[パリ 28日 ロイター] - 国際エネルギー機関(IEA)は、先進国が原子炉の運転期間延長の方法を見いださない限り、原子力発電の急激な縮小によって気候変動対策やエネルギー安全保障が脅かされるとの見解を示した。

原子力は現在、世界で水力に次いで2番目に大きな低炭素電力の供給源で、世界の発電量の10%を占める。しかし、欧米の原発は老朽化が進んでおり、世界の原子炉の多くは安価なガスとの競争や安全基準の厳格化を背景に経済性が低下する中、廃炉となる見通しだ。

IEAは報告書で、「政策の見直しがなければ、先進国の原子力発電能力は2025年までに25%、2040年までに最大3分の2が失われる可能性がある」と指摘した。

先進国では過去20年で風力・太陽光発電能力が増加したものの、IEAの試算によると、2018年の世界の電力供給におけるクリーンエネルギーのシェアは36%と、20年前から変わっていない。原子力の減少が背景にあるという。

IEAは、今後20年間に予想される原子力発電の減少を相殺するためには、再生可能エネルギーへの投資を5倍に増やす必要があるが、それには巨額の費用がかかり、市民の抵抗が予想されるほか、送電網への大規模な投資も必要になると指摘した。

IEAのビロル事務局長は、脱原発を決めた国に再考を求めてはいないとした上で、原発維持を決めた国は業界への支援を強化する必要があると指摘。原子力を一段と支える取り組みがなければ、クリーンエネルギーへの移行の取り組みは著しく困難になると警鐘を鳴らした。