どの企業も「柔軟な働き方」を追い求めているが、「そうはいってもやりたいようには働けない…」と感じるビジネスパーソンも多いはず。
実際のところ、従業員の新しい生き方・働き方は、企業の「働き方改革」施策を待っていても始まらない。しかし「手段としての働き方改革」がまだまだ制度として行き届かなくても、私たち働くひとりひとりの心次第で、柔軟に仕事を楽しむことができるのではないか。
本連載では、誰もが今日から実践しようと思える、優しいマインドセットを書籍『CHANGE─未来を変える、これからの働き方─』(谷尻誠〔著〕、エクスナレッジ)より、4回にわたって紹介する。

#1 【谷尻誠】"しつこく考え込む"と、あなたの仕事はもっと楽しくなる【全4回】
#2 【谷尻誠】ビジネスで一番強いのは、「相手の本当の望み」を見抜ける人
外付けハードの多い人が勝ち。ミッション達成率をあげるために
いつも楽しそうに仕事をしている人というのは、その人自身の能力もありますが、実はまわりに、助けてくれる人や専門分野に特化した人、おもしろがってくれる人がたくさんいることが多いように思います。
というのも、僕自身がそういうふうでありたいと思っているから。ひとりで何かの仕事やプロジェクトをコンプリートできるかと聞かれたら、あまり自信はないのですが、その代わり、実現できる人を見つけて連れてきたり、実現させるために何をやったらいいかを考えるのはとても得意です。
例えば、ひとつのプロジェクトを始める時、あえて忙しい人に仕事を頼むこともあります。なぜなら、忙しい人というのは圧倒的に多様な情報量を持っていることが多いから。
何かをスタートさせる時、ひとつのことを深く掘り下げるのもいいのですが、「たくさんの情報を集約させたほうが、内容がよくなるし判断スピードも上がることが多い」というのがこれまでの経験から導き出した法則なのです。
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ちなみに僕は、僕にない能力を持っている人やミッションを実現できる人のことを「外付けハード」と呼んでいます。外付けハードが多ければ多いほど、仕事の可能性は広がるし、プロジェクトの実現率も断然高くなるはずです。
ミッションを達成させるための手段は、内蔵ディスクだけじゃない。優秀な外付けハードや最新のアプリをどんどん投入したほうが、クオリティの高いものを生み出すことができるのです。
自分のスペックが低くても、まわりにいいスペックがいればいい。もちろん自分自身も、誰かの外付けハードになれるようでありたいと常に思っています。
仕事はすべて持ちまわり、という哲学的仕事術
「いつなんどきも君のことを考えているよ」と言うコトバを聞いて、どう思いますか?僕が大好きな哲学の本『はじめて考えるときのように』(文・野矢茂樹、絵・植田真/PHP文庫)に、こんなことが書いてありました。
「いつなんどきも君のことを考えているよ」なんていうワケはなくて、目の前にカツ丼があればカツ丼のことを考えている。君のことは考えていないはずだ。でも、今おいしいしいカツ丼を食べたという素晴らしい記憶をあなたに伝えたいと思うそのコンディションこそが「いつなんどきも君のことを考えている」ということなんだ。
だいぶアバウトに説明してしまいましたが、僕は「そうそうコレコレ」と思ったのです。ウチの事務所でもそうですが、多くの人は常にいくつかの仕事を同時に手がけています。だから、そのうちのひとつだけを取り上げてみると、どうしても「同時進行しているいくつかの中のひとつ」に見えてしまうんですね。
お客さんからすれば「自分のプロジェクトに時間を費やしてよ!」という気持ちになるでしょうが、でもそれは〝持ちまわり〞だなと僕は思うんです。
今この瞬間はほかの仕事を全力でやっているから、あなたには迷惑をかけているけれど、別の時間に今度はあなたの仕事を全力でやる代わりに誰かがガマンをすることになる。同じように、ほかの誰かが僕のために全力で仕事をしてくれている時間、誰か別の人がガマンをしているかもしれない。
そして、今はほかの仕事をしていても、あなたの仕事のことは頭の片隅にあって、何かあなたのプロジェクトに生かせないかなと考えている。あなたの仕事をしている時に、ほかのプランに生かせそうなことを思い付くこともある。
すべてが全力で、すべてが「持ちまわり」。すべてに対して「いつなんどきも君のことを考えているよ」なのです。どんな時も、今やるべき仕事に全力で集中すること。
〝こっちにも時間を費やしてよ!〞という声があっても、です。大局を見ればそのほうが「あなた」も「自分」も満足のいく完成度の高い結果を生むからです。
谷尻流バスケ理論「ひとりでドリブルするな」
ある程度仕事ができるようになり、おもしろくなった時に陥りがちなのが「ひとりで全部をやろうとする」落とし穴です。
僕個人は、「最終的な判断は自分で下す/自分で責任をとる」ことを念頭に置きつつも、ひとりですべて抱えるよりは、まわりをうまく巻き込み、まわりの力を借りたほうが、仕事はよりよくなるものだと考えています。
企業や集団など志を同じくする仲間といっしょに仕事をする人はもちろんですが、個人でものをつくる人であっても、「まわりをうまく動かす術」は身に付けておくべきです。「ひとりでドリブルするな」。これも、前述のバスケの監督から教わったコトバです。
今いる場所からゴールするまでの間、自分でドリブルしてどんどん走るのがいちばん早いし思い通りに進むはず、と思いがちですが実はそうではないという話です。
いったん仲間にボールを投げておいて、自分はボールを持たずに全力でぐいぐい走り、走り着いた先で「ハイ、返して!」とボールを投げ返してもらう。そのほうが、ひとりでドリブルするよりも早く遠くへ行けるというのです。確かにその通りで、仕事もいっしょ。自分が理想とする状況、理想とするものは提示するけれど、ひとりきりで向かうのではなく、適度にボールを渡してまわりを巻き込んでいくほうが、実現率はぐっと高まります。
肝心なのは、ただボールを託すのではなく、上手に的確に投げ返してくれるような関係性を日ごろから築いておくことですね。自分だけで何かをやるより、人を上手に動かすほうが何倍も難しい。「投げて・走って・返してもらう」がスムーズにいくような訓練を積んでおけば、仕事の幅も可能性も広がります。
※本連載は全4回続きます
(バナーデザイン:小鈴キリカ、写真:iStock)
本記事は『CHANGE─未来を変える、これからの働き方─』(谷尻誠〔著〕、エクスナレッジ)の転載である。