【星﨑尚彦】倒産寸前のメガネスーパーをV字回復させたプロ経営者

2020/1/5
プロ経営者と呼ばれる人たちがいる。職業=社長業。業種や規模に関係なく、経営の手腕を発揮する。メガネスーパー社長の星﨑尚彦氏はそんな1人だ。

三井物産、スイスのビジネススクールIMDを経て、初めて経営に携わったのは33歳のとき。すでに社長歴は21年になる。フラー・ジャコージャパン、ブルーノマリジャパンなど外資系企業のトップを務めたほか、2011年からはアパレルメーカー、クレッジの経営再建に力を尽くした。そして13年7月、メガネスーパー社長に就任。8年連続赤字で倒産寸前だった同社を奇跡的なV字回復へと導いた。

いじめられっ子だった少年時代、将来何をやりたいか分からなかった青春時代を経て、いかにプロ経営者という職業にたどり着いたのか。星﨑氏のこれまでを振り返りつつ、その哲学に迫る。(全7回)

職業は社長です

僕の職業は社長です。基本的には365日、仕事をしています。完全なオフという日はないですね。これまでかれこれ21年、社長業をやっているので、ずっとそう。
でも、全く苦ではありません。小売りなので年中、店が開いている。だから、数字を見ないほうがむしろ疲れます。海外にいてもどこにいても、いつも売り上げだけは1時間おきに見ています。
かばんにいつもパスポートを入れていて、常にいつでもどこでも行ける態勢です。フットワークは軽いほうだと思います。
例えば、北海道に出張中、交通機関が不通になり、予定していた便で帰れなくなったとします。その場合、僕はどんな手段を使ってでも帰って来ます。新千歳空港から新函館北斗駅までタクシーで移動して、そこから東京まで新幹線で帰ったこともありますし、新潟や韓国を経由したこともあります。
なぜそこまでして帰るのかと言えば、次の日に予定があるからです。みんなの予定を狂わせるわけにはいかない。組織で立場が上になればなるほど、少なくともスケジュールに関しては絶対にわがままを言うべきではないと思っています。
社長の都合でスケジュールを変えてもらうのは、本当に申し訳ないこと。社員は誰も文句を言いませんが、振り回される。もしかしたらプライベートの予定を犠牲にしているかもしれない。だからできるだけ早くスケジュールを決めて、変更しないようにしています。それは、社長になる前からそうしています。
僕は「自分がされて嫌なことは、絶対に人にすまい」と誓っています。
例えば、僕は待たされるのが大嫌い。だから絶対に人を待たせません。初めて行くところであれば、まず場所を確認して、30分前から近くの喫茶店でスタンバイして、15分ぐらい前に行くとか。細心の注意を払います。周囲からは早く行くのが好きだと思われていますが、全然違う。待たせるのが嫌いだから、そうしているだけです。
もし10回に1回でも遅刻したらもう、遅刻する仲間に対して何も言えなくなる。だから遅刻する人に「遅刻するな」と言うためには、10回に1回でも遅刻してはいけないのです。そういう貯金って日頃の行動に出る。「あの人が遅れて来るってことは、よほどのことだな」って思いますよね。その貯金を作り続けて21年なのです。

8年連続赤字の会社を再建

フラー・ジャコージャパン、ブルーノマリジャパン、アパレルメーカーのクレッジなどの社長を経て、メガネスーパーの社長に就任したのは2013年7月です。8年連続赤字、債務超過という会社を立て直すために、先頭に立ってさまざまなことに取り組みました。