[東京 25日 ロイター] - デンソー<6902.T>の自動運転技術の開発拠点「グローバル・R&D・トーキョー」(東京・港)を総括する執行職の隈部肇氏がロイターのインタビューに応じ、目標とする自動運転技術の完成度は「まだ道半ば」との認識を示した。自動運転の社会実装に向けた法整備や国際的なルールづくりが進められているが、「法規制がクリアできれば、すぐに自動運転車を出せるという技術レベルにはまだ来ていない」と語った。

デンソーの開発拠点ではまず、0から5までにレベル分けされる自動運転技術のうち、一般道における乗用車の「レベル2」(部分的な運転支援)から「レベル3」(条件付き運転自動化)、タクシーや小型バスのエリアを限定したドライバー不要の完全自動運転「レベル4」に注力し、2020年代からの普及を目指している。

24日開幕した東京モーターショーでは、一般公開に先立って有馬浩二社長が会場内で会見し、車の自動運転など「CASE」に対応するため、ソフトウエア開発者を2025年までに現状の3割増となる1万2000人にする計画を明らかにした。インドやベトナムなど世界中の拠点を活用して大規模ソフトウエア開発を24時間体制で進める。

インタビューは24日に実施した。主なやりとりは以下の通り。

――開発の進捗状況は。

「まだ道半ば。法規制の問題がクリアできればすぐに(理想の)自動運転車を出せる技術レベルに来ているかというと、まだ来ていない。一般道で普通に運転されている車と混在するような環境(に対応させること)が難しい」

「周りは予期しない動きをする。ドライバーも予期しないカットインをされると対応に遅れが出たりする。不確実な要素が多いので難しい。ドライバーが起こす事故と同じような事故が今のシステムではまだある。エリア・レーン限定にすることで不確実な要素をなるべく減らしていけば、自動でできると思う」

――トヨタ自動車<7203.T>が2015年に高速道路でハンドルやアクセルなどの操作なしで走行できる自動運転車について20年ごろの商品化を目指すと発表してから約4年たつが、開発作業は当初に比べてどうか。

「予想通り難しかった。当初からトヨタも各社も百何十億キロ走って確かめないと完全にはならないと言っていたが、まさにその通り。予想しなかったシーンの発生時に、確実にどんな時も正しい対応ができるように作り込む必要がある。未知のシーンがいっぱい出てくるので、実証のたびにこんなこともあるんだと(そのたびに修正して)やっている。どこまでいけばゴールなのかと。やはり難しかったという感じだ」

「時間もかかっている。実際の車を使う実証だけでは難しく、シミュレーションを駆使した新しい技術を使い、未知のシーンをなるべく既知にする努力を続けている」

――トヨタがSUBARU<7270.T>への追加出資を9月発表し、マツダ<7261.T>やスズキ<7269.T>同様、グループ化を進めて自動運転など次世代技術の共同開発に動いている。

「どのサプライヤーもそうだが、難しければ難しいほど開発にお金がかかる。それをなるべく多くの(完成車)メーカー、多くの車(の台数)で割り勘してもらうのがいい。量は出た方がいいので、そこは期待している。われわれも努力し、普及や拡販に資するものを作らなければいけない」

――ボッシュ<BOSH.NS>やコンチネンタル<CONG.DE>といった競合する独メガサプライヤーはMaaS(Mobility as a service)用無人運転車を自ら開発すると表明しているが、デンソーのスタンスは。

「基本的にはクルマをつくらない。ホーム&アウェーでいうと、車づくりはホームではない。部品メーカーとして極める」

――20年度にADAS(先進運転支援システム)分野での売上高目標2000億円を掲げている。

「細かい数字は差し控えるが、計画通りに来ている。この分野・市場は伸びており、しっかり市場の中でデンソーの存在は発揮できている」

(白木真紀 取材協力:田実直美 編集:山川薫)