「KOTLER AWARD JAPAN 2018」受賞者がコトラーにプレゼンする!

2019/7/13
昨年、開催した「Kotler Award Japan 2018」。受賞特典として、コトラーアワード最優秀賞・ヤッホーブルーイングの稲垣聡氏、スタートアップアワード最優秀賞・SmartHRの岡本剛典氏、渡邊順子氏とともに、今年3月、米国フロリダにコトラー氏を訪問。マーケティングの神様、コトラー氏の目の前でマーケティング戦略をプレゼンした模様をNewsPicks Brand Design小西悠介がリポートする。

受賞特典は米国フロリダにコトラー氏を訪ねる旅

2018年10月に日本で初めて開催した「Kotler Award Japan 2018」。応募総数約60社から、表彰されたのは以下の5社。うち、最優秀賞のヤッホーブルーイングとSmartHRには、米国でコトラー氏から直接、マーケティング戦略へのアドバイスをもらえるというのが、受賞特典だ。
表彰式から半年後、今年3月11日、ヤッホーブルーイングのマーケティングディレクターの稲垣聡氏、SmartHRのVP of Marketingの岡本剛典氏、同PRの渡邊順子氏と共に、コトラー氏の自宅のある米国フロリダへ出発した。

青い空と海の美しい町・サラソータに到着

我々が向かったのはフロリダ州南西部にある町、サラソータ。白い砂浜と青い海が美しい米国屈指の海岸リゾートで、リタイアした富裕層が多く住む高級住宅街が広がる。
世界中に自宅を持つコトラー氏だが、このサラソータの家はお気に入りのひとつ。マーケティングの神様に会えるという高揚感に加えて、フロリダの開放的な雰囲気に、我々一行の気分も多いに盛り上がる。
青い空と美しいビーチが広がる町・サラソータ
滞在したホテルは、「ART OVATION HOTEL」。実はここは、コトラー氏から「サラソータに最近、クールなホテルができた」とおすすめされた場所。ホテル内にはいたるところにアートが飾られ、サラソータでの滞在をゴージャスなものにしてくれた。
コトラー氏とのミーティングもこのホテルで行われることになっており、ますます期待が高まる。

コトラーインパクトCMOファヒム氏と会食

到着した日の夜は、コトラーインパクトCMOのファヒム・キブリア氏と打ち合わせを兼ねた会食。ファヒム氏は、昨年10月の「Kotler Award Japan 2018」にも参加してくれており、受賞者とは久しぶりの再会となった。
コトラー氏の右腕・ファヒム氏。昨年、日本で開催した「Kotler Award Japan 2018」は、ほかの国のAwardと比べても非常にクオリティが高かったと語る
翌日のコトラー氏との面会についての打ち合わせを兼ねたディナー。フランクなムードで会話も盛り上がる
手早く打ち合わせをした後は、ファヒム氏を囲んで気のおけない会話に花が咲く。ファヒム氏がコトラー氏の講演に感銘を受けて、医療の世界からキャリアをチェンジしたというエピソードがとても印象に残った。
「医者が治療できる患者の数は限られているが、マーケティングに携わることで世の中の多くの人に幸福をもたらすことができる」(ファヒム氏)
「マーケティングで世界を変えたい」というコトラー氏やファヒム氏の強い思いを、改めて感じた。

