「それは、ロックか?」オプトが“デジタルシフト”を掲げる理由

2019/8/28
全ての企業がデジタルシフトしなければ、生き残れない時代が来た──。

大きな波が押し寄せるなか、社会・企業・個人のデジタルシフト支援を行うのが、デジタル広告の雄・オプトグループだ。広告の枠を超え、新規ビジネスの構築やベンチャー投資、デジタル人材育成、AI事業など、さまざまな経営・社会課題の解決に挑んでいる。

デジタルシフトによって、日本社会はどう変わるのか。今、企業に求められる姿勢や考え方とは。オプトホールディング代表取締役社長グループCEOの鉢嶺登氏と、デジタルイノベーションに幅広い知見を持つ青山学院大学教授の松永エリック・匡史氏が語り合う。

デジタルシフトはトップマター

──4強といわれるデジタル広告代理店のなかでも、クライアントのデジタルシフト支援で確固たる地位を確立しているオプトグループ。2019年を「デジタルシフト元年」と掲げていますが、なぜオプトがデジタルシフトなのでしょうか。
鉢嶺 「デジタルシフトしなければ、これからの時代は生き残ることができない」。今、多くの企業がこのような危機感を抱いています。
 しかし、「うちの会社はもう完全にデジタル化ができている」と自信を持って断言できる経営者がどれほどいるのでしょうか。実際に多くの企業トップとお話ししますが、僕はほぼお会いしたことがありません。
 そのため、リアルな経営の現場から「デジタル人材を送り込んでほしい」「社員にデジタル教育をしてほしい」「デジタル時代に沿った新しいビジネスを一緒に作ってほしい」といった既存の広告・マーケティングの枠を超えた相談が急増しています。
 このような相談をオプトにしてくれること自体が、とてもありがたいこと。お客様のニーズに応えるべく、事業の幅を広げてきました。
エリック 大企業の場合、トヨタの豊田章男氏のように危機感を自ら表明するトップと、雇われ社長に近い意識を持つトップの二極化が進んでいます。
 デジタルシフトはトップの責任で行わないといけないのに、いまどき「デジタルはわからないから、やらなくていい」と尻込みするようであれば、その会社は本当に危ない。
 今の時代、デジタルは会社にとっての「血液」です。それを必要ないというなら「僕の体に血液はいりません」と言っているのと同じ
 アメリカでは、トップの役割が「自ら変革を起こす人」へ明確に変わったことで、CDO(Chief Digital Officer/最高デジタル責任者)が次々とCEOに就任しています。
 これはCDOがイノベーターであることから、現在のCEOにも同じイノベーターの素養が必須になってきていることも意味している。
 そういった新陳代謝が日本企業には自然と起こりにくいのだとしたら、確実にオプトのような企業に寄り添ってもらう必要があると思います。自力で変革できないなら、力強いサポーターに頼ればいい。あとは、頼る勇気です。

GAFAに「勝てる」と言い切れるか

──企業における本質的なデジタルシフトとは何か。デジタルシフトを掲げながらも勘違いしている企業は少なくないように思います。
エリック デジタル“ごっこ”ですね。僕は、その最たるものが、はやりのRPAだと思うんです(笑)。
 決してRPA自体を否定しているわけではなく、デジタルシフトを掲げるにあたって、なにかしらすぐに数字で見える成果がほしいから、RPAを選ぶ。
 結局、短期的なコスト削減をしているだけなのに、それを理解していないことが大問題だと思うんです。
鉢嶺 デジタルシフトの本質は、GAFAが自分たちの領域に参入してきても「うちは大丈夫」と自信を持って言える状態になっていること。
 Amazonひとつをとってみても、すでにeコマースの会社ではなくなり、アパレルや不動産、自動車領域などあらゆる業界に参入しています。結果、アメリカの小売業界はバタバタと倒れました。
 同じことが日本でも必ず起きる。だからこそ、デジタルシフトによって根幹から企業を変革し、ビジネスモデル自体を変えていかないと生き残れない
 それを本当にトップが理解しているかといえば、まだほとんどわかっていないのが現状でしょう。

デジタルシフトは必ず人々を幸せにする

──オプトホールディングのメッセージには、「社会、企業、個人のデジタルシフトを支援する」とあり、全ての人を変えていく強い意志を感じます。
鉢嶺 いま起きていることは数百年に一度の産業革命。だからこそ、世の中全体を変えないといけないと思っているんです。
 第1次、第2次、第3次産業革命を通じて、人類は進歩し、繁栄してきました。有史以来の人類の三大課題は、飢餓、疫病、戦争でしたが、産業革命によってこの課題はほとんど解決した。
 デジタル化という今回の第4次産業革命でも、人類が発展することはほぼ間違いない。
 たとえば、「AIによって職が奪われる」と危惧する方もいますが、産業革命を推進すれば人類は必ず幸せになると僕は信じています。これは世の中の流れなので逆らっても意味がない。
 とはいえ、自らデジタル化できるリソースを持つ会社は少ないので、1600人のデジタル人材がいるオプトがサポートすることで、繁栄に導けるのではないかと思っています。
エリック 今のネット社会は、ネガティブワードに“いいね”がたくさん付く傾向にありますからね。非常に気持ち悪い時代です。でも、これから起こることはそんなにネガティブな未来ではありません。
 自動車が誕生したとき、馬車に関わっていた人たちの仕事はたしかになくなったかもしれないけど、代わりに新しい仕事がたくさん生まれて、僕らは豊かになった。
 ドラえもんを見て「こんな未来があったらいいな」とワクワク思えるのに、AIや最新テクノロジーがメディアに登場するとなぜ「自分たちの仕事を奪われる」という発想になるのか、僕は疑問ですね。メディアもそろそろ変わるべきです。

