この会社にいたら、数年後の自分はどうなっているんだろう──。そんな風に思ったとき、先輩たちを観察するのが有効だ。
もっと責任のあるポジションにつき、プライベートでは結婚して子どもが生まれているかもしれない。昇進したり、海外赴任したり、長期休暇を取っているかもしれない。
もちろん、そのどれも起きない可能性もある。しかし職場の先輩がキャリア上どのような選択をして、それぞれのライフスタイルを築いてきたかを見ることはいいお手本になる。自分の将来像を考える上で、そしてそれが自分の求めているものかどうか考える上で役に立つことが多い。
だからこそ年の近い同僚だけでなく、先輩たちと個人的に親しくなる努力はする価値がある。とくに5〜10歳上の先輩は、あなたが人生の次のステージを設計するとき大いに参考になるだろう。
軽くコーヒーを飲みながら質問したり、仕事のテレビ会議後に少し雑談を交わしたりするのはきっかけになるが、一番いい機会は、オフサイト研修など社外での集まりだ。人間は環境が変わると気が楽になり、コツも不満も話しやすくなる。初対面の人との交流も盛り上がりやすい。
そんなチャンスが巡ってきたときのために、参考になりそうな質問事項を以下に挙げておこう。ただし、こういうことを話すのが好きな先輩もいれば、そうでない先輩もいる。相手をよく見て臨機応変な対応をしよう。

「今のワークライフバランスはどうですか?」

仕事抜きで話をすると、先輩が仕事でもプライベートでも時間に追われていることがわかる。あなたの上司が最後に休暇をとったのは、いつだっただろう。緊急事態が発生して、会社に呼び戻されていなかっただろうか。それとも完全に仕事から離れていられただろうか。
本人に聞かなくても、職場をよく観察すればわかることもある。早朝出勤や深夜残業をして、その時間に誰が仕事をしているかチェックするのもいいだろう。
とはいえ、会社では先輩の人生のごく一面しか見られないことが多い。それに会社では、あくまで自分の仕事とのつながりで、相手を見ることになりがちだ。たとえば、先輩が子供の学校の面談のために早退したときは、そうした背景や彼らの価値観よりも、自分のミーティングのスケジュールが変わったことが真っ先に目につきやすい。
先輩が趣味や家族との時間をどう作っているかといった質問は、やはり会社の外で会うときに聞いたほうがいい。仕事の後に1杯飲んだときや、クリスマスパーティーなどで会ったときがぴったりだ。
先輩の話を聞いて、「私も将来そういう風になりたい」と思うだろうか。あなたは先輩の仕事を有意義に思えるだろうか。うらやましい家庭生活を送っていると思うだろうか。

「昔とくらべて優先順位はどう変わりましたか?」

若手専門職の多くにとって、街の中心部に住んでいること(友達が近くに住んでいればなおよい)は大きな優先事項だ。だが、先輩にとってはそうでないかもしれない。
ひょっとすると、新しい支店の開設準備のために転勤したり、パートナーの転勤に合わせて別の街に引っ越したりしているかもしれない。子どもが生まれたのをきっかけに、幼稚園に入れやすい郊外に引っ越した可能性もある。
キャリア上の優先順位も、あなたが思い描くもの、あるいは一般に理想とされるキャリアパスとは根本的に異なるかもしれない。どこかの時点で、地味な研究生活や頻繁な出張や煩雑な人材管理に見切りをつけて、キャリアチェンジを図った可能性もある。
個人的に成長できる機会があるかどうかは、会社に残るかどうかに影響を与える大きな要因だ。先輩が異動を希望したとき、会社は快く応じてくれただろうか。大学院に通っていたときのサポートは?育児休暇はどうなっているのか?退職後の貯蓄プランをサポートしてくれるのか?
先輩たちは、こうした手当の重要性をあなたよりも理解している。こういうことは、会社の外で聞いたほうがオープンに話してくれる可能性が高い。いずれあなたも彼らと同じくらいの年齢になり、同じような問題に直面する。だから今、先輩の話に注意を傾けることは、未来の自分のためにいい参考書を集めるようなものだ。

「先輩はわたしの年齢のとき、定めた目標を達成しましたか?」

これは誰に聞くにも厳しい質問であり、ずばり聞くのは気が引けるかもしれない。だが、部署はどこであれ、自分が未来に成功できるポジションにいるかどうか、端的に知るのはいいことだ。
あなたの職場は社員に、自分が情熱を感じるプロジェクトをやるチャンスを与えてくれるだろうか。先輩は、努力した分野で昇進させてもらえたか。なぜ昇進できたのか、もしくはできなかったのか。社内での人事調整は大抵の場合あまりオープンにされないものだからこそ、知りたければ積極的に調べよう。
もちろん、個人的な目標は会社内にとどまらない。スペイン旅行や、カフェの経営を夢見る先輩もいるかもしれない。彼らはそれを実現しただろうか。それとも忙しすぎてできなかっただろうか。
将来のあなたと完全に同じ立場の人を見つけることはできないが、会社があなたの夢をサポートしてくれるかどうか知るのはいいことだ。

あなた自身に質問、「先輩が成功していると思う?」

あなたの成功の定義がどうあれ、先輩はあなたの将来のモデルだ。先輩が成功しているとあなたが思うなら、自信を持ち満足してそのまま働き続けることができるだろう。
先輩が成功しているとは思えないなら、先輩のキャリアを完全に真似るのではなく、少なくともどこかを工夫する必要があるとわかるはずだ。
ただし、先輩の成功を一面的に決め付けないことが重要だ。彼らの成功の定義はあなたの定義とは異なる可能性が高いし、家庭生活のほうが優先順位が高くなったり、あなたがまだ捉えていない仕事上のタスクに予想外のやりがいを感じるようになったのかもしれない。それにあなたの成功の定義も、いずれ変わるかもしれない。
こうした話を先輩から聞きたいなら、まずは軽くコーヒーでも飲み、2回目はランチに誘うのがいいだろう。先輩が忙しくなさそうな日を選んで、十分な時間を確保しよう。
相手のスケジュールに気を配ること。また、共通の関心に基づき、正直な関係を築こうとすること。会社にメンター制度があるなら、自分と同じ職域で1〜2歩先を行っている先輩を希望するといい。何がなんでもCEOをメンターに希望するより、あなたのキャリアデザインには参考になるはずだ。
どのような形で知り合うことになっても、相手に対する感謝の気持ちを忘れないこと。そして彼らの教訓をきちんと覚えておくこと。先輩の経験を知っていれば、自分に同じようなことが起きたとき、きっとうまく対処できるはずだ。
(執筆:Matthew De Silva記者、翻訳:藤原朝子、写真:skynesher/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.