好奇心とパワーがみなぎるコトラー氏

3月13日、いよいよコトラー氏とのミーティングがスタート。自宅から訪れたコトラー氏を緊張して出迎える我々に、気さくに話しかけてくれるコトラー氏。88歳とは思えないはつらつさと、人柄のよさがにじみ出るコトラー氏に、我々の緊張も一気にほどけ笑顔があふれる。
「今の日本のリアルなマーケティングがどうなっているのか、具体的にぜひ教えてほしい」(コトラー氏)
好奇心旺盛な瞳で我々に問いかけるコトラー氏。そのパワーには、終始、圧倒された。
丸テーブルを囲んで、直接コトラー氏と話す稲垣氏(右)と岡本氏
コトラー氏を前に、さっそくヤッホーブルーイングとSmartHRからのプレゼンが始まる。
まずは、ヤッホーブルーイングの稲垣氏。ファンを巻き込むマーケティング戦略に、コトラー氏から次々と質問が飛ぶ。「よなよなエールを広めることの意義はどこにあるのか?」「さらなる成長戦略をどのように描いているのか?」。イベントを駆使してファンを増やすという同社の手法は、「非常にきっちりとマーケティングをしている」と高く評価してくれた。
ヤッホーブルーイングのマーケティングについて矢継ぎ早に質問を投げかけるコトラー氏
続いてクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRの岡本氏のプレゼンが続く。テレビCMをうまく使ったマーケティングで成長を遂げている同社。人事管理は国によって事情が異なるため、まずは日本企業の人事管理システムを説明するところからスタート。コトラー氏は、「ここに目をつけたのはすばらしい。非常に可能性のある分野だ」とコメントする。また、日本のスタートアップがどのようなマーケティング戦略を進めているかに、大きな関心を寄せているコトラー氏。日本のスタートアップ事情についても質問が飛ぶ。スタートアップで成功を収めているSmartHRには、その点でも注目をしてくれたようだ。
「スタートアップとして目覚ましい成長を遂げているSmartHRの戦略に可能性を感じる」(コトラー氏)

日本のマーケティングから世界を変えてほしい

2社のプレゼンテーションや質疑応答を終え、非常に満足してくれた様子のコトラー氏。今年、開催する「Kotler Award Japan 2019」への期待の言葉も。
「我々はKotler Awardsを世界各国で開催することで、よりよいマーケティングを広め、さらに進化させていきたいと考えています。マーケティングは世界を変えていくもの。日本ではマーケティングの本質への理解は進んでいると思います。さらにすばらしいマーケティングを展開して、日本がマーケティングの分野で世界をリードする存在になってほしい」(コトラー氏)
今回、コトラー氏に直接会う機会を得て、一番驚いたのは、その高い意欲とマーケティングにかける熱意。マーケティングの世界的な第一人者でありながら、我々から日本の最先端のマーケティングがどうなっているのかを学びたい、という気持ちがひしひしと伝わってきた。その飽くなき探究心こそが、コトラー氏が「マーケティングの神様」と呼ばれるゆえんでもあるのだろう。
日本のマーケティングへの期待を熱く語るコトラー氏
2時間にわたった、コトラー氏との濃密なミーティング。この体験は、「経営をアップデートし、世界を変えていくマーケティングの力」について改めて考えさせられる、非常に刺激的なものとなった。
新しいマーケティングの考え方を貪欲(どんよく)に吸収されようとするコトラー氏の姿には、非常に感銘を受けました。「次は1000人のあなたの会社のファンと一緒にお会いしましょう!」と、ユーモアあふれるコメントでファンマーケティングを評価していただけました。
また、当社の「ビールで世界平和を達成する」という目標に真剣に助言をいただいたことは、驚きとともに、自分たちへの自信となりました。コトラー氏と直接対話したことで、マーケティングの役割が世界をよりよい方向に変えていくことであるという、一段高い視点を持つことができました。
コトラー氏に実際にお目にかかる前は、威厳のある学者肌な方を想像していましたが、とても親切でユーモアにあふれる人間性に、こちらも緊張がほどけるほどでした。
SmartHRがベンチマークすべき企業、SNSを活用した施策などについて、かなり具体的にアドバイスをいただけたことが印象的でした。今後の施策のチューニングに大いに役立てたいと思います。「Kotler Award Japan」にエントリーすることは、受賞いかんにかかわらず、マーケティング施策を整理する良い機会となるはずです。

今年も開催! 「KOTLER AWARD JAPAN 2019」

昨年に引き続き、今年も「Kotler Award Japan 2019」の開催が決定。すでにエントリーはスタートしている。今年は10月の表彰式にコトラー氏も来日し、参加する。
最優秀受賞者には、昨年の受賞者のようにコトラー氏を囲んだ対面ミーティングを予定している。「Kotler Award Japanのクオリティは非常に高い。昨年よりさらに充実したものになるに違いない」と、コトラー氏も今から高い期待を寄せている。
「マーケティング4.0」を超える挑戦へのチャレンジを待っています。
(執筆:小西悠介 編集:久川桃子 デザイン:九喜洋介)