【GO三浦】電博支配の産業構造は、クリエイティブの力で変わるか

2019/12/17
昨年、広告産業の未来を予測し、大きな反響を呼んだGOの三浦崇宏氏。今年も歯に衣着せぬ言葉のマシンガンで、2020年の広告業界の輪郭を明らかにする。
自分は昨年末、この特集で広告業界の2019年の流れについて3つの指摘をした。
自分の言葉には責任を持ちたいので、2020年の予測をする前に、まず検証したいと思う。では実際、今年広告業界で何が起こったのか?

① 電博からの人材の拡散

1つ目に指摘した「電博からの人材の拡散」は、かなり進んでいる。
若手クリエイターが独立してスタートアップ専門の会社を作るという方向性もあれば、転職もかなり多い。例えば、同級生で電通にいたストラテジー出身の優秀なクリエイティブディレクター(以下、CD)は、TikTokで知られるバイトダンスに転職した。博報堂のPR系の優秀な若手が大量にスタートアップに転職した。
予測した自分が驚くほどの民族大移動が起きている。
そして、面白いのが独立・転職した人間が、さらに電博からの抜き合いをやっているということだ。
ただ、この人材の拡散に関しては、2020年は沈静化するだろう。転出した人材の成果がどう出るか、判断される上に、景気の悪化が予測されるからだ。
オリンピックイヤーの2020年は幹事代理店の電通からの人材流出は考えにくい。誰だって「4年に一度じゃない、一生に一度」のお祭りには関わりたいもんな。

② 働き方改革から稼ぎ方改革

次に2つ目の働き方改革から稼ぎ方改革。これも相当に進んでいる。
GOもスタートアップへの投資を始めているが、2019年8月にニューピースの高木新平さんたちが設立したNEWSという会社は、スタートアップに特化し、ストックオプションだけの仕組みを立ち上げた。
博報堂出身の牧野圭太さんが代表を務めるカラスという会社はレベニューシェアを加速している。GOもスタートアップと積極的に取り組んでいるが、自社で作ったプロダクトにクリエイティブを掛け合わせることで、期待値を上げてから事業売却するといったスキームも考えられる。

③ クリエイティブディレクター3.0

最後にクリエイティブディレクター3.0だが、これは稼ぎ方改革と地続きで、これまでのCMとプロモーション設計の専門家ではなく、クライアントと事業をプロデュースするクリエイターのあり方だ。
これについては、専門的に手がけているGOが前年比150%の成長を遂げていることがシンプルに証明しているだろう。大手の代理店の経営層からも、GOの仕事の進め方について教えてほしいと相談されることが増えた。
クリエイターの仕事自体に大きな変化が起きている。「僕とYOU」「84」「14」など、大手広告代理店にいたCDが独立して有機的なチームをつくるケースは増え続けている。
以上、手前みそではあるが、昨年の予測はほぼ的中したと言っていいだろう。

2020年がクリエイティブ元年に

その上で、2020年には何が起きるか?