【解説】韓国「パラサイト」、世界初アカデミー受賞の真相
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韓国映画と政治状況は無関係ではありません。そして、世界における映画は政治経済環境問題…どれとも深く結びついています。日本では文化が政治に近づきすぎると敬遠されるきらいがありますが、文化は生活に深く根付いているもので、日々感じる問題を文化に反映させることは自然の成り行きだと思います。
だからインクルージョン政策や#oscarsowhiteといった運動が起きるわけで、『パラサイト』が真摯に現実と向き合った作品であったために、世界中で受け入れられたのでしょう。
アカデミー賞は昨年、Netflixの『ROMA/ローマ』には作品賞を与えませんでした。配信作品を映画とは認めない、という層がまだ多くいるからです。でも、『パラサイト』の快挙はNetflixをはじめとする配信が世界中に行き渡ったことによるインクルージョンの賜物ではないかと思います。外国語であること、字幕であることにこだわらず、おもしろいものはおもしろいと認めることができるようになった。あるいは、ポン・ジュノ監督がゴールデングローブ賞の外国語映画賞授賞スピーチで述べた「わずか1インチの字幕というバリアを乗り越えれば、素晴らしき映画の世界が広がる。わたしたちの共通言語は“シネマ”だけ」にあるように、多くの観客が1インチを飛び越えることができるようになったのでしょう。
ちなみに、授賞式で最後に「韓国映画の観客に感謝します」と述べた女性はCJエンタテインメントの副会長Miky Leeさん。彼女の長年の尽力なくして、いまの韓国エンタテイメントの躍進はありません。https://www.hollywoodreporter.com/features/meet-important-mogul-south-korean-entertainment-1275756?utm昨日の授賞式でポン・ジュノ監督とともに注目を集めた人がいました。それは韓国最大のコンテンツ企業「CJエンターテインメント」の副会長であるMiky Lee(イ・ミギョン)さんです。
私はクーリエ・ジャポンで「なぜ世界は韓国カルチャーに熱狂するのか」という連載コラムを書いていますが、以前「CJエンターテインメント」のビジネスモデルについて分析したことがあります。
➡https://courrier.jp/columns/181735/
映画『パラサイト』の受賞の時、なぜ「CJエンターテインメント」の副会長がスピーチをしたのか、韓国国内でも議論になるほど話題になっています。しかし、映画『パラサイト』が作品としてどんなに素晴らしいと言われても世界各国に広げられてなかったらアカデミー賞の受賞までは届かなかったかもしれません。そこには「CJエンターテインメント」の力が働いたのです。「CJエンターテインメント」は映画『パラサイト』の総製作費の約14億円のなか、約12億5000万円ほどを出資し、韓国国内はもちろん、世界各国の配給を担当しています。今までのK-POPやK-MOVIE、K-DRAMAの世界進出を成功してきた「CJエンターテインメント」だからこそ可能だったところもあります。実際に映画『パラサイト』は、Miky Lee(イ・ミギョン)さんの積極的な支援をもとに全世界192カ国で公開されました。
つまり、映画『パラサイト』が世界初アカデミー賞を受賞した背景には、韓国カルチャーのグローバル戦略が大きな役割を果たしたと言えると思います。「パラサイト」とポン・ジュノ監督という奇才を生んだ韓国映画の歴史を解説しました。政治との緊張が常にありました。
決して良い環境ではなかったなかで、一段と勢いづく韓国映画界、そして日常風景に溶けこみ始めた音楽、ドラマ、コスメなどのKカルチャー。Kカルチャーを分析していくと、日本のコンテンツ輸出という視点からも考えさせられることが少なくありません。
(記事で「パラサイト」についてのネタバレはありません)