【エーザイ柳】なぜ日本企業は「無駄に」お金を貯めこむのか

2019/8/19
「CTO」(最高技術責任者)、「CMO」(最高マーケティング責任者)、「CRO」(最高リスク責任者)、企業は様々な分野で最高責任者「CxO」を任命して複雑化する経営課題に取り組む流れが起きている。
そうした中で、とりわけ重要性が増しているのが、最高財務責任者(CFO)だ。
今年の株主総会では、機関投資家から株主還元の充実や経営陣交代といった厳しい要求が増加した。その一方、アメリカと中国の対立激化で市場は大きく動いており、リスク管理の難度が上昇している。こうした場面で大きな役割を担うのがCFOだ。
これからの時代に求められるCFO像とは何か。
ヘルスケア業界で1位の評価を受けており、経済産業省の「伊藤レポート」で執筆委員、早稲田大学大学院客員教授としてコーポレート・ガバナンス(企業統治)改善にも大きく関わる、医薬品メーカー、エーザイの柳良平CFOに話を聞いた。

日本株はディスカウントされている

──エーザイのCFOをしながら、伊藤レポートの執筆などを通じて企業や投資家に改革を訴えています。企業が抱える課題を教えてください。
 日本では経営陣のファイナンシャルリテラシー(金融知識)の不足、資本コスト(借り入れ・株式による資金調達コスト)の意識の低さ、独立社外取締役の質と量に課題があります。
このようなコーポレート・ガバナンス上の問題の結果、企業価値がディスカウント(過小評価)されています。
例えば、今年のアンケートで日本企業の保有する現金100円をいくらで評価するかと海外投資家に聞いたところ、平均は55円でした。