【実名告白】当事者が明かす「老後2000万円不足」の真実

2019/6/14
夫婦の老後資金について「2000万円が必要」とする一文をめぐって、6月3日に公表された金融庁の報告書は政局の渦に飲み込まれた。
参院選を目前に控えて、麻生太郎副総理兼金融担当相が「政府のスタンスと違う」などとして報告書の受け取りを拒否する事態に発展した。
なぜ、報告書は「消され」ないといけなかったのか──。そして、そもそも報告書の狙いは何だったのか──。
報告書を取りまとめた金融審議会・市場ワーキング・グループ委員の中野晴啓・セゾン投信社長がNewsPicks編集部の取材に応え、実名で真相を明かした。
中野晴啓(なかの・はるひろ)/セゾン投信代表取締役社長、CIO(チーフインベストメントオフィサー)。1963年生まれ。1987年明治大学商学部卒。同年、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2007年4月から現職。(撮影:片平知宏)

このままでは報告書が紙くずに

──老後の資産という国民の関心が非常に高い報告書が議論を呼んでいます。しかし、取材を断る委員が多く、当事者の説明を聞く機会が限られています。
中野 金融庁が何もモノを言えないのはしょうがないので、発言する権利があるのは、委員しかいません。でも、こういう状況になったら忙しいと取材を断った方が無難です。
ですが、このままでは、真剣に作った極めて骨太な内容の報告書が、真に紙くずとなり、お蔵入りになります。
それは僕らにとっては名誉の問題でもあります。誰も動かないなら、僕が動こうと思って、取材に応じました。