いま、求められる―「機会」を生み出す21世紀型コンサルのチカラ

2019/8/6
 課題解決力だけではもうクライアントに選ばれない──。 アビームコンサルティング(以下、アビーム)の戦略ビジネスユニット長として150人超のコンサルタントを率いると同時に経営企画グループ長の役割も担う宮丸正人氏。

 過去に金融会社、投資銀行の経営戦略や事業開発の責任者として様々なコンサルティングファームと仕事をしてきた経験から、コンサルタントの提供すべき価値に強いこだわりを持っていた。

 テクノロジーの進化によって、めまぐるしく変化するビジネス環境のなかで、これからの「コンサルタント」に求められる力とは。
宮丸正人 アビームコンサルティング株式会社執行役員 プリンシパル 戦略ビジネスユニット長 兼 経営企画グループ長大学卒業後から金融業界に従事し、大手上場金融系会社2社の企画部門、事業開発部門、経営戦略部門の責任者を歴任後、株式会社リサ・パートナーズの取締役CFO兼経営戦略部長を経て、アビームコンサルティング株式会社に入社。現在、戦略ビジネスユニット長と経営企画グループ長を兼務。
いま、21世紀型のコンサルタントが求められている
──宮丸さんの前職は投資銀行のリサ・パートナーズ・取締役CFOだったと伺いました。なぜコンサルティング業界に転身をされたのですか?
宮丸 リサ・パートナーズ在籍時以前より複数の金融系企業の企画部門や事業戦略部門で仕事をしていましたから、コンサルティングファーム各社と一緒に仕事をする機会は多かったと思います。要は、発注者側だったわけです。
 ただ、その当時のプロジェクトの成果に対しては、物足りなさを感じることが何度かありました。
 金融ビジネスに飽き足らなくなり、そろそろ最後のビジネスキャリアを考えようと思い始めた頃に以前からお誘いをいただいたコンサル業界に興味を持ち、時代の流れに逆行するグレー・ヘアコンサルタントに転身する道を決断しました(笑)。
──転職先にアビームを選ばれたのはなぜでしょうか?
 アビームは創業当初から「リアルパートナー」を経営理念の中核に置き、クライアントの未来を最後までサポートすることにこだわる姿勢をとても大切にしています。
 私自身、入社前に何度かアビームと仕事をしてきましたが、このゴールに向けて最後までとことん寄り添う「リアルパートナー」という価値観に好感を持ちました。このようなファームが21世紀の新たなコンサルティングサービスを創造するのだと感じ、自分もアビームにジョインしたわけです。
──発注者側だった頃にコンサルティングファームに感じた物足りなさとは何だったのでしょうか。
 提供する価値の源泉が、海外の先行事例に基づく「ベストプラクティス」に終始していたことです。
 既存のフレームワークに落とし込んで課題を抽出し、「課題解決」の唯一の手法として「ベストプラクティス」を実装する。それだけで高額な対価が請求されました(笑)。
 こうしたプロジェクトでは、その企業の未来や、その企業ならではの戦い方と真剣に向き合い、本当に解決すべき課題をクライアントと導き出そうとする姿勢は希薄でした。
 当然、改革の効果も限られた範囲に留まってしまいます。
──パターン化された「課題解決の手法」を売っていたということですね。
 その通りです。右肩上がりの経営環境を前提とした日本の大企業のクライアントには、過去の「ベストプラクティス」に基づくパターン化された「課題解決」で感謝されました。
 しかし、状況は変わりました。テクノロジーの加速度的進化によって、クライアントの経営環境や事業環境は激変し、変化のサイクルも日増しに速くなっています。
 リーマン・ショックにより落ちこんだ日本企業の収益性(例えばROE)は改善傾向にありますが、企業の既存の競争優位性は短命化する一方です。また、多くの日本企業はイノベーションの創出にも苦戦しています。
 日本企業の競争環境にパラダイムシフトが起きているのです。
 デジタル革命の到来によって、既存の事業がディスラプトされることに対する漠然とした危機感は感じつつも、次に目指すべき目標をどこに置くのか、次の優位性をどこに求めていくのか、はっきりとした「未来」を定めらない企業は増えているのではないでしょうか。
これからの「コンサルタント」に求められるものは何か
──「リアルパートナー」として、これからの時代にアビームの戦略ビジネスユニットがクライアントに提供する価値とはどのようなものでしょうか。
 アビームの戦略ビジネスユニットでは、“Real Partner for Your Next Advantage(次の優位性のためのリアルパートナー)”というコンセプトの下、クライアントの「次の優位性」をクライアントと最後まで共創する「リアルパートナー」への挑戦を続けています。
 伝統的なイシュードリブン(課題起点)の課題解決に加えて、機会発見から価値創造のプロセスをクライアントと共創する「オポチュニティドリブン(機会起点)の価値」にこだわってサービスを磨いています。
 その結果、「カスタマージョブやデジタルテクノロジーを起点とした事業創造や企業変革」「データアナリティクス起点の経営変革」といった新たな領域が拡大しています。
