【NHK 森田智子】何者でもない会社員はどう生き残るか?

2019/6/1
5月28日の『The UPDATE』は、NHKクローズアップ現代+とのコラボ企画。
「キャリアショックを生き抜く術とは?」と題し、圓窓代表の澤円氏、ハピキラFACTORY代表取締役の正能茉優氏、リクナビNEXT編集長の藤井薫氏、NewsPicks編集部の佐藤留美副編集長、NHKクローズアップ現代+ディレクターの森田智子氏、計5名をゲストに迎え、キャリアショックとの向き合い方について議論を交わした。
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番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、森田智子氏の「NHK武田アナでも異業種では自信なさげ」に決定。
NHKクローズアップ現代+でも、人生100年時代に向けて、特集を企画。
番組内で武田キャスターがベンチャー企業に留学している様子について、ベテランのアナウンサーでも異業種に飛び込む際には自信がなさそうだった、というエピソードだった。
取材したディレクターとして、また日本放送協会という大きな組織に属する会社員として、森田氏は「キャリアショック」に対して、どのように捉えているのか。
企業内内弁慶を脱却するためのスナック
番組冒頭で「キャリアショックと、どう向き合うか」という議題に対し、「変われない人どうする?」という疑問を投げかけた森田氏。この疑問について、こう答える。
森田 番組の中で、正能さんが「企業にいる間に、外の世界で自分のやりたいことを試してみる」と、おっしゃっていました。
このことは、私も番組の取材で専門家などからも聞きましたし、ひとつの答えかなと思います。
しかし、取材で出会った人たちの中には、セミナーや本などで学んでいても、実際に新たな環境に飛び込んでみると、会社人生で染み付いた「鎧」が邪魔をしてしまうケースもある。
マインドを変える難しさを感じた、と森田氏は番組内で語っていた。
キャリアについて柔軟な思考に切り替わらない、もしくは切り替えるのは怖い、と思っている人たち。
不安を抱いているであろう、そのような保守的な人たちにとっても、「副業」はベストな選択肢になりうるのだろうか。
森田 副業などでいきなりお金を稼ぐとなると、精神的にもハードルは高いと思います。
これは法政大学の石山恒貴教授がおっしゃっていることなんですけど、居心地のいいホーム(慣れ親しんだ会社など)から、居心地の悪いアウェーに「越境学習」することがこれからの時代は必要なのかと感じます。
ただ、アウェーに飛び込んでみるというのは、別にお金を稼ぐ場でもなくてもいい。PTAなどでもいいし、プロボノなどお金の生じないボランティア活動でもいい。
稼ぐ力とまではいかなくても、自分のスキルを別のところで役立てる、そういう一歩であれば消極的な人たちにとっても踏み出しやすいのかなと思います。
企業勤めで、ある程度金銭的にも余裕があるときに、外の世界を覗く選択肢をとれると、いざというときに慌てることもなく、自己防衛にもつながると思います。
実際には、希望退職を迫られたり、残業が激減するなど、ギリギリになって崖っぷちになるまで気づかない人がとても多いのです。
企業に守られているうちに、少しアンテナを高くもって、一歩踏み出してみるといいのかな、と。
そして、そんな一歩を踏み出す上で、森田氏は「スナック」を提案する。
森田 人材開発コンサルタントの木下紫乃さんが週に一回、昼間だけ開いている「ひきだし」というスナックがあるんです。
キャリスナとか昼スナって呼ばれているんですけど。実は、そのお店のママには6月6日の番組にゲストとして出演していただきます。
そこに行くと、色々な生き方をしている人たちとの交流が生まれて、会社の鎧も脱げていく。加えて、第三者の視点も得られます。
自分は会社でうまくいっていないと思っていても、社外の人から「あなたはこんないいところを持っているじゃない」と教えてもらえる。
また、「じゃあこんなこと一緒にやってみましょうよ」と誘ってもらったりする。
ママである紫乃さんや周囲の人が、キャリアの悩みの“壁打ち相手”になってくれる上に、お客さん同士でヨコのつながりが次々と生まれていく場になっているんですよね。
このように、気軽にキャリアの話をできる場がもっと増えていけば、もやもやしている人たちが、気軽に相談したり、横でつながりを得たりしやすくなる。
「自分のやっていることは間違っていないんだ、もう少しやってみよう」と勇気をもらったり、「もっと新しいことを始めてみよう」と気持ちが切り替わったりするんじゃないかな、と思います。
客観的な視点が、一歩踏み出すきっかけになるんじゃないかな、と。
大企業の社員だって何者でもない
実際に森田氏もキャリスナに行き、新たな気づきを得たという。
森田 やっぱり、企業に勤めていると自分を主語にして話すことが、いつの間にかできなくなっているんですよね。
NHKの番組でこういうことをやりたくて、という話はできるけど、NHKじゃないところで自分が個人としてやりたいこと、となると、まるで話せないな、と。
そういうことに気づくと、自分ってつまんない人間だなって落ち込むんですけど。ただ、それに気づくのがまた一歩なのかな、と思います。
会社員だって、自分のことを何者でもないと思っているんですよ。肩書きはあるけど、外したら何もない。
だから、いざ会社が何かあったらどうしようと思うと、不安はつのる。
森田氏がキャリスナを番組内で紹介したところ、NHKの同僚たちも「相談してみたい」と口々に話していたという。
はたから見れば、NHKは圧倒的に安定した組織だと思われるが、「キャリアショック」に対して、どのような眼差しを向けているのだろうか。
森田 NHKは恵まれているとはいえ、多くの大企業が岐路に立たされているように、キャリアショックは決して人ごとだとは思っていません。
残業代が減って、生活の変化を強いられているという話は、同僚の間でも、耳にするようになりました。
テレビ含むメディア業界の構造も大きく変わる中、一箇所だけで働くことで、豊かな生活が成立しなくなるかもしれない、という不安はあると思います。
ただ、副業は現時点で許されていないし、公共放送という立場上、これから実現するかはわかりません。
だからこそ、まずは鎧を脱いでスナックなどのアウェーな場所に行き視野を広げていくことを、私たちのような会社員にもおすすめしたいと思っています。
次回のテーマは『賃貸vs持ち家』
6月4日(火)は「賃貸vs持ち家 どちらが正解か?」 
賃貸生活を経て、夢のマイホームを⼿に⼊れる─。
住まいの理想像が、価値観の多様化により、崩壊しつつあります。「持ち家信仰」はいまだに根強いものの、家を借りる⽅が、⼈⽣の変化に柔軟に対応できるという声もあります。
賃貸か?持ち家か?それとも、新たな概念として、「⾃分⾃⾝の家を持たない」という選択もあるのか?
誰もが考える「住」に関する永遠のテーマを徹底的に議論します。
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<執筆:園田もなか、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>