もはや広告代理店だけではない。オプトが挑む「日本企業総デジタルシフト」

2019/9/25
デジタル広告の領域で業界を牽引し続けてきたオプトグループが、そのあり方を変え「デジタルシフトカンパニー」へ大きく舵を切った。

“広告代理店不要論”もささやかれる今、彼らは何を考え、どんな社会変革を成し遂げようとしているのか。クライアントに伴走し、デジタルシフトやビジネス変革、新しい価値創造に挑むオプトグループの最新の姿とは。

オプトホールディング グループ執行役員であり、オプト代表取締役社長CEOの金澤大輔氏と、デジタルイノベーションに幅広い知見を持つ青山学院大学教授の松永エリック・匡史氏が語り合う。
Web広告代理店からイノベーション・パートナーへ
──社会・企業・個人すべての「デジタルシフト」を掲げるオプトグループ。広告代理店から、デジタルシフトカンパニーへと事業ドメインを大きく変化させていますが、その背景について教えてください。
金澤 これまでは、メディアや企業が起点となる「一方通行」のコミュニケーションが主流でした。
 しかし、生活者の考え方や価値観が多様化した現在では、企業と生活者「双方向」のコミュニケーションが求められ、企業が抱える課題も複雑化しています。
 そんな流れを受けて、グローバル市場も代理店のあり方は数年前から変わり始めています。
 2016年にアメリカのエージェンシーを視察したのですが、日本の代理店とはビジネスモデルがまったく違っていて衝撃を受けました。
 彼らはクライアントと共にビジネスの根幹となる戦略を考え、プロダクトやサービスを作り、プロモーションも手がけていた。
 それも、代理店業では主流となる手数料ビジネスではなく、成果報酬やレベニューシェア、フィーといったかたちで事業のリスクも取っていました。
 僕たちは、このままでいいのか。マーケティング担当者と与えられた予算内で何をするかだけを考えているようでは、企業の本質的な課題解決はできません。
 そこで、経営者と膝を突き合わせながら戦略の立案からプロモーションまでを担い、責任を持って実行を行う“イノベーション・パートナー”へ舵を切ると決意したのです。
「実行力」がオプトの強み
──事業戦略を担うというと、経営コンサルティングファームがエージェンシー機能を備え、企業のデジタルシフトを支援する動きも盛んですが、オプトグループに優位性はありますか。
金澤 提言で終わらず、実行までやり切ることです。「こうしましょう」ではなく「やります」と言い、企業と一緒に走る。
 それだけのスキルとノウハウ、最先端のデジタルの情報を培ってきたことが我々の強みです。
 もちろん中長期的には、リスクテイクも担っていきます。通常、エージェンシーはリスクを取りたがりませんが、パートナーには「本気の覚悟」が問われます。
 リスクテイクは実行力が伴っていないとできませんので、オプトグループはそこを磨いていきます。
エリック こんなこと言うと物議を醸すかもしれませんが、僕は頭だけで考えているようなコンサルタントに価値はなくなると思っているんです。
 企業が課題を解決したいとき、まず最初に何でもコンサルティング会社に相談する時代は終わりがくるのではと。
 僕は、コンサルティングファーム在籍時にデジタル事業を立ち上げましたが、残念ながらその実行にまでこだわれるメンバーはほとんどいませんでした。
 デジタルシフトを成功させるためには、クライアントと真剣に向き合ってビジネスモデルを変革し、リアルタイムでエンドユーザーの反応を見ながらデータ分析と改善を繰り返していく必要があります。
 その実行には、スキルと努力、熱量が必要で、頭で考えているだけではうまくいきません。
 インターネット黎明期からデジタル市場に向き合い、データの海の中を泳ぎながら何をどう分析して実行するかという課題とずっと戦ってきたオプトに、コンサルタントはなかなか勝てないと思います。
企業が抱える本質的な課題に向き合う
──実際に今、オプトグループには、どのような相談が寄せられているのですか。
金澤 たとえばアパレル企業が、企業戦略として「これからは洋服を売るのではなく、ライフスタイルを売る」という新しいメッセージを発信してブランドに落とし込んだとします。
 しかし、実際の店舗では「20%offセール」が毎週末行われ、とにかく多く売ることを重視される現象が生まれている。
 そうなると、生活者は安いからその企業の商品を選んでいるだけで、ライフスタイルを買っていることにはなりません。
 こうした経営戦略と現場のギャップに課題を感じている経営者からの依頼は多いですね。
 このときオプトは、ブランドメッセージと販促の間に生じたギャップについて、すべての情報やルールをデータ化し、どこにボトルネックがあるのかを分析して可視化します。
 その上で、伝えたいメッセージを生活者に正しく届けるためのプロモーションを行う。
 ほかにも、事業・サービスにおけるデジタルシフト支援をはじめ、アライアンスや提携、ジョイントベンチャーの立ち上げなど、さまざまなかたちで新規ビジネスの創出にも伴走しています。
 たとえば、損保ジャパン日本興亜さんのデジタルシフトを支援した事例があります。LINEを使うと、事故受付から保険金支払いの手続きをなんと最短30分できるんです。
