【佐々木大輔】人と同じことをやっていてはダメ

2020/3/23
スモールビジネスを、世界の主役に。そんなミッションを掲げ、急成長を遂げているのが「クラウド会計ソフト freee」など、中小企業向けバックオフィス機能のプラットフォーム事業を展開するfreeeだ。

手作業に頼っていた経理作業の自動化という“新常識”を世の中に広め、2019年末にはマザーズ上場も果たした。Googleから転じて8年前に創業した佐々木大輔氏が語った仕事の哲学とは?(全7回)

実家は「町の美容室」

「日本の中小企業のパワーを最大化したい」という僕の思いの源流をたどると、生まれ育った家庭環境が多少影響しているかもしれません。
僕の実家は、東京都台東区で美容室を営んでいます。よくある「町の美容室」といった感じで、1階が店舗で、2階が家族が暮らす住居。
実家の美容室
両親から「勉強しろ」と言われた記憶はなく、食卓の話題は、テレビに映る芸能人の髪形ばかりでした。
物心ついた頃から、「将来は店を継ぐんだろうなぁ」と思っていたので、子どもの頃の僕が今の姿を見るとビックリするでしょうね。
ただ、僕が小学1年生の頃に亡くなった祖父は、なかなかユニークな経営者だったようです。
戦後の復興期に美容室を開業した後、「マダムの上客を呼び込もう」と、当時は珍しかった男性の美容技術者を採用したり、差別化戦略を練る視点にシンパシーを感じます。
僕の実家の美容室のような個人商店も、中小事業者の一つです。家族経営という限られたリソースの中で、日々やりくりしながら工夫し、毎月の収支を管理している。
そんな両親の姿を見て育ったことは、今の事業を立ち上げた動機に深く関わっているのかもしれません。

不純な動機で進学塾へ

両親はそれほど教育熱心ではありませんでしたが、たまたま通っていた公立小学校が文部科学省の研究対象になっていて、壁のない教室や主体性を育む授業形式といった実験的教育が実施されていたため、教育熱心な家庭の子が校区外からも通ってきていたんです。
そういう家庭の同級生は塾通いをする子も多く、「一緒に塾に行って、休み時間にトランプで遊びたい」という不純な動機で、僕も進学塾に通うように。
けれど、友達は真面目に勉強しているから、あっという間に上のクラスに昇級しちゃう。クラスが別になると、トランプで遊べなくなるので、僕も頑張って勉強する。
ある時、「よし、この問題集を3カ月でマスターするぞ」と決めて本気で取り組んだら、トップクラスに。その勢いで開成中学に受かってしまったので、「あの佐々木君が?」と周りはビックリしていました。
開成中学に入学した頃

開成中学で自我の危機

この経験は、後々にも生きる「短期集中で課題をクリアしていく」という僕流のラーニングスキルへと発展するのですが、開成中に入ってからの僕は、完全なるアイデンティティ・クライシスに陥っていました。
つまり、何をしても突出することができない。
勉強はもちろん、スポーツ、音楽。ちょっとやそっと努力したところで、かなわないヤツがこの世にはたくさんいるのだと打ちのめされました。