[横浜市 18日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は18日、横浜市内で臨時株主総会を開いた。内田誠・社長兼最高経営責任者ら4人を新たに取締役として選任する議案が可決された。販売不振で2019年10―12月期は11年ぶりの最終赤字に転落、20年3月期期末配当も無配とした。内田新体制は厳しい荒波の中での船出となった。

<業績改善に向け「クビ」も覚悟>

内田社長は、期末配当無配を「重く受け止めている」と陳謝。「業績が著しく落ちた責任はすべて社長の私にある」と述べ、経営トップの不正や経営の混乱でブランドのイメージが毀損(きそん)しているが、回復に向けて「もう少し時間をいただきたい」と理解を求めた。

株主からは業績悪化や株価下落などに対する厳しい批判が相次いだ。日産の株価は17日に一時498円と約11年ぶりに500円を割り込み、総会当日の18日もさらに下げる展開となった。

ある株主は「次回の株主総会で株価が500円を切ったら経営責任を取れ」と要求。内田社長は、業績が悪化した際には「すべて私の責任、経営層の責任」と明言。「株主の目に見えるような形で会社のかじ取りを行うことをコミットする。代わりに今後そのような状況が見えない場合には、私をすぐにクビにしてほしい」と覚悟をみせた。

多くの株主から要求が相次いだ役員報酬カットに関して内田社長は「現時点で対応について申し上げることはできない」と明言を避けたが、5月に予定する修正版の中期経営計画発表時に「役員報酬の削減なども含めて説明する」と述べた。

<資本提携見直しの話し、一切せず>

内田社長はまた、日産に4割超を出資する仏自動車大手ルノー<RENA.PA>や三菱自動車<7211.T>、他社を巻き込んだ資本関係見直しの話は「一切していない」とも語った。特別背任事件などで起訴され、昨年末に保釈中に国外逃亡した前会長カルロス・ゴーン被告には「法的手続きを含めて毅然と対応する」と答えた。

同社は12日、ゴーン被告に対し100億円の損害賠償請求訴訟を横浜地裁に起こしたが、永井素夫社外取締役は総会で、損害賠償を追加請求する考えを示した。金融庁からの課徴金や今後の刑事裁判で罰金が科せられる可能性、海外訴訟に伴う和解金発生の可能性などがあるため「そういったものを第2弾としてさらに民事で損害賠償の提起をしていく」という。

新たな取締役には、日産から内田社長と坂本秀行副社長、ルノーのピエール・フリューリォ筆頭独立社外取締役、三菱自から招いた日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)の4人が選任。坂本副社長は取締役候補だった副COOの関潤氏が就任から1カ月も経たずに辞任、退社したことに伴い、急きょ抜てきされた。

この日の臨時株主総会をもって、前社長兼CEOの西川広人氏、前COOの山内康裕氏は取締役から退任する。前ルノーCEOを解任されたティエリー・ボロレ氏は昨年11月に辞任している。

<期末無配に「裏切られた」との声>

臨時株主総会の開催はゴーン被告を解任した昨年4月に続き、同一年度で2度目。ルノーや三菱自との3社連合をどう活用して業績を回復させるか、内田新体制の手腕が問われる。

4年前から5000株を保有する年金生活者(横浜市出身、79)は「配当の良さ」から日産株を購入したといい、期末配当の無配は「ずいぶん裏切られたという感じ」と落胆。「株は1200円くらいで買っているから今は売れない」と述べ、「新経営陣に期待することは全然ない」とあきらめの雰囲気だった。

昨年株主になった会社員(宮城県出身、37)は、新経営陣には「今まで起きた問題を片づけてほしい」と話し、「長期的には業績はある程度は回復すると思う」と期待を込めた。

*内容を追加します。

(白木真紀  取材協力:新田裕貴 編集:内田慎一)