【監督激白】バスケ日本代表が「W杯5戦全敗」から得たもの

2019/9/16
9月15日、バスケットボールのワールドカップ(W杯)中国大会が終わった。
昨日(9月15日)夜9時に行われた決勝戦では、スペインがアルゼンチンに95-75で圧勝し、2006年のW杯日本大会以来、2回目となる世界一のトロフィーを掲げた。
一方、自力出場としては21年ぶりのW杯となった日本代表(世界ランク48位)は、ワシントン・ウィザーズの八村塁(21)とメンフィス・グリズリーズの渡邊雄太(24)という2人のNBAプレーヤー、そして、日本に帰化した川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカス(34)という“ビッグ3”を擁し、「史上最強」とも言われた。
しかし、結果は5戦全敗という「史上最悪」の結果に終わった。
出所:NewsPicks編集部
とはいえ、W杯アジア予選を振り返ると、出場できたこと自体が奇跡だった。
W杯アジア1次予選では、2017年11月と2018年2月の4試合で4連敗。それによって、1試合も負けられない“崖っぷち”に立たされた。
流れが変わったのは、2018年6月。八村、ファジーカスの両選手が日本代表に新加入。「負ければW杯1次予選敗退」という状況で、今回のW杯でもベスト4に入ったオーストラリア相手に79-78で劇的な勝利を収めた。
そこから日本代表の勢いは止まらず、2次予選まで8連勝という快挙で、一気にW杯出場を決めた。
この2年間、日本代表に何が起きていたのか。そして5戦全敗に終わった今回のW杯は何が敗因で、何を得たのか。
NewsPicks編集部は、2017年7月から日本代表を率いるフリオ・ラマス監督(ヘッドコーチ)に独占インタビューを実施した。
2020年の東京オリンピックに向けて足りないもの、そして、これから日本バスケが向かうべき方向などについて、ラマス監督に迫った。
フリオ・セサル・ラマス(Julio César Lamas)男子バスケットボール日本代表監督(ヘッドコーチ)
1964年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。「オブラス・サニタリアス」や「サン・ロレンソ」「ボカ・ジュニアーズ」という名門クラブを含め、アルゼンチンリーグの監督(ヘッドコーチ)として、4度のリーグ優勝。最優秀コーチ賞を7度受賞した実績がある。レアル・マドリードなどスペインリーグでもチームを率いた経験がある。2012年のロンドンオリンピックでは母国アルゼンチン代表をベスト4に導いた。2017年7月に日本代表監督に就任。(写真:鈴木大喜)

「世界との差」を痛感

──W杯直前に国内で行われた強化試合では、ニュージーランド(世界ランク38位)、アルゼンチン(同5位)、チュニジア(同51位)には負けたものの、ドイツ(同22位)には勝っていました。しかし、本番のW杯は5戦全敗でした。どう受け止めていますか。
ラマス 国内で行われた5試合で、我々は良いプレーをできていました。「W杯でも同じようにプレーできるだろう」という期待もありました。
しかし、実際のW杯に行ってみると、世界との差というのがまだまだあることを知りました。
──1次リーグの3戦はどう総括しますか。初戦のトルコ戦(世界ランク17位)は67-86、2戦目のチェコ戦(同24位)は76-89、3戦目のアメリカ戦(同1位)は45-98でした。
第1戦のプレー自体は「OK」と言えるレベルでした。「良いプレー」とは言えませんが「OK」とは言えるレベルでした。
第2戦のチェコとは、良く競争できていました。この2試合というのは、非常に収穫も大きかったし、ポジティブな面もあります。
しかし、第3戦のドリームチーム(アメリカ代表)との試合は、すごくネガティブな印象を残しました。プレーも悪いし、得点も取れないし、序盤から得点差をかなりつけられて、負けましたから。
9月5日、八村塁がアメリカ戦で決めた意地のダンク(写真:松尾/アフロスポーツ)
──エースの八村選手は、3連敗後の順位決定ラウンド2戦は「膝の不調と疲労」で欠場しました。そして、司令塔の篠山竜青(31=川崎ブレイブサンダース所属)もアメリカ戦で負傷し、左足を骨折(左第1趾末節骨)しました。
八村と篠山をケガで失ってからは、やはりチームにとってはそれ自体が、ハンディキャップとなりました。
この2人のゲームメーカーを失った状態で、あとの残りのトーナメント(順位決定戦の2試合)も不利な状況が続きました。
──振り返れば、W杯前の6月には「初の日本人1億円プレーヤー」となった富樫勇樹選手(26=千葉ジェッツふなばし所属)も全治2カ月のケガで、W杯に出場できませんでした。
それも悪いニュースでした。
──結果的に、今回のW杯中国大会は、5戦全敗という記録に終わりました。日本代表がそこから得たものとは何でしょうか。