 保険業界は電話と郵送が当たり前のアナログな業界。そこにLINEという新たなデジタルコミュニケーション手段を導入し、イノベーションを起こしました。
 このプロジェクトが成功した理由は、お客様のビジネス担当者が「自社をデジタルシフトをする」という強いリーダーシップを持っていたこと、そしてオプトのエンジニアとアジャイルチームを組んだ柔軟な開発が実現できたことにあります。
グループの力で日本全国を支援したい
──オプトグループでは、デジタル広告の運用だけでなく、企業内に人を送り込みインハウス人材の教育にまで領域を広げています。インハウス支援でクライアントが自立すると、自分たちの仕事を失う可能性もあるのでは。
金澤 インハウス支援によってクライアントのデジタルリテラシーを高められたら、デジタル領域のマーケットは大きくなります。
 マーケットが大きくならない限り、世の中のムーブメントは起こらないので、クライアントとその先のエンドユーザーのためには必要なビジネスモデルだと考えています。
エリック クライアントが成長すると、新しい課題が出てきますよね。
 現在の課題を脱却した先にある“次の課題”は誰も解決していないブルーオーシャンであり、オプトにとって新しいビジネス領域となる。正しい戦略ですね。
金澤 さすが、鋭いですね(笑)。
 僕たちはグループ全体で日本全国のデジタルシフトを支援したいと考えているんです。
 たとえば、大都市で展開する大手企業はオプトが、地方企業や中小・ベンチャー企業はソウルドアウトが。
 そして、集客や運用広告などをテクノロジーで支援する「集客ロボット」を開発しているSO Technologiesは、地方の中小企業や店舗と向き合う。
 従来であれば、予算の問題で広告代理店にお願いすることを諦めていたような企業も支援したいので、必要なラインアップをすべてそろえているところです。
 しかも、これらは上からの指示で作ったグループ会社ではありません。
 社員一人ひとりが「世の中をデジタルシフトでハッピーにする」ことに当事者意識を持っているので、「中小企業に向き合いたい」「地方企業を元気にしたい」と課題や熱量を持った人が、自ら手を挙げて続々とビジネスを生み出してきました。
 それができるのは、一人ひとりに裁量を渡して、挑戦できる環境を作っているから。
 個を確立できるフィールドがあり、それぞれがファウンダーの視点を持っていることがグループ全体の強みです。
エリック オプトは大企業に成長したにもかかわらず、ベンチャースピリットを感じ続ける数少ない企業ですよね。
 しかも創業者が熱量と思いを持ってメッセージを発信し続けている。だからこそ、オプトには業界をリプレイスしてほしい。
 こうして話していると「こんな会社で働きたいな」と感じますね。
金澤 入社、お待ちしていますね(笑)。
「成功事例」がデジタルシフトのカギとなる
──日本企業のデジタルシフトを推進するにあたって、現在の課題や壁は何でしょうか。
金澤 すべての経営者に対し、危機感を醸成させられていないことです。
 海外視察ツアーを実施し、実際にデジタル化したグローバルな生活者の現状を見せてもなお「日本が変わるまでには、まだ5年10年かかる」「自分が社長の任期を終えるまでは大丈夫だ」と思われることがよくあって。
エリック 特にアジアに対する日本の“優位性の幻想”みたいなものがありますよね。日本企業は欧米ばかりを見ているからこそ、中国そしてアジアを見るようにすすめています。
 そこで気づくのが、いかに日本が遅れているかという現実。行くだけでも見込みのある企業といえますけどね。
金澤 その一方で、生活者の多様な行動変化とグローバル企業の本気度合いに危機感を抱いた経営者は、デジタルシフトは急務であると理解した上でオプトをパートナーに選んでくれています。
 だから、僕たちがやるべきことは、クライアントと成功事例を作って発信すること。本気でやれば変われる、というお手本をしっかり見せていくことだと思っています。
エリック サービスがネットに急速に移行している今、デジタル化なしに新しいサービスは生まれない。モノだけ作ればいいというサービスは成り立たない時代になってきているのです。
 ネットとリアルの関係も変わっていて、リアルをネット化するのではなく、“ネットありき”のリアルになりつつありますよね。
 ネットの情報なしにリアルが成り立たないし、リアルの店舗もデジタルの力を使ったデータを活用していかないと生き残れない。人間の力だけでやりきる昔のやり方は通用しません。
金澤 その通りです。たとえば、海外のデパートやショッピングセンターでは店舗が淘汰されていて、その空いた場所にオンラインとオフラインを融合させたニュー・リテール系の企業が参入しています。
 彼らはネット販売のデータを持っているからこそ、リアルな店舗をオンラインと融合させ、より良い体験を提供したいという思惑がある。
 実際、生活者の選択肢は「リアル」か「ネット」の二択ではなく、ネットで調べて店舗で買うことも、店舗で試着したり商品を確認したりして、後日ネットで購入することもできるようになった。
