企業の明暗を分けるのは、「出社しなくても仕事ができるか」

2020/3/18
 2020年、東京五輪開催に合わせて“リモートワーク元年”になると期待されていた日本社会。図らずも、新型コロナウイルスの影響により、リモートワークは企業にとって切迫した課題となっている。

 世界的な緊急事態を機に、欧米と比較してリモートワーク導入率が低かった日本の働き方はどう変わっていくのか。

 “オフィスのない会社”ソニックガーデン代表取締役社長の倉貫義人氏と、企業向けビデオを中心としたコミュニケーションプラットフォーム「Zoom」を手掛けるZoom Japanカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏に、リモートワークの浸透がもたらす働き方の未来について聞いた。
バーチャルで“オフィスの機能”を再現
佐賀 今回のような世界的な緊急事態において、国からもリモートワークが推奨される今、普段から当たり前のようにリモートワークをしている企業と、「何かあったときに取り組もう」と思っていた企業とで、就業環境の違いが浮き彫りになっていますね。
倉貫 それは実感しています。この緊急事態のさなかでも、完全リモートワークが通常業態であるソニックガーデンの社員は、誰一人として働き方を変える必要がありませんでした。
 お客様との打ち合わせも、メールやチャット、ビデオ会議が基本で、普段からリアルの場で対面することは一切ない。
 当社のようにオフィスを持たない企業経営は、ナレッジワーカーだからできることだと思われるかもしれません。
 ですが、どの業界のお客様からも「コミュニケーションがとりにくい」「リアルに対面したい」とは言われません。要は、リモートワークは“慣れ”なんですよ。
佐賀 これまでリモートワークに積極的でなかった組織では、突発的に必要に迫られても、なかなか迅速に動けないんですよね。
 実際に、新型コロナウイルス感染が重大な問題として騒がれ始めた1月中下旬の段階で、感染予防のためのリモートワークに動き出した企業は、ほとんどありませんでした(※)。
※GMOインターネットグループは1月26日、2週間のリモートワークによる在宅勤務推奨を開始。現在は無期限の延長に変更している。
 今年は、「東京五輪が開催されるから、そのときやろう」と考える企業が多くあったとは思います。でも、イベント時に限定的にやろうと考える時点で、平時での現場への浸透は難しい
 普段から“業務生産性が上がる働き方”として進めていれば、地震や自然災害、今回のような世界的な緊急事態にも、スムーズにリモートワークに移行できたのではないかと思います。
倉貫 そうですね。現場に出なくてはならない職種もたくさんあるので、フルリモートは現実的に難しい面もあると思います。ただ、リモートで普段からパフォーマンスを上げられる職種に関しては、働き方の選択肢として当たり前に持っているべきでしょう。
佐賀 今回のように、「風邪の症状があれば自宅待機」「微熱が出たら外出禁止」などと言われても、リモートができるコミュニケーションツール、システム体制、社内ルールや風潮が整っていなければ、「今日はリモートで」とはすんなり言えませんよね。セキュリティ上、現場に行かないと触れられないものもあるでしょう。
 本社オフィスを持たないソニックガーデンでは、どうオペレーションを進めているのですか?
