【後編】「オカマがヒーロー化する社会」の不思議

2019/9/21
『週刊朝日』誌上で連載中の人気エッセー「アイドルを性(さが)せ!」を単行本化した、『熱視線』(朝日新聞出版)を上梓した、女装家のミッツ・マングローブ氏。
インタビュー後編では、ミッツ氏ならではの視点で今の日本社会を読み解く。

歪められた「理想の結婚像」

──アイドルといえば「夫婦をセットでアイドル視する」という風潮もありますよね。木下優樹菜さんとフジモンさんに対して「この夫婦最高すぎる」みたいな。よその夫婦にそこまで思い入れできるって、ある意味すごいことだと思うのですが、ミッツさんはどう感じますか?
ミッツ それはおそらく、女性の社会進出と関係していると思うんですよ。
いわゆる「内助の功」的な、3歩下がった奥さんではなくて、夫婦が同じ熱量、同じ分量で一緒に子育てしていますとか、同じくらい稼いでいますといった部分が共感を得ているんじゃないでしょうか。
──そう聞くと、素敵なことのように思えます。
とはいえ、今って結婚というものをすごく自由にしたつもりが、かえってステレオタイプに陥っているように感じますね。
それこそ「3歩下がって」みたいなのはもう古い、もっと結婚って自由じゃん、みたいなところにいったはずなのに、逆に結婚の在り方が狭められてしまっている。
いまどきの夫婦タレントを見ていると「全部、これかい!」って思いますからね。結局みんな、夫婦そろって洗剤のCMに出るわけでしょ? 理想の形がそこに固定されてしまっている。