 間違いなく、この流れは日本にも訪れます。
 オプトのクライアントには小売業が多いので、「このままではお客様の店舗がなくなってしまう」と危機感を持った社員がプロジェクトチームを立ち上げる動きも社内で起こっています。
エリック 生活者起点で考えると自然な流れですよね。広告費の10%でもデジタルシフトに回せば、会社は少しずつでも変わっていくことを、多くの経営者に気づいてほしいと思います。
日本企業の再興に本気で挑む
──オプトグループとして、この先どのような価値を提供したいとお考えでしょうか。
金澤 日本中の企業の成長が鈍化していることに危機感があります。
 企業がやりたいことと、生活者の行動が変化するスピードのギャップがどんどん広がっているので、その溝を埋めるのが、我々オプトグループの使命。
 生活者に心地よい体験をしてもらうことと、企業にV字回復をしてもらうことを最大公約数で実現させるために、僕たち自身もリスクを取りながらあらゆるアプローチをしたい。
 そうすることで、若者が「日本は遅れているからグローバルに出よう」と考えるのではなく「もっと日本を盛り上げたい」と思える社会に変え、日本の国力を底上げしたいと考えています。
 創業から15年、たくさんの日本企業に支えてもらってオプトの今があります。だからこそ、恩返しの思いも込めて実現させたいです。
ここからは、2019年7月にオプトグループのソウルドアウトから誕生した、地方を含む日本全国の中小企業や店舗などのデジタルシフト支援に挑戦するSO Technologiesについて、代表の山家秀一氏に語っていただいた。
1980年生まれ。グロービス経営大学院(MBA)修了。2005年に株式会社オプトに入社。コンテンツ・アフィリエイト部長、BPR部長を経て、ソウルドアウト株式会社設立時に取締役として参画。2018年よりソウルドアウト株式会社取締役 兼 株式会社テクロコ代表取締役社長。2019年7月より、SO Technologies株式会社代表取締役に就任。
日本全国にやりがいある仕事を増やすために
山家 「日本中、どこでも、だれでも、カンタンに、その情熱を稼ぐ力に変えるデジタル集客プラットフォームを創る」これが、SO Technologiesが掲げるビジョンです。
 私は10年前、オプトの子会社としてソウルドアウトを設立しました。その背景にあったのは、中小企業や地方企業にもデジタルマーケティングを活用してもらいたいという思い。
 日本にある約400万社の企業のうち99.7%が中小企業ですが、当時、予算の少ない中小企業や地方の企業に特化してデジタル支援をしている会社はありませんでした。
 そこで、デジタル化に意欲的な中小企業をハンズオンで支援し、ソウルドアウトは上場も実現。しかし、ハンズオンでは支援できる企業の数に限りがあります。
 ソウルドアウトが持つこうした課題を、テクノロジーを強化することで解決し、より多くの企業にデジタルを活用してもらおうとSO Technologiesを設立したのです。
 現在提供しているのは、集客に特化した2つの「集客ロボット」。
 1つはインターネット広告の運用業務を自動化する「ATOM」で、もう1つはソーシャル領域、特にGoogle マイビジネスを簡単に使えるようにする「ライクル」というプロダクト。
 どちらも、プロの最先端ノウハウを搭載した“安価”なものです。
 これにより、今まで予算がなくてインターネット広告の運用等をプロに頼めなかった企業や店舗は、1万円でも3万円でも無理のない予算で集客と売り上げにつなげられます。
 人力でなんとか運用していた企業や店舗は、作業をロボットに任せることでもっと重要な仕事に時間を使えるように。
 街のラーメン屋さんやガソリンスタンドなどはインターネットで集客する重要性はないと思われがちですが、ユーザーの行動がデジタル起点になった今、すべての企業がデジタルシフトせざるを得ません。
 スマホで検索してもサイトに辿り着けなかったり、情報が古かったり、営業時間が間違っていたりすると、ユーザーは困り失望してしまうでしょう。
 ホームページがなくても、SNSやGoogle マップなどに必要最低限な情報を載せる必要がある現代だからこそ、我々のソリューションを活用してほしいと思っています。
 そうしてデジタルを活用する企業を増やすことで目指したいのは、若い世代の心が躍るような仕事を増やすこと。
 彼ら彼女らは生まれた瞬間から「デジタルネイティブ」という強みを持っていますが、それを生かせる仕事が地方には少ないのが現状です。
 さまざまな業態のあらゆる企業がデジタルシフトすれば、若者が強みを発揮できる仕事は増えるはず。
 実際、ソウルドアウトが支援する地方のお客様のなかには、ECをはじめたことで若い世代が結果を出して部長に抜擢され、事業を伸ばしているという好例も生まれています。
 そういったサクセスストーリーがたくさん生まれる社会にするためにも、日本全国にやりがいのある仕事を増やすきっかけを作っていきたいと思っています。
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(構成:田村朋美 編集:樫本倫子 写真:岡村大輔 デザイン:黒田早希)