倉貫 私たちは、自社開発した仮想オフィス「Remotty(リモティ)」に全員“出社”して仕事をしています。
 リモートワーク導入には「一人で仕事をするのは孤独」「同僚に話しかけてブレストができない」「社員がちゃんと働いているのか不安」といった声があります。
 ですが、雑談したり気軽に相談できたりすることを“オフィスの機能”と定義するなら、コミュニケーションツールでも再現できます
 仮想オフィスでは全員がビデオで顔を見せて“出社”し、チャットで誰にでもすぐに話しかけられるから、孤独感もありません。深いディスカッションが必要であれば、「今から“会って”話そう」とビデオ会議「Zoom」を立ち上げます。
 一人で集中したい業務から、「ちょっと聞いていい?」というライトな会話、顔を合わせた会議への移行がシームレスに行われています。
画面右のタイムラインには、社内の会話が全部流れてくる。ビデオ会議が必要であれば「ミーティングが終わったら声をかけてください」と話しかけ、ZoomのURLを送っておけばいい。両者がアクセスすれば顔を合わせた会議が始まる。(画像提供:ソニックガーデン)
リモートワークが広げる可能性
佐賀 お話を伺って、雑談から会議までをストレスなく移行できることは、リモートワークのハードルを下げる最大のポイントだと思いました。
 Zoomのビデオ会議は、従来の会議システムで起こりがちな音声の途切れもなく、映像の動きにタイムラグも生じないので、対面の会議と変わらないコミュニケーションが成り立ちます。
佐賀 また、Zoomのチャット機能で「ねえ、ちょっと聞いていい?」と話しかければ、ライトな会話から顔を合わせる会議へシームレスに移行もできます。
 ソニックガーデンさんのバーチャルオフィスは、さらにその進化形。物理的なオフィスがなければコミュニケーションの行き来が難しいという思い込みを、軽々超えていっていますね。
倉貫 当社も、2011年に創業した当時は、渋谷にオフィスを構えていました。それを廃止したのは、地方在住で在宅勤務している社員の数が、オフィスに通える社員より増えたからです。
 当初は、兵庫県で在宅勤務の社員とオフィスを、常にビデオ電話でつないでいました。翌年から岡山県に住むメンバーが増えたので、複数人通話できるビデオ電話をつないでおくことに。
 すると、誰か1人に話しかけると、関係ないほかのメンバーのイヤホンにまで会話がダイレクトに聞こえてしまい、業務に支障が出始めました。
 かといって、通話をやめてしまうと、ちゃんと働いてくれているかわからないし、メンバー間で話しかけるタイミングがわからずに社内コミュニケーションが停滞していく。
 悩んだ結果、思い至ったのが自前で仮想オフィスを作ることでした。
倉貫 仮想オフィスであれば、一緒に働いている仲間の顔が見えてチーム意識も持てるし、ちょっとした相談があっても話しかけやすい。物理的なオフィスで必要な機能が、仮想空間ですべて実現できるようになったんです。
 すると必然的に、オフィスは必要なくなる。現在は、42人の社員が18都道府県から“出社”しています。
佐賀 なるほど。リモートでは、周りとの雑談から思いがけないアイデアが生まれるといった化学反応が起こらない。そう思う方は多いですよね。
 ですが、チャットやビデオ会議のコミュニケーションツールがもっとシームレスにつながれば、空間にこだわる必要はなくなりますね
倉貫 もう一つ重要な観点として、リモートワークが広まれば、採用の選択肢も広がります。これは日本全体にとって非常に大きなメリットです。
 当社の社員は、夫や妻の転勤に伴って遠方に引っ越すことになっても、会社を辞めることはまずありません。移住にしてもそう。引っ越し当日だけ休んで、翌日からまた出社できます。
 その人が国内外どこで暮らしていようと、会社にとって必要な人材であれば採用できるのです。
今回の対談は、一部Zoomを通じて行った。音声がクリアでコミュニケーションがスムーズ。ビデオ会議でよくある“微妙な間”も生じない。
日本でリモートワークが普及しない理由
倉貫 新型コロナウイルスの影響はさておき、今、ビデオ会議の普及率は一気に高まっているんじゃないですか?
