【大室正志】日本人はお節介で健康が守られていた

2019/11/25
今回の『The UPDATE』では「体調管理は自己責任か?」と題して、DeNA平井孝幸氏、フリーアナウンサーの大橋未歩氏、産業医の大室正志氏、DeportareClub FOUNDER,OWNER and CEOの竹下雄真氏、計4名をゲストに迎え議論を交わしました。
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 番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、大室氏の「元々人は腸である!」に決定。
 体調管理は自己責任か?という問いに対して「社会としてはそう考えない方がいい」と語る大室氏。
 仕事と体調管理はどのようにバランスをとればいいのか。
 また、それは個人としてのメリットはあったとして、企業の生産性には具体的にどのようにつながっていくのか。番組放送後にお話を伺った。

健康について確実に言えることは少ない

番組内では、運動をすることは大事だが、自分の身体を理解して動かすことがより重要だ、という意見が多かった。今回キングオブコメントに選ばれた大室氏の発言も、人間の身体の仕組みから理解しているものである。
大室 起源を辿れば、原始生物はひとつの管だったんです。
 そのため入り口で食べ物かどうかを判断しなければいけないので神経が集中しています。
 それが進化の過程で、脳と腸に分かれました。
 その名残もあり、身体の中で脳の次に神経細胞が多いのは腸なんです。腸が第二の脳だと言われる所以ですね。
 また、腸の中には腸内細菌がぬか床のように1.5kg〜2kgいると言われています。
 たとえばコアラ。コアラは毒であるユーカリの葉を食べることができます。
 これは子どもが最初にお母さんのうんちを食べて、うんちの中にある「毒素を分解できる菌」を身体に入れることで可能になります。
 このように細菌は外部のものだけど、臓器の代わりのような機能を持っています。
 またこの腸内フローラが多様であると身体に良い影響を及ぼすと言われています。
 人間の腸内細菌は、よく善玉菌、日和見菌、悪玉菌と言われていますが、この比率が2:7:1くらいのバランスが良いとされています。
 そして食生活の乱れなどで腸内細菌のバランスを崩すと体調悪化の原因になったりします。ただエビデンスという面からみるとこれは身体に良い!と言える食べ物ってそう多くないんです。
 むしろタバコなど身体に悪いことは比較的ハッキリ言えます。
 そうやって「確かに言えること」を煎じ詰めていくと、〇〇を食べろ!とか〇〇をもみなさい!とか極端なことは言いにくくなる。
 結局、体調管理に有効な手段は、適度な睡眠と適度な運動、バランスのとれた食事、ストレスを溜めない、禁煙しましょう、くらいになってしまいます。小学生でもわかるようなことなんですよね。
 医師だけが知っている健康法なんてそうない、というのが私の意見です。

体調を優先して転職という選択肢も

番組内でも睡眠の大切さについて大室氏は語っていたが、実際に仕事が忙しすぎて体調を崩すようなタイプの人々は、睡眠時間の確保やバランスのとれた食事を維持することすら余裕がないケースの方が多いだろう。
大室 よく、若い頃の苦労は買ってでもしろとか、寝る間を惜しんで働くといった言葉が使われていますよね。
 それは、多少健康を害してでも、それによるリターンが大きかった時代の話です。
 昭和時代は55歳定年で年金も充実していたのに比較し、いまは70歳まで働かないといけない時代になりつつあります。
 陸上でも競技の距離によってペース配分を変えるのと同じで、働き方のペースも考えていかなければいけない。
 よくその変化を、「長時間労働」ではなくて「長期間労働」といった言い方をします。そういう時代になっているので、昔の人たちの働き方を真似するのはお勧めしません。
 ただ幸いなことに、いまは売り手市場です。健康が心配になる職場にいる方は、いまのタイミングで転職を検討するのは選択肢の1つとしてアリだと思います。

