(ブルームバーグ): 国際分散投資を進める農林中央金庫は、特定の事業やプロジェクトを対象に採算性を評価して融資するプロジェクトファイナンス(PF)事業の拡大を目指す。英国を中心に手掛けてきた欧州ではドイツやオランダなど対象国を広げるほか、南米での案件獲得も積極的に検討する。景気変動の影響を受けにくい同事業の強化で資産の積み増しを図る。

プロジェクトファイナンス部の若林大介部長代理はインタビューで、2015年に専門部署を設けた同事業では、一定の知見を蓄えたとして「次のステップ」への準備が整ったとの認識を示した。今後は対象国や融資対象となるプロジェクトを広げることで、「多くの選択肢からキャッシュフローが安定している案件を選別できる環境をつくりたい」と語った。

農中は全国の農協や漁協の組合員が地域連合等に預けた貯金のうち、余剰資金を預かり運用している。19年度から5年間の中期経営計画では、投資ビジネス分野における景気変動への耐性強化を掲げ、PFを柱に位置付けている。

PFでは、ロンドンやニューヨーク、シドニーの各拠点にも専門の担当者を配置するなどして18年3月末までに計120件の融資を実行。海水淡水化や洋上風力発電、社会・交通インフラなどの海外プロジェクト向けが9割を占める。19年3月末の融資残高は約1兆3000億円と前年比で約3割伸びた。

高採算アセットであるPFは世界の主要金融機関が取り組んでおり、専門誌プロジェクト・ファイナンス・インターナショナルによると18年の市場規模は前年比23%増の約2830億ドル(約30兆円)。資産効率の向上を目指すメガバンクも力を入れており、18年の同分野のリーグテーブルでは三菱UFJフィナンシャル・グループが1位、三井住友フィナンシャルグループが2位だった。

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