 これらはすべて、オポチュニティドリブンでクライアントと「次の優位性」を共創するサービスといえます。クライアントに提供する価値が変われば、コンサルタントに求められる能力も変化するのです。
──いま、コンサルタントに求められる能力とはどのようなものでしょうか。
 伝統的なイシュードリブンのコンサルティングスキル、つまり問題解決力を磨き続けることは、コンサルタントとして必要条件です。例えば、情報収集力、思考力、仮設検証力、フレームワークを使いこなす力などがそれに該当します。
 これらに加えて、最近は、“More creative & collaborative(もっと創造的に、もっと協働して)” というキャッチフレーズをチームメンバーと共有するようにしています。クライアントに留まらず、社内外の協働者と共創の機会を創ることによって、新たな価値創造に挑戦する力を伸ばしていこうということです。
 これからのコンサルタントには、この共創力が不可欠だと感じています。
──オポチュニティドリブンの価値にこだわるという意味では、他にも必要となる能力はありますか。
 旧来のコンサルタントは、能動的に仮説検証を繰り返し、解決すべき課題を見つけるトレーニングを繰り返します。
 これからのコンサルタントには、新たな発見を捉えて、それにビジネスの観点で解釈を加え、新たなオポチュニティへと進化させる力、文脈力が求められていると思います。
──そうした「文脈力」や「共創力」を持ったコンサルタントをどのように育成するのですか?
 問題解決力を磨く場合と同様に、様々なトレーニングメニューを実施したり、外部のトレーニング機会に積極的に参加してもらったり、学習のための環境を充実させています。
 ただ、それだけでは不十分ですから、実際に社内外の人たちと共創する舞台を用意して、数多くのプロジェクトで実践を繰り返しています。
 例えば、“Co-Creation Hub”という仕組みでは、クライアントと社内外のナレッジを繋ぐプロセスを用意しています。世界中のスタートアップ経済圏と日本企業を繋げた事業開発プログラムや、企業の保有するデータをAIで分析したデータドリブンの文脈から企業変革を行うプログラムなどがその一例です。
 クライアントとのプロジェクトにおいても、共創によって新たな事業を創造し、その運営もクライアントと共同でおこなうケースや、新たなデジタルプラットフォームの構築に我々が参画し、一緒にエコシステムを拡大させるケースなども増えています。
 コンサルタントがオポチュニティドリブンの価値創造を実践する舞台を数多く用意して、社内外、世界中の人たちと「未来志向」「未来思考」で踊ってもらう。
 それが文脈力と共創力を生み出す近道だと確信しています。
21世紀のグローバル総合コンサルティングファームとして
──アビームといえばITコンサルティングのイメージを持つ人が多いと思います。様々なクライアントに合わせた価値提供をどのようにおこなっているのでしょうか。
 アビームはデロイトグループから独立した会社です。
 独立直後はリース会社向け基幹システムの構築やERPソリューションにフォーカスすることでクライアント企業数を拡大してきました。コアであったビジネスコンサルティングをIT領域にも拡げることで、グローバルグループからの脱退によって脆弱化した事業基盤を強化していったのです。
 そして、アビームのクライアント数はグローバルで戦う日本企業を中心に年間950社にまで拡大しました。
 現在は、アビームそのものがこれらのクライアントにとってのハブとなり、アビーム生態系として相互に成長する場(ABeam Ecosystem)になることを目指しています。
 現在のアビームのサービスポートフォリオはERPを含むエンタープライズアプリケーション領域が約40%、戦略や企業変革を中心とするビジネスコンサルティング領域が約30%、残りがアウトソーシングや事業運営となっています。
 グローバルで比較すると、典型的な総合コンサルティングファームの事業構造に近いと思います。
 これも時代に応じて、クライアントへの提供価値を追求し続けてきた結果といえるでしょう。
──アビームがこれから目指す姿はどのようなものでしょうか?
 アビームという名前は「アジアン・ビーム」(アジアの光線、力)に由来します。その名のとおり、アジア発・日本発のコンサルティングファームとしてメイドインアジア、メイドインジャパンの価値をアジアから世界に届ける存在であることを自分たちのユニークネスとしてきました。
 現在進行中の2020年に向けた経営ビジョンにおいても、アビームは世界の市場で戦う日本企業を本気でサポートする唯一のコンサルティングファームとして、世界中のどのコンサルティングファームにも負けないポジションを築こうとしています。
 同時に、アジアからグローバルチャレンジする企業を支えるポジションに立つことも我々の役割だと考えています。
 日本のみならずアジアの産業構造を変革する局面で力を発揮し、それを下支えすることが21世紀の「アジアン・ビーム」の使命になるでしょう。
(取材・編集:呉琢磨、野垣映ニ 構成:横山瑠美 撮影:岡村大輔 デザイン:黒田早希)