[東京 21日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は21日午後、金融政策決定会合後の記者会見で、「海外経済の下振れリスクはひと頃に比べると幾分低下している」とする一方、「(リスクの)水準は低いものではなく、海外のリスクに十分に注視する」と警戒姿勢を維持した。その上で「緩和方向を意識した金融政策が当分続く」と述べた。

黒田総裁は、米中通商交渉の第2段階の合意に向けた道筋が不透明な点や、中東情勢を巡る地政学リスクも高まっていることを挙げ、中国をはじめとする新興国・資源国経済の動向、グローバルなIT関連材の需要についても引き続き注意が必要と指摘した。

米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融政策運営の見直し議論を進めているが、日銀の金融政策の枠組みの見直しには消極的な姿勢を示した。「(日本の)CPIは0.6%と物価安定目標の2%にまだ遠い。実体経済は適切な成長が続いており、雇用情勢もタイトな状況が続いているが、若干賃金上昇が弱い」と指摘。「今の段階で金融政策の枠組みを変更する、あるいはその議論を行うのは時期尚早だと思う」との見解を述べた。

マイナス金利については「長期化に伴う副作用に留意が必要だが、政策の効果がコストを上回っている」と述べ、現在の金融緩和が適切だとの見方を改めて示した。

「物価安定の目標」については、他の先進国の中央銀行も2%をターゲットにしており、グローバルスタンダードになっている点や、統計上のバイアス、為替レートの安定を挙げ、引き続き2%の「物価安定の目標」の実現を目指すとした。

日銀はこの日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和の継続を賛成多数で決めた。政策金利のフォワードガイダンスも据え置いた。

<超長期金利に再び言及>

黒田総裁は、超長期金利の水準に再び言及した。「スティープ化してきたが、もう少し上がってもおかしくないと思っている」と述べた。長期金利については「(目標とする)0%程度の中で長期金利が上下するのは問題ない」との認識を示した。

株高基調については「企業収益の増加に応じて上がってきた側面が大きい。特に心配していないが、資産市場の動向に行き過ぎがないか注視する」と述べた。

*内容を追加しました。

(和田崇彦、浜田寛子、志田義寧 編集:内田慎一)