日本企業は、もはや生死の境にいる

──「デジタルシフト」というワードが掲げられてから、長らくたちます。やっと今、潮流が変わりつつあるのでしょうか。
エリック 変わらざるを得ないですからね。
 日本はギリギリまで「日本式」でごまかし過ぎたんです。働き方も終身雇用の制度も。それが膿(うみ)になって出たところに、グローバル化の流れも押し寄せてきて、もはや生きるか死ぬかの瀬戸際です。
 だから、「うちの会社は伝統があって」とかたくなに拒否するのではなく、勇気を持って会社の根幹から変えていかないとマズい
鉢嶺 僕は、成功事例を作れば大きな流れが生まれると思っています。
 思い起こしてみると、2000年の初めに「ネット広告をやりましょう」と提案しても誰も見向きもしませんでした。
 でも、諦めずに未来を語り続けていると、「そこまで言うならやろう」と採用してくれる企業が現れた。そして、その高い効果を見て他社も次々とネット広告を取り入れるようになりました。
 SNSマーケティングも動画広告も同様で、この流れを繰り返して浸透してきました。それが今はデジタルシフトだと思うんです。
 「デジタルシフトしないと衰退しますよ。下手すると潰れますよ」と伝えるだけで動かすことはなかなか難しい。
 でもある企業が「そこまで言うなら」と本気になり、オプトが全力でサポートしてデジタルシフトが成功したら、他の企業も腰を上げるようになる。
 この成功事例をどんどん作り出していきたいと思っています。

自らの本質的な価値を再定義する

──デジタルシフト自体を目的とせずに手段とし、いかにイノベーションを起こすか。発想の転換が必要ですが、既存事業を何十年も続けた大企業にとっては、簡単なことではないかもしれません。
鉢嶺 お客様が悩む究極のポイントはそこです。
 たとえば自動車業界では、シェアリングエコノミーと電気自動車、自動運転という3つの大きな変化によって、従来のように車を作って売るビジネスモデルが崩壊しつつあります。
 そこで、車というプロダクトを提供する発想から「移動」というサービスの提供へと考え方が変わり、大変革が始まっていますよね。
 どの業界の企業も自分たちの本質的な価値は何かに立ち戻り、提供するサービスのあり方やビジネスモデルのあり方を再定義すべきタイミングが来ています。
エリック よく誤解されているのですが、デジタルとはインターネットやAI、IoTのことではなく「非連続なイノベーション」のこと。
 米国で「CDO」というロールを創造し、リードしてきたCDO ClubのCEO、デイビット・マシソン氏と話をしたときに「CDOが役割を一番果たした会社はMTVだ」と言ったんです。
 「MTVは映像によって音楽を『聴くもの』から『観るもの』に変えて、音楽の歴史を変えた。これがイノベーションなんだ。このイノベーションこそCDOの役割なんだ」と。
 何かを非連続に変えることがデジタルシフトだと言われて、なるほどと腑に落ちました。

オプトの本質は「ロック」

──鉢嶺さんが描く、これからのオプトグループについて教えてください。
鉢嶺 僕は1997年に「インターネットビジネスがおもしろい」と思ってこの業界に参入しました。インターネットによって世の中が変わる。この瞬間に立ち会えることに心底ワクワクしたんです。
 既得権益に新しいものが勝てる、大企業にスタートアップが勝てる、ゲームのルールが根底からくつがえる、新たな価値創造が始まる──。
 純粋に、その未来を見たい。自分たちの手で新しい時代を作り出したいと思った。
 実際、世の中は大きく変わりました。そして、この流れは今後、数十年続く第4次産業革命の序章です。だから、僕たちはそのワクワクする渦中にい続けたい
 大きな波の中でお客様のニーズにしっかり応えながら、2030年には世の中から必要とされる存在の証しとして「1兆円企業」になる。そう強く決意しています。
エリック オプトの強さは、創業時に“けんもほろろ”にされながらも、熱狂していたところにあるのでしょうね。
 それから約20年たってなお、その気持ちを保ちながら新しいことに挑戦し続けていて、なんだか“ロック”だなって感じるんです。
 次のワクワクがオプトの5年後、10年後となり、それが業界全体の5年後、10年後を意味しているのかな、と。
 僕は、周りから何を言われようと新しいことに挑戦し続ける「ロックなオプト」に期待したいです。
鉢嶺 まさに、オプトがデジタルシフトに挑戦する理由は「ロックだから」
 実は、社員番号2番の創業メンバーに、「大企業を辞めてなぜオプトに来たのか?」と聞いたことがあるんです。その答えは「ロックだと思ったから」。
 その事業や投資は時代を、世の中を変えるのか。社会的意義はあるのか。そして、なによりもワクワクするのか? これが創業から僕たちが大切にしている考え方です。
 やるからには時代を変え、社会を創造し、人類の未来の繁栄をつくる。そんなロックなオプトであり続けたい。デジタルシフトによってワクワクする未来を描くために、僕たちは本気で日本企業のデジタルシフトを推進していきます。

鉢嶺氏の新著『GAFAに克つデジタルシフト 経営者のためのデジタル人材革命(日本経済新聞出版社)』が9月21日に刊行されます。
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(構成:田村朋美 編集:樫本倫子 写真:岡村大輔、デザイン:黒田早希)