【星野明宏】元電通マンの校長、授業オンライン化を速攻実現

2020/5/31
様々な産業に甚大な影響を与えている新型コロナウイルスの脅威は、学校教育のカタチも大きく変えようとしている。

2月末に突如打ち出された臨時休校要請で全国の学校現場が大混乱に陥る中、早急に授業のオンライン化を実現した先行モデルとして注目された静岡聖光学院中学校・高等学校。

旗振り役となった校長の星野明宏氏は、元電通マンで弱小ラグビー部を花園に出場させたラグビー指導者という異色の経歴を持つ。「自分にカリスマ性はない」と語る星野氏独自のリーダーシップとは。インタビューは4月21日にリモートで行った。(全7回)
星野明宏(ほしの・あきひろ)/静岡聖光学院中学校・高等学校 校長
1973年東京都生まれ。立命館大学卒業後、1995年電通に入社。2002年、電通を退職し、筑波大学大学院で教職課程を取得。2007年に静岡聖光学院中・高等学校の教員となり、ラグビー部の監督に就任。2009年、2010年と2年連続で花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会)出場に導く。2012年より教頭職、2019年より現職。また2015年より2期にわたりラグビーU17日本代表監督、2017年にはラグビーU18日本代表監督も務めた。著書に『凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。』(すばる舎)がある。

今しか変われるチャンスはない

遡ること3カ月。2月半ば、私は480人の生徒を預かる学校長として、大きな決断をし、準備に取り掛かろうとしていました。
当初は「中国で発生した風邪によく似た感染症」という扱いだった新型コロナウイルスがついに日本に上陸し、国内感染についての報道が頻繁に流れるようになった頃です。
これは深刻な事態が迫っている。早急に手を打とう。そして、今しか変われるチャンスはないかもしれない――。
指示を出したのは、校内の多教科の教員8人で編成されるICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)チームのメンバーです。
「学校の教育機能をオンライン下でできる限り高いレベルで継続してほしい」と伝えました。
安倍首相による全国一斉休校要請が発令される2月27日(木)よりも前に、当校は独自に“休校”を決めたのです。より正確に言えば、「生徒の安全確保のために登校を停止するが、学校機能は止めない」という決定でした。
2月28日(金)にはホームページ上で方針を発表し、翌週の3月2日(月)から初めてのオンライン授業に踏み切りました。
といっても、決してすべてがスマートに準備できていたわけではありません。
正解がない中で「とにかくオンラインでできることをやってみよう」と試行錯誤を繰り返し、日々ベターを上乗せしていったのが実情です。