【解説】カルロス・ゴーン「怒りの会見」3つのポイント
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いまパリに来ていますが、こちらも連日、テレビ、ラジオ、新聞でゴーンさんネタが報道され、フランス人に会えば必ずゴーンさんのことを聞かれます。
違法脱出劇を支持する割合が高いとの海外紙の報道もありますが、良識あるフランス人ビジネスパーソンの印象は「ゴーンさんはセコい」でほぼ一致していますね。
有価証券報告書虚偽記載や特別背任が成立するかは裁判の結果を待たないと真相はよくわらかないものの、日産とルノーを私物化したのは間違いないと考えています。
反政府デモが続いているレバノンでもゴーンさんが英雄視されていたのは今は昔、最近では金持ちに対する反発が強く暗殺されかねないという噂まであり、フランスへ行くのでは?という情報もあります。
私の弁護士の知人によると「フランスへ入ったら日産のケースと同じでルノーの私物化で立件される可能性が高いからそれは難しい」とのことでした。
また、フランスで労働法に強い弁護士によると、ゴーンさんはコストカットをするだけで日産でもルノーでも新しいものを何も生み出していない。そのかわり、コストカットで社員にかけるプレッシャーが強すぎてひどい。それで、メンタルに異常を来して自殺した人がたくさんいるとのことでした。
個人的には社内で誰もできなかったタブーに切り込んで日産を再生させた実績に対してゴーンさんを尊敬していましたが、セコいなあという印象が拭えません。
顕になった彼の人間としてのセコさに愛想を尽かした。
フランス人も日本人もこんな思いが強いのではないでしょうか。2時間半に及んだ会見ではあったが、自分なりにまとめると以下。
①容疑がかかっている事案については、記事にもあるが新しい話はほとんどなく、また取締役がチェックしたりサインをしているという部分に依拠した説明。一つ、サウジについては競合他社より低いと妥当性の主張があったが、具体の比較した数字はなかった
②特捜部による逮捕・取り調べ、メディアリークなど、ゴーン氏が「不正義」と主張する内容の国際世論へのアピールが多かった
③全般に感情が先行し、論点整理があまりされていない説明ではあった
海外主要メディアの見出しは以下、和訳は自分によるもの。いずれも主張というより非難・叱るといった感情のニュアンスの単語を使っていること、また元の疑義より逃亡や司法についての言及。
WSJ:Carlos Ghosn Berates Japan, Nissan in First Public Remarks Since Jumping Bail(ゴーン逃亡以来初めて公の場で日本・日産を激しく叱る)
Bloomberg:Defiant Ghosn Invokes Pearl Harbor, Shows Fabled Brashness(開き直ったゴーン、真珠湾攻撃になぞらえ知らぬ間に様々な話がでっち上げられたと主張)
BBC:Ghosn: Decision to flee was hardest of my life(ゴーン氏:逃避行は人生で最も困難な決断だった)
CNN:Fugitive ex-Nissan boss Carlos Ghosn blasts Japanese justice. It was escape or 'die in Japan'(逃亡した元日産のカルロス・ゴーン、日本司法を非難、逃げるか「日本で死ぬか」の決断だった)
ゴーン氏として強みがある部分は、容疑ではなく司法プロセスや、そこへの国際感情。ただ、見出しを見ていると、やはり感情が先行したという評価になるように自分は思う。
行為に対して適切な容疑・司法プロセスだったかは、自分も疑問符はある。一方、無罪を主張するなら根拠で説明して欲しかった。特に本人の意見と、法律上の根拠と、経営者としての評価(ステークホルダーに支持される行為か)は異なる。それらを分けて主張して欲しかったが、そうではなかったから様々な報道から考えたい。中継を見ていてゴーン氏が怒っていることはわかりましたが、論点が掴みにくい会見でした。確かに今回の一件で、日本の司法制度の歪みが露わになり、個人的にもそのいびつさを再認するきっかけになりました。
ただ、会見の中でゴーン氏の無罪を証明する材料はあまりに少なかった印象で、まだまだ騒動は長引きそうに感じます。ゴーン氏が今後、レバノンから証拠を小出しにする中で、日本の検察がどう対応するのかは興味深いです。
ちなみに質問の最初にネットフリックスとの契約を聞かれ、即座に「ない」と答えていたのが、最も記憶に残っています。