きちんと稼いで自由に働く

企業文化か給料か。あなたならどちらを選ぶだろうか。
求人サイトのグラスドアが最近行った調査によれば、ほとんどの人が高い給料をもらうより、企業文化がしっかりとした会社で働くほうが幸せだと思っているという。
そう答えたくなるのもわかる。(貯金はたっぷりあっても)今日も明日も会社で嫌な思いをするのだと暗い気分で暮らすのか、(外食の機会は多少減っても)幸福で充実した毎日を送るのか。どちらがいいかと問われれば、私だって幸福を選ぶ。普通はそうだろう。
けれども本来、どちらか一方を選ぶ必要はないと思う。仕事というのは報酬にも、やりがいにも恵まれて然るべき。不自由なく生活し、家族の面倒を見られるだけの報酬をもらい、フレキシブルでポジティブな環境で働く。
あなたに学び、成長する能力があれば言うことなし。新たなチャレンジに立ち向かい、ほかの人々もそうできるように力を貸せばいいのだ。

完全分散型企業Aha!の挑戦

そんな働き方が可能なことを、私はじかに見て知っている。私がCEOを務めるAha!は、アメリカで最も成長著しいソフトウェア会社の1つだ。自分たちが何より大事だと考える価値観を土台に、ユニークな企業文化を築いてきた。
人の幸福を最優先にし、人間関係のもつれを避け、「透明性」や「日々の気づかい」といった長所を行動で示そうと努めている。
そしてもちろん、幸せで生産的な企業文化を培うのに欠かせないのがリモートワークだ。どこでも働けるフレキシビリティーこそが、私たちの文化の中核。Aha!は100人近いスタッフが世界各地に散らばる、完全分散型の企業なのだ。
文化あっての企業だとしたら、分散型チームで有意義な文化を創り上げるにはどんな要素が必要なのか。私たちの例で見ていこう。
1. 透明性
有害な人間はとかく寄り集まって、悪だくみをする。だが、離れた場所でともに働くとなると、率直で風通しのいいコミュニケーションスタイルを取らざるを得ない。この透明性が、スタッフ同士の関係をより均等にして、有害な言動を阻む。
そうした環境は、リーダーが率先して作るべきだ。職場には秘密も人間関係のもつれも派閥もいらない。
2. 心身の健康
つらい通勤に耐え、オフィスで毎日ドーナツを食べていたら、誰だって心身のウェルビーイングを脅かされる。こうした要素は企業文化にとっても迷惑だ。
3000人以上を対象とした調査では、回答者の77%がフレキシブルな働き方あるいはリモートワークが導入されれば今よりも運動し、健康な食生活が送れると思うと答えた。ストレスが減ると答えた人は86%に上った。
Aha!のスタッフからも、リモートワークのおかげで身体を動かし、健康的な食事を取る余裕ができたという声がよく聞かれる。
3. 仲間意識
仕事仲間から遠く離れた場所で1人で働くのは孤独で、疎外感を覚えるのではないか。答えを聞けば、あなたはびっくりするかもしれない。世界中で1万9000人を対象に調査したところ、リモートワーカーの55%が自分はチームの一員だと感じていると答えた。
チームスピリットを養うカギは、定期的な交流にある。Aha!では日々、Slackやビデオ会議を使い、週に1度はオンラインで全社規模のミーティングを行っている。
4. 感謝の気持ち
離れていても、感謝の気持ちは伝えられる。Aha!には、具体的な理由を挙げて同僚とその貢献に感謝のメッセージを送る「ハティチュード」という仕組みがある。しばし仕事の手を止めて仲間の小さな親切に感謝の気持ちを表せば、職場の雰囲気がいっそう前向きになるのは確実だ。
5. 幸福感
有意義な人生を送るうえで、幸福はとても重要なものだ。重要どころか、Aha!の存在理由は顧客と従業員の幸福にある。世界のどこでも好きなところで働ける自由があれば、人は日々の仕事をより楽しめる。環境にストレスを感じることなく、家族と過ごす時間も増える。
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こうしたリモートワーク文化のメリットを、私はこの目で見てきた。もちろん、リモートワークを実践している組織がかならずしも健全とは限らないし、分散型のチームが有害な言動にむしばまれることもある。
それでもリモートワークは、より幸せな働き方と生き方を実現する大きな可能性を秘めている。結局のところ、人を幸せにしてこそ「文化」ではないか。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Brian de Haaff/Co-founder and CEO, Aha!、翻訳:雨海弘美、写真:vernonwiley/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.