【清武英利】持ち上げられ落とされた「中坊公平」から考える正義

2019/10/19
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、ジャーナリストの清武英利氏だ。
元読売新聞記者で、読売巨人軍では球団代表も務めた清武氏は、新刊『トッカイ-バブルの怪人を追いつめた男たち』のテーマとして、バブル時代の不良債権回収を一手に引き受けた「整理回収機構」を選んだ。

闇で笑っている奴がいる

──『トッカイ』では、銀行から整理回収機構に来ている人が、住専(住宅金融専門会社)出身者に対して、「そもそも君の会社がつぶれたのは自己責任。つぶれるような会社にいたのは君の能力だ」みたいなことを言っている場面があります。しかし、後にその人の銀行も破綻してしまいます。この一連の場面は、当時の「時代の転換点」を印象付けていますし、「時代の転換点」は今も起きていると思います。
清武 あの頃は「異常」と思っていましたが、これから先は、銀行本体が消えていく時代になっていくのでしょう。また同じようなことが繰り返されるかもしれません。
時代は転換しつつ、連続しています。当時の問題は、今も続いているというところを『トッカイ』の読者に考えてもらいたい。
(撮影:鈴木大喜)
──「不良債権」については、大手銀行の行員でも知らない若手もいます。国は今、「低金利でどんどん貸しなさい」という方針です。企業は低金利でお金を借りられるからつぶれないし、不良債権も減っています。しかし、これもどこかで聞いた話のようにも見えます。
一周回っていますからね。