【前編】ミッツ・マングローブ流「粋(いき)」の構造

2019/9/20
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、慶應卒で女装家として活躍するミッツ・マングローブ氏だ。
2016年から『週刊朝日』誌上で連載エッセー「アイドルを性(さが)せ!」を手がけているミッツ氏。羽生結弦、星野源、マツコ・デラックス、小泉進次郎ら、今をときめく各界の「アイドル」を論じるその筆致には、ミッツ氏自身の確固たる「美意識」がにじみ出ている。
このたび、この人気連載が『熱視線』(朝日新聞出版)として単行本化された。そのあとがきに、ミッツ氏は次のような一文を寄せている。
「改めて読み返してみると、つくづく自分の語感や表現のまどろっこしさに嫌気が差します。しかし同時に、この回りくどさや面倒臭さは、今の時代には大事だなとも思います」
「わかりやすさ」「正解」「効率」が幅を利かせるようになった今の時代、ミッツ氏が大事にする「面倒臭さ」は、不要なものと片づけられがちだ。しかし、その言葉に耳を傾けていると、何度もハッとさせられる瞬間がある。
わかりやすい世の中で、われわれは何を失ったのか──今回の「The Prophet」では、前後編で、ミッツ・マングローブの「面倒臭い」人生観に迫る。
ミッツ・マングローブ
ドラァグクイーン、歌手、タレント。総じて「女装家」。1975年、横浜市生まれ。10代中盤をロンドンで過ごす。慶應義塾大学法学部を卒業後、再び渡英しウェストミンスター大学に留学。商業音楽全般を学ぶ。帰国後の2000年、ドラァグクイーンとして東京でデビュー。以降、各地のクラブを中心にさまざまな活動やイベントを主催する傍ら、05年に星屑スキャットを結成。07年、スナック「来夢来人」で丸の内初の女装ママに。09年ころからテレビでも活躍。11年3月、「若いってすばらしい」(日本コロムビア)で歌手デビュー。

共感は、人をまひさせる