[モスクワ/ワシントン 30日 ロイター] - 米国防総省傘下の国防情報局(DIA)のアシュレー長官は29日、ロシアが包括的核実験禁止条約(CTBT)に基づく核実験のモラトリアム(一時停止)に反し、低出力の核実験を実施した可能性があるとの認識を示した。ロシアは30日、米国側の指摘について根拠がないと反発した。

アシュレー長官はハドソン研究所の軍縮会議で「(あらゆる規模の核実験を禁止する)『ゼロイールド』に沿った核実験のモラトリアムをロシアはおそらく順守していない」と指摘。ロシアはCTBTで決められたゼロイールドを超える低出力核実験を行う能力があると考えていると語った。

ロシア外務省は声明で「そのような批判はまったく根拠がなく、わが国を再び中傷することを狙ったものだ」と指摘。ロシアはCTBTを完全に履行しているとし、米国側にCTBT批准を呼び掛けた。

ロシア下院国防委員会のシャマノフ委員長はインタファクス通信に対し、アシュレー長官のコメントは「無責任」とし、「核実験を秘密裏に実施することは不可能」と批判した。

また、包括的核実験禁止条約準備機構(CTBTO)のゼルボ事務局長はロシアがCTBTに違反した兆候は見られないと述べた。

ゼルボ事務局長は訪問先のソウルでロイターのインタビューに応え、メディアの報道はアシュレー局長の発言を「おそらく誇張している」との見方を示した。

「ロシアが低出力の実験を行ったということではなく、ロシアにその能力があるかもしれないという発言だった」と指摘した。

CTBTOの国際監視システムはどのような実験も検知していないとし「軍事的に重要な爆発実験はどんなものでも見逃さないと確信している。これまでにそうした兆候は認識しておらず、さらなる証拠を探している」と語った。

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