[ブエノスアイレス 2日 ロイター] - 2日朝のブエノスアイレスでは、銀行が開く前の早い時間から預金を引き出そうとする顧客らの長い列ができた。アルゼンチン政府が資本規制を導入し、ドルの購入や送金を月1万ドル以内に制限したためだ。中央銀行によると、預金引き出しは制限されていないという。

これまでの経験で、経済混乱による預金引き出し制限に慣れているアルゼンチン国民は、通貨規制の最初の兆候が見られると素早く銀行から預金を引き出し、家庭に保管する傾向がある。

1989─90年、そして2001─02年の危機では、銀行が預金引き出しを制限し、多くの国民がお金を下ろすことができなかった。01─02年の危機では暴動が起き、人々はスーパーから商品を略奪。怒れる預金者らが銀行の現金自動預払機(ATM)を破壊した。

今回の経済危機で暴動は起きていないが、8月11日の大統領選予備選以降に事態は悪化した。予備選で現職のマクリ氏がフェルナンデス元首相に大差で敗れたことで、介入主義的政策が復活するとの懸念が市場を揺るがした。投資家の信頼感は失われ、株価、債券相場、通貨ペソが急落。予備選以降、ペソの対ドル相場は25%近く下落した。

マクリ大統領はこの事態に対応するため、先週、政府の債務返済を繰り延べる方針を表明。9月1日には通貨管理を認めた。かつて前任者の保護主義的政策の反転を公約した、企業寄りのマクリ氏による驚くべき方針転換だった。

中銀の統計によると、預金引き出しは通貨管理の発表前から始まっており、ドル建ての銀行預金総額は予備選前の352億4000万ドルから、8月27日には315億5000万ドルに減少した。