【辻愛沙子】未来はこうして作られる! Nittoのすごい技術を体験してきた

2020/2/4
Nitto 目の前に白い画面のディスプレイがありますが、文字や画像など辻さんには何か見えますか?
 いえ、真っ白で何も見えません。
Nitto では、この偏光板越しにディスプレイを見ると何が見えるでしょう。
偏光板越しにディスプレイを見ると画像が現れる。
 え!? これはどういうことですか? すごい、全然わからない。魔法みたい。
Nitto 偏光板がないとすべての光がモニターから発されるため、人間の目には真っ白にしか見えません。
ディスプレイに投影されている画像や文字、映像は、光を制御する偏光板があって、はじめて認識できるんです。
 知りませんでした。見せたい人にだけ見せる広告を作ったら面白そう。
電気や電池を使っていないのに、かざすだけで「見える・見えない」の世界があるとは、ちょっと魔法の領域です。
Nitto 偏光板の技術が、液晶ディスプレイの薄型化や大型化にも貢献しています。また、OLEDディスプレイのクリアな画像表示にも使われるなど、ウェアラブル端末などデバイスの進化とともに、偏光板も進化を続けているんですよ。
スマホやタブレット、PC、テレビ、車載ディスプレイなど、世界中のあらゆるディスプレイに使われている光学フィルム「偏光板」。

実は、この偏光板が光の透過を制御してくれるから、私たちはディスプレイに投影される文字や画像、映像を認識できるのだ。
Nitto 肌にフィットする粘着フィルムを手の甲に貼ってみてください。
手の甲にフィルムを貼っているが、どこに貼っているかわからないほど一体化している。
 どこに貼ったかわからないくらい薄いし、引っ張られる感覚もないです。皮膚みたい。顔に貼ってその上からメイクができたら、メイク落としをしない毎日が実現しそうですね。
Nitto 今は医療現場でガーゼ等をカバーしたり、シャワーの際に防水したりするために使われていますが、通気性に優れているのでフェイスペインティングなどにも使えます。剥がしてみるといかがでしょう?
 痛みが全然ないです。確かにこれなら、患部を保護した上で貼って剥がしても肌に優しそう。しかも、通気性があるのに防水してくれるとは驚きです。
医療現場で活躍している「優肌パーミロール®Lite」。8ミクロン、つまり0.008ミリという驚異の薄さで肌を保護する粘着フィルムだ。

その特徴は、まるで何も貼っていないかのようなつけ心地を実現させていること。患部を優しく保護し、水の侵入を防ぐ役割を担う。

Nitto この薄いシート、どんな特徴があると思いますか?
 なんだろう、想像つかないです。
Nitto 同じシートを挟んだ容器に水を入れてあります。下から空気入れで空気を送ってみてください。
真ん中にシートを挟んだ容器の上から水を入れ、下から空気を送っている。
 空気だけ通してる! これは面白い。液体の方が空気より大きいから空気だけ通す、ということですか?
Nitto そうです。このシートには小さな孔(あな)が開いていて、水は通さずに空気を通すので、たとえばスマートフォンのマイクとスピーカー部分に使われて、防水に役立てられています。
 なるほど、空気を通さない防水シートだと音も聞こえなくなってしまうから、空気を通すこのシートが役立つというわけですね。それにしてもずっと見ていられます(笑)。
Nitto 空気を通すということは熱も逃がすので自動車にも活用されていますし、ホコリを防いできれいな空気だけを通すので、空気清浄機や掃除機にも使われていますよ。
 いろんなところで生活を支えてくれているシートなんですね。小学校や中学校の物理や化学の実験を思い出します。もっとちゃんと勉強したらよかったと悔やまれますね(笑)。
「空気は通すけれど、水は通さない不思議なシート」。空気を通すから防水仕様の携帯電話や、熱・内圧を逃がす用途、ホコリも通さないためフィルター用途としてなど、生活のあらゆるシーンで幅広く活用されている。

1センチ平方メートルあたり数億個の孔が開いており、その大きさを調整すれば、通すものと通さないもののコントロールも自由だ。
Nitto 自動車の燃費を良くするためには鋼板を薄くする必要があるのですが、たとえば、右手に持ってもらった柔らかい鋼板で作られた自動車に辻さんは乗りたいですか?
軽量化するために鋼板を薄くすると強度は保たれない。
 いや、怖いです(笑)。
Nitto では、同じ鋼板でも中に補強材を貼ったこちらはいかがでしょう?
 硬いのに軽さは同じ。元はさっきの柔らかい鋼板なんですよね?
Nitto そうです。内側に熱を加えると硬くなる軽いシートが貼られているんです。
中に「ニトハード®」を貼ると軽いままで強度が保たれる(右の内側)。
 こういう技術って、どんなタイミングで考えるんですか?
Nitto お客様と一緒に考えることもあれば、私たちから提案することもありますよ。
「ニトハード®」は環境のために燃費改善に取り組んだ際に出た、鋼板を薄くして軽量化しても強度を保ちたいという課題を解決しています。
 なぞなぞのような課題に対しても技術で解決につなげているんですね。すごく社会にいいことをしている、サステナブルな会社だと思いました。
世界でCO2排出削減対策が叫ばれる現在。そのずっと以前に誕生したのが、自動車の燃費改善に寄与する「ニトハード®」。

