[東京 2日 ロイター] - アスクル<2678.T>の定時株主総会が2日開かれ、岩田彰一郎社長と独立社外取締役3人の取締役再任議案が、ヤフー<4689.T>やプラスなどの反対で否決された。この結果アスクルは、東証1部2148社の0.3%しかない独立社外取締役ゼロの企業となり、コーポレート・ガバナンス(企業統治)上、大きな問題を抱えることになった。

再任を否決された独立社外取締役は戸田一雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の3人。アスクル側の吉田仁氏、吉岡晃氏、木村美代子氏の3人と、ヤフー側の輿水宏哲氏、小澤隆生氏、今泉公二氏(プラス社長)の3人は再任が承認された。

岩田氏は総会終了後の記者会見で「資本の論理を振りかざして、あとのルールは無視していい、上場企業における独立役員も自分たちの意に沿わなかったらぶっ飛ばしていいというのが許されるのが日本の資本市場の現実だ」とヤフーの対応をあらためて批判した。

独立社外取締役の再任拒否をめぐっては、日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(牛島信理事長)が「独立社外取締役の判断が自らの判断にそぐわないからといって、支配株主が再任を拒絶できるのであれば、独立社外取締役は支配株主の意向をうかがうこととなり、期待される役割を果たせなくなる」と指摘しているほか、日本取締役協会も「独立社外取締役まで全員不再任としたのは、親子上場企業のガバナンス上、重大な問題だ」と批判している。

総会では、4人の再任に反対しなければならないほどの緊急事態なのかという質問が出た。これに対してアスクル社外取締役を務めるヤフーの小澤取締役は、個人向けインターネット通販事業「ロハコ」の赤字が大きいことを挙げ「由々しき緊急事態だ」と回答。「(再任反対の)議決権行使でコーポレート・ガバナンスがおかしくなるのではないかというのはおっしゃるとおりの疑念だが、これは苦渋の選択。アスクルの企業価値最大化のために、やむにやまれずやっている」と述べ、株主の理解を求めた。

今回のヤフーの対応について、ソフトバンクグループ<9984.T>は「孫(正義社長)個人は投資先との同志的な結合を何よりも重視するため、今回のような手段を講じる事について反対の意見を持っている」とした上で「本件はヤフーの独立性を尊重して、ヤフー執行部の判断に任せている」とのコメントを発表した。

*内容を追加しました。

(志田義寧)