【対談】流通の最先端・D2C。次に勝つ企業はどこか

2020/1/16
今、流通業界で注目される「D2C」。「Direct to Consumer」の略で、メーカーが商品開発から広告宣伝までを内製し、消費者へ商品を直接販売するビジネス形態だ。
直接販売が大きなポイントであることは間違いないが、D2Cは仲介業者を通さないだけの単なる「中抜き」ではない。では、その本質とは何か。
1月10日にNewsPicks Publishingから『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』を刊行した、Takram・ビジネスデザイナーの佐々木康裕氏が、D2Cの全体像を語った2019年12月のインタビューは大きな反響を呼んだ。
今回、佐々木氏と、流通・小売業界を専門とするアナリスト、フロンティア・マネジメントの山手剛人氏の対談が実現。D2Cの特徴や課題を掘り下げながら、日本型D2Cの未来予測をお届けする。

リーマン・ショックから勃興したD2C

山手 昨年12月にNewsPicksで掲載された佐々木さんのインタビュー記事を読んで、納得する点がたくさんありました。
とくに興味深かったのが、小売店の存在意義だけでなく、消費者とコミュニケーションするメディアのあり方も変わっていくという観点です。
EC化率が上がってリアルの小売店舗が危機感を抱くのはもちろんですが、広告代理店も「今までとは違うビジネスを作らねば」という意識を持つ時代になったのだと感じました。
山手 剛人(やまて・たけと)/フロンティア・マネジメント 産業調査部シニア・アナリスト
1976年生まれ。東京大学卒業後、99年にウォーバーグ・ディロン・リード証券(現UBS証券)に入社。2003年に同社株式調査部で小売セクター担当のシニア ・アナリストに就任。2010年、クレディ・スイス証券に移籍。2017年にフロンティア・マネジメントに入社し、現職。
佐々木 そうですね。D2Cの本質は、「流通を介さず消費者に直接売れる」「広告代理店を介さず消費者とコミュニケーションを取れる」の大きく2つです。
D2Cビジネスを行うブランドは、製品そのものというより、生産背景のストーリーやクラフトマンシップなど、全体の世界観で勝負しています。
こうしたブランドは、自社の世界観と社会トレンドをつなぐのが上手です。SNSなどのコミュニケーションを通じて、“顧客化”する前から製品に興味と愛着を持たせ、購入後のサポートも行い、消費者と長く付き合う。
このように、すぐれた世界観とストーリーテリングでプロダクトを包んだ製品を、個人的に「厚いプロダクト」と呼んでいます。