[大阪市 29日 ロイター] - トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は29日の会談で、5月以降停止していた通商協議を再開することで合意した。トランプ氏は第4弾の対中追加関税の発動を棚上げし、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]に対する禁輸措置を緩和する方針を表明。中国は米国産農産物の購入を拡大する。

ただ通商合意の期限は示されず、かなりの部分で双方の対立点は残ったままだ。

それでも、1年近く続く米中貿易戦争ですでに多大な影響を受けている世界経済にとっては朗報となる。

両首脳は20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の合間に80分間にわたり会談。トランプ大統領は、「われわれは軌道に戻った」と述べた。

すでに中国からの輸入品2500億ドル(約27兆円)分に25%の関税を課している米国は、これまで除外してきたスマートフォンやパソコンなども含めた3250億ドル相当を新たに課税対象にする手続きを進めてきた。

トランプ大統領は、すでに発動した制裁関税は維持するものの、事実上、ほぼすべての中国製品に追加関税をかける第4弾の発動は差し控える方針を示した。

サミット閉幕後の会見でトランプ氏は「(今のところ)米国は関税を差し控える一方、中国側は米国産農産物の購入を拡大する」と述べた。ただ、農産物購入の拡大について、詳細は明らかにしなかった。

また「ディールが成立すれば非常に歴史的な出来事になる」と述べたが、「複雑なディール」と称する貿易合意をいつ達成できるか具体的な期限は示さず、合意を急いでいないと述べた。

トランプ氏はまた、ツイッターへの投稿で、習主席との会談は「予想よりも、かなりうまく」いったと指摘。「私にとっては取引のスピードよりも質のほうがはるかに重要だ。急いでいないが、状況は非常に良いようだ」と語った。

中国外務省の声明によると、習国家主席は会談で、中国企業を公平に扱うよう要請。国家主権や尊厳の問題として中国は中核的利益を守らなければならないと述べた。

「中国は米国との交渉継続に真摯な姿勢だ。しかし交渉は対等で互いに敬意を示すべきだ」と習氏はトランプ氏に語ったという。

<ファーウェイ問題に光明>

米国は、ファーウェイについて、安全保障上の脅威があるとみなし、米政府の許可なく米国企業から部品や技術を購入するのを禁止する「エンティティー・リスト(EL)」に加えた。

トランプ大統領は、ファーウェイをELから除外するか、商務省が数日中に協議する予定だと述べた。

中国はこれを歓迎。中国外務省のG20担当特使の王小龍氏は「米国がその通り実行するなら、もちろんわれわれは歓迎する」と述べた。

米半導体業界団体も「米中協議が再開し、新たな関税発動が棚上げとなったことは心強い。トランプ大統領のファーウェイに関する発言について詳細な情報を得るのを楽しみにしている」とする声明を発表した。

一方、米共和党のルビオ上院議員はツイッターで、ファーウェイに対する禁輸措置の解除は「重大な過ち」となると訴え、解除された場合は再び措置を導入するための法案が必要になるとの見解を示した。

ルビオ氏と民主党のワーナー上院議員は先月、ファーウェイ問題を貿易交渉の切り札にしないよう求めていた。

<安堵と疑念>

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は29日、サミット閉幕にあたり声明を発表、関税などの貿易障壁引き下げを訴えた。通商摩擦により投資や貿易が鈍化するなど世界経済が困難な局面にあると指摘した。

ただ週明けの金融市場は、米中の協議再開を好感するとみられる。

米中ビジネス協議会(USCBC)の中国担当バイスプレジデント、ジェイコブ・パーカー氏は「協議再開は財界にとって朗報で、徐々に悪化する関係に関し、幾分視界が開ける」と述べた。

その上で米中は今後、コンセンサス作りという厳しい課題に取り組むことになるが、米中は、双方の首脳のコミットメントにより事態打開に向けた持続的な道筋を歩むとの見方を示した。

だが、米中の「休戦」が長くは続かないとの見方もある。

キャピタル・エコノミクスは「今週末に休戦が実現したとしても、その後の協議で再び決裂して対立が激化する可能性は依然ある」と指摘した。

独保険大手アリアンツの首席経済顧問、モハメド・エラリアン氏も、「今回の停戦を耐久性のある貿易摩擦緩和につなげるのは決して容易ではない。とりわけ、状況を左右する問題が経済分野を超えて、双方の短期・長期的な国家安全保障上の問題に及んでおり、なおさらそうだ」と述べた。

*内容を追加しました。