燃費改善には自動車を軽量化する必要があるが、金属板を薄くしても強度を保つ必要がある。この軽さと強さを両立させた地球環境にも貢献する技術だ。
 コロコロにはいつもお世話になっています。
Nitto ありがとうございます。カーペットの掃除用が一般的だと思うのですが、変わっているのはスマホなどの画面についた皮脂汚れを取る「指紋コロコロ®ミニ」です。
皮脂を吸収する特殊な粘着剤を使っているので、試してみてください。
 すごい、これは欲しいです。スマホの画面はいくら拭いてもイマイチきれいにならないのですが、指紋コロコロミニは一撃ですね。
Nitto 布などで拭くと、皮脂汚れをただ引き延ばしているだけで取れていない汚れもあるのですが、「指紋コロコロ®ミニ」は特殊な粘着剤を施したローラーが皮脂をきれいに吸収します。
こういった身近な製品にもNittoの技術が使われているんですよ。
 コロコロは知っていてもNittoと紐づいていませんでした。想像していたよりも幅広く生活に関わっているんですね。
発売から35年以上、進化し続けている「コロコロ®」は家の中の掃除はもちろん、食品工場や被災地などでも活躍している。

Nittoの強みである粘着技術を応用し、フローリング用、自動車用、ペット用、衣服用、タッチパネル端末用などさまざまな場面で使える「コロコロ®」が誕生している。

オフィスワークでも、毎日同じ仕事はない

 Nittoの体験は、興奮と驚きの連続でした。
技術は実験を重ねて正解を探す、比較的ロジカルなものだと思っていたのですが、「熱を逃がしたいけれど水を通したくない」といった謎解きのような課題に対して、クリエイティブな発想で解決されていることが意外でした。
お二人はどんなお仕事をされているんですか?
Uさん 私は製品がお客様に届くまでの一連の流れをいかに効率的かつ合理的に行うかをグローバル全体で考える、国際物流を担当しています。
日東電工株式会社 ロジスティクス統括部 Uさん
Tさん 私は法務部で、契約や法律まわりの業務を担当しています。新しいビジネスについて、実現へのシナリオやリスクをお客様や社内外の関係者、専門家と一緒に検討して、解決策を考えます。
Uさん 物流や法務というと毎日決まったオペレーションのみ実施していると思われがちですが、Nittoは答えのない課題に対して解決策を見つけていく仕事も多いんです。それが難しいところでもあり面白い点でもありますね。
Tさん 化学業界なので理系の社員が多いのですが、私たちのような文系も幅広く仕事をしていて。法務の仕事だけではなく、いろんな角度から仕事が舞い込んでくるので、毎日のように新しいことに挑戦しています。
日東電工株式会社 法務総務統括部 Tさん
 決められたことをこなすだけではなく、自分で考えて挑戦していく。スタートアップのようですね。
大企業ですし100年の歴史があるからレガシーで保守的なイメージがあったのですが、若手も活躍できるチャンスがあるんですか?
Uさん チャレンジする人を応援するカルチャーがあるんです。それに、Nittoは仕事の進め方に対して細かい指示はないので、何をゴールにしてどのように進めていくかは自分で考えることが求められて。
だから、自分のクリエイティビティを発揮できるし、チャンスもたくさんあります。実際、入社1年目から大規模な仕事を任せてもらうこともありました。
 主体的に働けるのですね。社内の雰囲気はどのような感じでしょうか。
Tさん 私は技術者や研究者から、夢のあるアイデアの“タネ”を聞くことが多いのですが、日々新しいアイデアが生まれていることをリアルに実感できますし、未来に向かってポジティブな空気が流れている会社だなと思います。
Uさん 安全唱和を唱えたり、事業所によっては毎朝みんなでラジオ体操をしたり、そういった部分は昔ながらの「ザ・日本企業」です。
一方で、フリーアドレスで座る場所が自由なオフィスもあるなど、守るところは守って、変えるところは変えていくカルチャーがあります。
 今っぽいですね。新卒で入社すると「誰よりも早く電話を取る」ことを求められるイメージがあったのですが、そういうのはないのですね。

