サイバー藤田社長「あわや解任」の想定外事態
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注目のコメント
議決権行使の実証研究を現在進行形で行なっている身なので一言。世界先進国で、取締役の賛成率は90%超えるのが普通で、中央値から下回るだけでもCEO解任確率への影響力をもつインパクトがあるのも実証研究でも報告されています。
世界平均では、取締役規模は減少傾向ですしね。赤字事業を持つことは悪いことではないものの、投資家とのコミュニケーションコストは年々増しそうですね。こういう事案が増えると、日本も米国同様に上場コストを嫌気して非上場ニーズも増えそうな予感株主総会での賛成率が90%を切るだけでも随分なインパクトですが、57%というのは、ほぼ全面的にNOと言われているに等しい数値。
当人の資質に対する疑義というよりは、それだけ議決権行使助言会社の影響力が大きくなってきたということでしょうね。外国人株主や機関投資家の保有比率が高い会社にとっては、いつ同じことが起こっても不思議ではありません。
コーポレート・ガバナンス・コードの基本はComply or Explainなので、譲れない点があるのなら徹底して理論武装し、説明すべきですし、助言会社の妥当性について真正面から勝負を仕掛ければよいのではないでしょうか。
それなくして、株主や助言会社を批判するのも情けない話だと感じます。
個人的にはガバナンスがより重視されるようになっていること自体は大変ポジティブに受け止めているのですが、じゃあ杓子定規な「ガバナンス強化」が実現すれば企業価値が上がるのかと言えば、そうは思いませんし、本件に関してもなかなか割り切れない面があります。過渡期なんでしょうね。
一つの解釈としては、当人たちがいつまでもスタートアップ体質、健全な意味でのオーナー体質を保ち続けていようと意識していたとしても、市場はそれを求めていないということでしょうか。
ネット企業でもここ数年、株主提案や取締役会制度の移行に対する反対など、紛糾している事案がままありますしね。
ちなみに昨日、アクティビストを自認なさるストラテジックキャピタルの丸木氏のお話を伺っていましたが、「我々はガバナンスの緩い会社が大好き」と仰っていたことが印象に残っています。日本の現在の慣行・人材マーケットを前提にサイバーエージェントにて社外取締役の数を増やしても、ガバナンスの実効性が上がるとは個人的には思いません。
理由:
1. 社外取締役が機能するケースは、当該社外取締役が自社よりステージの進んだ会社の経営経験者で、その業界and/orビジネスを熟知しており、かつ意味のある規模で株式を保有しているか株式報酬がある(= だから株式価値最大化と個人のインタレストが一致している)場合です。
サイバーエージェントの場合、インターネット・メディア・ゲーム業界という産業史はまだ20年の新しいインダストリーであり、そこで突き抜けた経営者(孫さんや三木谷さんなど)は現役の経営者です。そしてその現役レジェンド経営者が経営する会社とサイバーエージェントは、広い意味でコンペティターであるため、利益相反の観点から当該現役レジェンド経営者を社外取締役に招聘することができません。
2. すると、数合わせの「アルバイト」社外取締役を招へいする必要があります。日本における社外取締役マーケットの多くは、学者、専門家(弁護士、会計士)、パブリックセクター(官僚)出身。最近は属性が「女性」という人も出てきました。彼らは経営やビジネスのプロではありません。最もスピーディーで複雑で難しい経営を、金儲けをしたことのない非プロが監督したり意思決定するのは無理があります。
そして、間違いなく責任限定契約を締結するし、エクイティのアップサイドもほぼもらえないでしょう。だから、本質的に株主利益とアラインしていない。
したがって、ガバナンスの実効性は上がりません。
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【ディスクレーマー】上記はサイバーエージェントの機関設計である監査役会設置会社(= 取締役会が会社の重要な意思決定を行うというもの。これを執行側に権限移譲したら会社法違反)を前提にしています。
指名委員会等設置会社(= 取締役は審判のお仕事に集中する。具体的には、監査と役員の指名・報酬決定)にした場合の考え方は、戸田康弘氏のコメントをご参照ください。