【堀江×森岡】戦略と情熱を投資すれば、沖縄はハワイを超える

2019/7/15

なぜ沖縄にこだわるのか

──先ほど堀江さんの宇宙事業の話がでましたが、森岡さんも今、沖縄のテーマパーク開発に挑んでいます。政治や規制などの限界を感じることはありますか。
森岡 もちろん規制はあります。でも、堀江さんの言うように本当は「やる気の問題」と言えそうです。
「なぜそこまで沖縄にこだわるのか」とよく聞かれますが、沖縄に観光コンテンツの投資を呼び込むことは、50年後、いや100年後の日本社会に変化を起こせるチャンスがあると思っているからです。テーマパークはその大きな変化の起点になります。
沖縄を中心に飛行機での移動3時間圏内の円を描くと、アジアの主要都市はほとんど入っています。沖縄は今でさえ人口2億7000万人の商圏で、いずれすぐに3億5000万人になります。
よく比較されるハワイで3時間圏内の円を描けば、人間はいなくて、住んでいるのはイルカだけ。ところが、ハワイと沖縄にはほぼ同等の人数が訪れています。その上、観光客の消費額はハワイが3倍近く、滞在日数も全然違います。
森岡毅/刀CEO
1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、96年P&G入社。ブランドマネージャーとして日本ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後、2004年にP&G世界本社(米国シンシナティー)へ転籍、北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年にUSJ入社。12年、同社CMO、執行役員、マーケティング本部長。USJ再建の使命完了後、17年、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立。マーケティングで日本を元気に」という大義の下、数々のプロジェクトを推進。近著に『苦しかった時の話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』がある。
ハワイも海はキレイですが、沖縄の場合は離島に行けば究極の海があり、なおかつ近い。それなのに、なぜ沖縄よりもハワイが栄えているのか。
この差は何なのかと言えば、ハワイは情熱とお金を投資した人がいるからです。軍港しかなかった1960年代のハワイに、志のあるアメリカ人が観光開発のために莫大な投資を戦略的に行ったからこそ、50年たって今のハワイになっているのです。
一方、今までの沖縄には本気で投資をする日本人がまだまだ足りていません。でも、戦略と情熱を投資できれば、成長するアジアの中心にあってポテンシャルで大きく上回る沖縄を、ハワイを超える“輝く宝石”にできないはずがないと考えているのです。
とはいえ、テーマパークは土地とお金だけでなく、ノウハウとアイデアの4つがそろわなければうまくいきません。この奇跡が実る確率は決して高くはないので、ハラハラの勝負ではあります。
(写真:bee32/istock.com)
堀江 沖縄の開発ですが、僕はうまくいくと思っています。僕は沖縄によく行くので、そのポテンシャルを常々感じています。沖縄には奇跡の自然条件がそろっていますから。
実はこれは沖縄に限らず日本全体に言えることです。今の日本の歴史と文化を作ってきたのはこの自然条件ではないでしょうか。たとえば香港の乾物屋で売っている最高級の干しアワビは北海道産です。これは何百年前から変わっていません。
中国は沿岸部で三流品しか取れないので、江戸時代で言う俵物(対清貿易向けに輸出された海産物)を今も輸入し続けているわけで、これは完全に自然条件になります。
北海道をみても、ニセコのようにパウダースノーが毎日ドカドカと降るスキーリゾートは世界にどこもありません。アルプスもウィスラーもソルトレイクもニュージーランドも、ニセコほどではないです。オリンピックを開催した韓国の平昌は、雪が降らないから人工降雪させましたよね。
ニセコにパウダースノーがドカドカと降るのも、日本海と日本列島の山脈のおかげ。同じように日本の自然に恵まれている沖縄も、奇跡の島と言えるはずです。