企業、ばらつく税負担 日立36%、ソニー4.5%
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税効果会計を念頭に置いて考える必要があるかと思います。
課税を繰り延べたり、過去の欠損金を回収すれば、その分、ある会計期間に支払った税金は利益に対して少なくなります。
しかし、税負担率は(法人税等+法人税等調整額)÷税引前当期純利益で計算され、課税の繰り延べや欠損金の回収によって税金の支払い額が減ったとしても、その分法人税等調整額が変動するので、結果として税負担率は法定実効税率に近似します。
しかしながら、永久差異がある場合、外国子会社との間で税率に差がある場合、繰延税金資産の一部が回収不能と評価されている場合等には、税負担率が法定実効税率から乖離します。
つまり、単に、課税を繰り延べたり、欠損金を計上又は回収しているだけでは税負担率は動きません。
例えば、記事にあるような研究開発費に関する控除を受けている場合や、子会社からの受取配当金の益金不算入が多いHD企業単体の場合には、税負担率が下がります。
また、外国子会社が現地で納税していて、現地の税率が低ければ、連結FSにおける税負担率は下がります(CFC税制などの場合、そうならないこともあります)。逆もまた然りです。
税負担率が突出している国際帝石は外国税と外国子会社適用税率差異の影響で税負担率が上がっているみたいですが、これが何かは詳しくは知りません。
更に、欠損金が生じて税金を払わなくても繰延税金資産が計上されますが、繰越期間内に回収できないと見積もっていた場合には繰延税金資産が計上されません。しかし、結果的には回収できたり、回収の目処が立った場合などは、その期に税負担率が下がります。
ソニーは税負担率が5%弱ですが、要因は回収できないと思っていた欠損金を回収する目処が立ったことによるもののようです。ソフトバンクの税負担率が下がったのも、過去に回収不能と見込んでいた繰延税金資産を、親子上場の効果で回収できたことによる部分があります。
なお、日本基準は前期から開示が拡充され、評価性引当額変動の主な要因や繰欠の回収可能性について定性的に開示することが要求されるようになりました。
また、私見ですが、日本基準はIFRSや米国基準に比べて繰延税金資産の回収可能性を厳しくみるので、適用するGAAPによっても少し影響があるかも知れないと思いました。既にSaito.Kさんが詳細を記載されているので、
私は細かいツッコミを。
>法人税の法定実効税率は13年度の37%から
>16年度は29.97%、18年度以降は29.74%となっている。
これ、嘘です。
これって財務省公表値なんですが、このような数値になるのは
地方税が全て標準税率のみの場合だけです。
しかし、実際は多くの自治体において超過税率が課されており、
実効税率はこれより1%ほど高くなります。
東京都23区内にのみ事業所のある大会社だと、
30.86%→30.62%です。
また、実効税率算定の枠外の税金として事業税の外形標準課税があります。
なお、事業税の外形標準課税が課せられない中小企業だと、
実効税率が最大で35%ほどまでになります。
外形標準課税がかからない分、所得割の税率が高くなるから。
税負担が少なくなったよと見せかける為の数字遊びを
財務省がやった結果が「実効税率30%切り」です。
昔は、東京都23区ベースで実効税率を公表してたんですけどね。
なお、この記事の税負担率にも、
事業税の外形標準課税は含まれてません。
あと、不動産業者など消費税の課税売上割合が小さい会社も
消費税を最終負担しているのですが、ここには出てきません。
販管費に含まれてしまい、外部には見えなくなる為です。法人税を、所得の大きさではなく、企業規模に応じて負担しなければならない事業税のように考え、低い実効税率の企業を非難する人がいる。赤字でも同じ税率で負担しろというのだろう。
税金は資金の流出だから、企業価値を減少させないためには、実効税率が低い方がより優秀な経営だとは考えないのだろうか?
ところで、上場企業の中央値が31.4%と、日本の制度上の実効税率である約30%を上回っていることに驚いた。
上場企業の半数は、より多くの法人税を負担しているのだが、何らかの経営の失敗に依るのではないことを祈る。