[ワシントン 28日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は28日、世界経済に対する中期的なリスクとなり得る債務水準の上昇など、金融の脆弱性を緊密を注視する必要があるとの見解を示した。ただ、一段の金融緩和は解決策にはならないとした。

2019年は先進国と新興国の双方で数多くの利下げが実施され、その数は08年の世界的な金融危機以来の多さとなった。IMFはこうした一連の利下げがなければ、19年の世界的な経済成長率は0.5%ポイント低い水準にあったと試算している。

ただ、IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は、金融上の脆弱性が増大する中、景気循環サイクルの現時点で世界的に一段の金融緩和が実施されれば、経済成長が中期的に阻害される恐れがあると警告。金融上の脆弱性として、債務水準の上昇のほか、一部の市場や国で資産評価が伸長していることや、新興国市場に大規模に資本が流入していることなどを挙げ、「長期的に見ると、景気循環サイクルのこれほどまでに遅い時期での世界的な金融情勢の緩和のほか、金融上の脆弱性の増大で、成長が中期的に阻害される可能性がある」とした。

その上で、米国の高利回り市場で債務不履行率がすでに上昇しているほか、中国のオンショア、オフショア双方の社債市場でも債務不履行率の上昇が見られているなどと指摘。「現時点では波及的な影響が及ぶ兆候は出ていない」としながらも、政策担当者は台頭しつつあるリスクに留意し、「世界経済への衝撃によるマイナスの影響がこうした脆弱性で拡大される可能性の縮小」に向け対策を取る必要があると提言した。

その上で、昨年の世界的な一連の金融緩和で下向きリスクは抑制されたとしながらも、政策担当者は「増大する脆弱性が中期的に経済成長に対するリスクとして台頭することを防ぐために」カウンターシクリカル資本バッファーなどの他の政策ツールの利用に目を向ける必要があるとの考えを示した。