佐賀 そうですね。Zoom自体のシェアもユーザー数も、グローバルで急激に拡大しています。日本でも、このようなグローバルでの急激な需要の高まりに近い傾向が表れていて、国内におけるZoomの市場シェアおよびユーザー数はこの1年で一気に伸びました。
 昨年比で、新規契約金額は約2倍、売上額は約3倍に。顧客社数は、有償契約だけでも2500社から3500社超まで増加しています。
 ただ、世界的なビデオ会議自体の普及スピードを見ると、アメリカや欧州が毎年2桁成長を続けているのに比べて、日本はまだまだ普及スピードが遅い。ここが大きな課題です。
倉貫 アメリカはそもそも国土が広いから、リモートワークができる環境がないと、仕事ができない。地理的背景はあるでしょうね。
佐賀 Zoomのアメリカ本社はカリフォルニア州にあるので、それは実感しています。移動距離が長く、渋滞もひどい。出社する時間がもったいないからリモートでできるならやろう、というマインドがベースにあります。
 それに対して、日本は“会議室での会議”が本当に多い。集まることの安心感にとらわれていますよね
 加えて、既存のテレビ会議システムの問題も大きかった。多額のコストをかけてシステムを導入したけれど、つなぎ方が難しいし、音声が聞き取りづらいし、頻繁にフリーズするしで、全然使えない。
 そういった機能性の低さが、心理的にも物理的にもビデオ会議を導入するハードルとなって、「やっぱり会議室に集まるのがわかりやすくていいね」と、思考停止を引き起こしているのだと思います。
倉貫 当社の会議はすべてZoomを使っていますが、複数画面を立ち上げても機動性がまったく変わりません。音声や映像が安定していて、品質の高さを感じます。
佐賀 ありがとうございます。既存のビデオ会議システムの多くは、20年以上前のコンピューターの性能やネットワーク環境をベースにグランドデザインされています。
 一方、Zoomは9年前にゼロから作り始めたので、従来のシステムとはまったく異なる世界観。端末側のCPU(中央処理装置)を使って分散処理させることで、今のスムーズな画面共有ができています。
リモートの壁を壊す、Zoomの機能性
倉貫 APIによる外部アプリケーション連携の柔軟性も、Zoomの活用しやすさの一つですね。自前の仮想オフィスとZoomが連携できたからこそ、シームレスな社内コミュニケーションが成立しています。
 また、僕らは「必ず出社する」というルールはあるものの、完全フレックス制で、働き方は各自に任せています。
 ただし、仕事をする上で、相談し合ったり知識を共有したりといったチームワークはすごく大切にしています。
 ビデオ会議ができるコミュニケーションアプリはいろいろありますが、Zoomなら開催時間や参加人数、画面共有といったデータを企業側が把握できるので、誰がいつどれくらいZoomを使っているのか、コミュニケーションがどれほど活性化されているのかがわかって、経営者としても安心です。
Zoomのダッシュボード画面では、アカウント管理者が、全体の使用状況からミーティングのライブデータまで、さまざまな情報を確認できる。通信に関する問題が起こっても、デバイス側かネットワークか、またはサービス自体の障害なのか特定しやすく、トラブルシューティングに役立つ。
佐賀 実際どのくらい使われているかがデータで見えないと、投資対効果もわかりませんしね。
倉貫 そうですね。Zoomの画面共有機能も活用しています。その場で議事録をとり、全員が内容を理解しながら話を深められるのは、ホワイトボードを使ってアイデア出しをするのと同じ感覚ですね。
 空中戦で話をすると、どうしても会話だけで終わってしまうし、議事録をあとで共有するというのも旧態依然としていて非効率。メモをそのまま記録できるのは、チームで動く上でとても有効です。
佐賀 活用していただけて嬉しく思います。2020年は想定外の事態も重なって、リモートワークが一気に加速する年になりつつあります。
 私も日々、対面で打ち合わせしているお客様に「次はビデオ会議でやりましょう」と提案しているのですが、受け入れてもらえる度合いが高まってきました。
 ただ、業態と業務内容によってリモートのあり方、できる範囲は異なります。これからは、工場や学校など、組織の特徴に応じたリモートシステムの開発、コミュニケーションのあり方を丁寧に提案していく必要があるでしょうね。
倉貫 僕は、リモートワークやビデオ会議の普及によって「会う」の定義が変わっていくだろうと予想しています。僕らが社内で「会いましょう」というときは、「Zoomで会いましょう」を意味しています。「ちょっと電話で話しましょう」に誰も違和感を持たないのと同じです。
佐賀 そういう世界を実現するためにも、チャット上での会話も、音声通話も、映像付きのビデオ通話も、シームレスに行き来できるようにしたい。
 現状、さまざまなツールに分かれている遠隔コミュニケーションのすべてをZoomで統合し、“コミュニケーションのインフラ”を目指したいと思っています。
(構成:田中瑠子 取材・編集:中道薫 撮影:林和也 デザイン:砂田優花 取材協力:WeWork日比谷パークフロント)
※本記事はZoom認定ディストリビューターであるSB C&S株式会社のスポンサードにより制作しました。