企業のお節介はセーフティーネット

逆に企業側からはどのようなアプローチの方法があるだろうか。
大室 もともと日本の会社の健康は自己管理よりお節介型です。
 大きな会社だと保健師さんがたくさんいて、社員さんに「ちょっと食べ過ぎじゃないの」なんて母親のようなことを言う。いわゆる家族主義ですね。
 ただ、DeNAのような個人主義の会社が増えたら、お節介というやり方にはそぐわなくなってくる。
 DeNAのやり方は、情報提供はするけど強制はしない、というやり方ですよね。最終的には自分が選択するという。
 会社によっては契約スポーツジムや健康アプリが使えたり様々な健康増進施策を取り入れているところもあります。ただここで問題なのは、健康リテラシーの有無です。
 たとえば、学校でいえば麻布や灘など高偏差値の学校と偏差値40台の学校だったら指導法も変わるじゃないですか。
 機会を与えることで自主的にやってくれる人とそうじゃない人たちがいる。
 同様に、DeNAやシリコンバレーの一流企業のようなやり方は素晴らしいと思う一方で、健康リテラシーが低い人が多く働く会社には、ある程度「血糖値が高めですので、病院に行ってください」とか「食べ過ぎじゃないの?」とか、昔ながらの言うべきことをしっかり言うお節介型指導は今でも有効だと思います。
 また、健康診断にしても本来は、一人一人の健康リテラシーを高め、重要性を理解した上で受けることが理想です。
 ただよくも悪くも日本は昔から強制的に健康診断を受けさせられて、結果が悪かったら病院に行ってこいと社員にお節介をやいてきた国です。
 これは本当の意味でのリテラシー向上とは言えないかもしれないけど、セーフティーネットにはなっていた。
 ただ、今は非正規やフリーランスの人が増えることでますますそのセーフティーネットから外れてくる人が増える。
 だからやっぱりリテラシーの向上というのは急務だし、フリーランス協会などが進めていますが、フリーランスの人が受けやすい健康診断など、新たなソーシャルキャピタルの仕組みなどは急務だと思います。

働き方改革で失われる「健康」

企業側のアプローチのひとつとして、働き方改革は個人の健康や生産性に寄与するだろうか。大室氏はこう語る。
大室 働き方改革というのは、メンバーシップ型からジョブ型に変えていこうというメッセージですよね。
 日本の労働人口が減る、だから仕事を分解できるようにしてみんなに参加してもらいましょう、ということ。
 メンバーシップ型は「仲間」ですから、仲間が残ってるのになぜ帰るんだ?ということになりがちです。
 これからジョブ型の働き方が定着していけば、日本のビジネスパーソンも個人主義化していくことでしょう。
 だから飲み会は絶対参加、とか上司が残っているから帰りにくいといった同調圧力など、メンバーシップ型の副作用は減り、自分の仕事が終われば帰るという形になっていくと思います。
 ただ、これは紙一重なのですが、メンバーシップ型のいいところはお節介なところなんですよ。
 働き方改革によって、同調圧力から解放されると同時にお節介で守られていた健康も失われてしまう。僕はそこを懸念しています。
 これがベストなやり方かどうかは分かりませんが、こと健康に関しては、日本ではお節介が有効に機能していました。
 番組内で、アメリカ人のジムの使用率が高いという話がありましたが、あれも2割から3割程度。アメリカでは階層やリテラシーの差によって日本以上に健康格差が生まれています。
 ジョブ型の良いところは取り入れつつ、過度な健康格差を生まない仕組みの構築が社会にも会社にも望まれますし、特に健康は所得や雇用など社会的要因と密接に関わる問題ですので、安易な自己責任論にいかないで欲しいなと思います。

11月26日のテーマは「働き方改革」

 政府が働き方改革を推し進めるなか、大企業を対象に、今年4月から罰則付きの残業時間の上限規制が設けられました。
 しかし、現実はというと「勤務表上、残業は月45時間までに収まっているが、実際はそれより多く働いている。業務に追われて効率化に取り組む余裕がない」と、働き方改革が機能していないことを示す声も聞こえてきます。
 さらに、労働時間をセーブする若手社員の代わりに、40代管理職の負担が増えているというケースも。
 様々な業種で、ますます働き方の差が生まれるという懸念も広がっています。働き方改革で、日本人の働き方はどのように変化したのか?
 効率よく働きながら、生産性をあげていく、幸せな「未来の働き方」とは?
 働き方改革の「その後」について、徹底討論します。
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ボディメンテ製品概要

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<執筆:富田七、編集:佐々木健吾、デザイン:斉藤我空>