鎖し、現在は移転している(写真:河口信雄/アフロ)
亀山 なるほど。
家入 この現象は、インターネットでも同じなんじゃないかとお話したんです。初期のインターネットは誰もが使うというより、社会になじめない人たちが使っていた側面がある。「2ちゃんねる」でしか生きていけない人たちも、いっぱいいたと思うんです。
奥井 そうですね。
家入 でも彼らは高齢化するし、ネット自体もブログ、Twitter、Facebookと一般化していった。そうやってプラットフォームが変わるたびに、そこにしかいられなかった人たちが居場所を失っているんじゃないかと。
そういう人たちにとってSNSは、承認や自己表現への欲求というよりも、「マズローの5段階欲求」でいえば低いレベルの、安全・安心への欲求をまず満たす場所なんじゃないでしょうか。