トランプ米大統領、トルコ制裁を解除へ-停戦順守と判断
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今回のトルコの侵攻劇は、途中のアメリカによる停戦をのぞけばほぼ予想通りの展開となりました。
そこで改めて、シリア問題におけるアメリカの立場を考えてみたいと思います。
まずよくアメリカがクルドを捨てたと言われますが、道義的な問題はさておきアメリカがクルドの独立を支持しないことは2017年のイラク・クルディスタン自治区の独立投票の時から分かっていたことでした。
元々アメリカにおける中東の最大拠点の一つがクルディスタンのアルビルです。
アメリカから見れば、2012年にISがイラクに攻め込んだ時、ISの侵攻からアルビルを守るためこの戦いに介入したに過ぎなかったのです。
しかし戦争権限法に基づいて議会の承認を得るためには、軍事介入の名目が必要でそれを2002年の対テロ決議に求めたことで、テロに対する戦いの延長でIS戦に深入りすることになってしまいました。
そして2014年のコバニの戦いにあたっていきがかり上シリアのクルド人に大きな支援をする流れになったのです。
つまりアメリカにとって本当に大事だったのはイラクのクルディスタンだった訳ですが、それでさえ独立の動きを見せるとバッサリと切り捨てました。
それはアメリカとしてはクルド問題が中東の火薬庫であり、一本間違えば中東全体を大戦争に巻き込みかねないことをよく知っていたからです。
一方アメリカのシリア政策の基本はアサド政権の打倒です。
それはアサド政権を支えるバース党が本質的に反シオニズム、反欧米を唱える思想に支えられているからです。
同様にイラク戦争で、アメリカがイラクのフセイン政権を倒すのにあれほど拘ったのは、当時のイラクがバース党政権だったことも関係しています。
シリア内戦の当初、アメリカやトルコ、および湾岸各国はこの立場から反アサド勢力を支援しました。
それが途中からIS戦に変わった訳ですが、シリアのクルド人は元々アサド政権との仲も悪くない為政権打倒の駒として使えない上に、トルコを刺激しかねない(イラクのクルド人は親トルコなので問題なし)こともあって、最初から対IS戦後切り捨てられる運命だったと言えます。
アサド政権打倒が失敗した以上、アメリカが元々ロシアの同盟国であるシリアに深入りする理由などなく、残酷な話ですがトランプ大統領はビジネスライクにこのシナリオを推し進めただけだったといえるでしょう。ポイントは3つ。①トランプ大統領に対しては、妥協するよりも、強硬に瀬戸際外交を展開するほうが国益を守れると考える国は、ますます増えると予想されること。②オバマ大統領がシリアの化学兵器使用にレッドラインを引きながらも、何もできなかったことで足元を見られたように、トランプ大統領もトルコに最大限の制裁をかけると脅しながら、結局はトルコに全面的に妥協したことで、中東での存在感は今後は全く発揮できなくなる。③この地域の主役は名実ともにロシアとその仲間たちになる。