社会のため、未来の地球のために役立つ技術

 アイデアのタネを聞く機会が多いとのことですが、それは目先の利益や既存事業を守ることだけでなく、新しい製品や技術に対して会社が投資しているということですよね。
Tさん 既存製品を進化させるチームと、まっさらなところからタネ探しをするチームがあって、特に後者は5年後のビジネスや、10年後の社会に必要なことなどを日々考えています。「そんなSFみたいなことできる?」と思うような話をたくさん聞きますね。
 きっと私が想像できないような未来を考えているのでしょうね。
Nittoは粘着技術がコア技術としてありますが、超強力にくっつくテープ、自動車のパーツに使うテープなど、もはや私がイメージしていた“テープ”とは違いました。
多くの人が、粘着テープといえば文房具を思い浮かべると思いますが、Nittoでは技術力を応用しながら姿形を変えて、あらゆる領域にイノベーションを起こしてきた。
人類は便利さを求めすぎる傾向にあると思うので、テクノロジーで生活はどんどん便利になりますが、果たしてそれが社会に本当に良いことかわからないものはたくさんあると思うんです。
便利でわかりやすい、たとえば高速移動できる新幹線のような技術も大事だし、アプリで簡単・便利になるサービスも大事。
だけど、Nittoは本当に社会のためになる、地球の未来に絶対に必要になる技術を生み出していることを学びました。そのために、サステナブルな商品設計も多いですよね。そういった新しいアイデアや技術を共有する場は設けているんですか?
Uさん 大阪の茨木にR&D部門の中核を担う拠点があって、そこで年に1回新しい技術やアイデアが発表される機会があります。それは技術者だけでなく私たちも参加できますし、海外拠点の人も来ます。海外で生まれたアイデアも発表されますよ。
 魔法使い大集結じゃないですか!
Tさん まさに(笑)。ぜひ今後のNittoにも期待してもらいたいです。

スタートアップに近い柔軟性でイノベーションを起こす

 私は“ワーク・アズ・ライフ”のタイプで、仕事が趣味、人生が仕事だと思っているんですね。
何を作ったら社会がどう変わっていくかを考えるとワクワクするし、どんなアイデアでジェンダーやSDGsなどの社会問題が解決できるのか、365日考えるのが性分。
環境問題や差別などのあらゆる問題がこれからの100年間で解決できるとは思えませんが、私が作った企画や仕事で、社会をより良くすることに貢献できるものを一つでも多く残していきたい。
そんな夢を持っているのですが、お二人は仕事でどんな夢をかなえたいですか?
Uさん 世界に90社以上あるNittoグループを、国際物流の仕事を通して一つにつなげたいと考えています。
物流は事業部に属していない機能軸だからこそ、横軸でグループ全体を見られるポジションにあります。
物流を軸にグローバルでつながれば、単なるコスト削減ではなく、たとえばCO2の排出を抑える付加価値の高いイノベーションを生めるはず。そういったことを、世界中の国の人と考えたいです。
 すてきですね。地球温暖化もそうだし、これから起こりうる地球のネガティブに立ち向かってほしいです。
Tさん 私は、新しいアイデアのタネを一つでも多く形にして、社会に新しい価値として提供することに貢献したいと思っています。
法務視点から「実現は難しそう」というのはよくあるのですが、頭を絞ってアイデアを出していけば、違う方法を見つけられるかもしれません。
今は先輩が絞り出すアイデアを目の当たりにして「そんな方法があったのか」と驚きの連続ですが、早いタイミングで私もそうなりたいですね。
 人間の仕事の多くはAIで代替されると思っていましたが、人間が絞り出す知恵やアイデアからテクノロジーが生まれている。話を聞けば聞くほど、Nittoにはスタートアップに近い柔軟性があると思いました。
Tさん Nittoは、明確にやりたいことがある人も、やりたいことは決まっていないけれど何かを生み出して価値提供したい人も、パッションがあればいくらでも仕事がある会社です。
Uさん 想像もしていなかったチャンスが突然舞い込んでくるので、自分の意外な得意分野に出会えることも多いですね。
 人生において、「私はこれをやって生きていくんだ」というものは、なかなか見つけられません。でも、いろんなことに巡り合えて、自分の可能性を広げられるNittoはすごくすてきな会社だと思いました。
これからも社会や未来が良くなる技術・製品をたくさん世に出してほしい。魔法使いの集団であるNitto、いつかコラボレーションできたらうれしいです。
(取材・文:田村朋美、編集:木村剛士、写真:小池大介、デザイン:岩城ユリエ、動画制作:佐々木健吾、高瀬瞬輔、木嵜綾奈、萬野達郎(NewsPicks Studios))