東大が新たな電子顕微鏡を開発 磁石を原子レベルで観察可能
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注目のコメント
おお、すごい。この筐体の感じはおそらく日本電子製。ARMシリーズですかね。
★本研究に関する論文はこちら。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10281-2
試料に磁場が行かないようにしている原理は、ResultのFig.1にあります。bとdの図を比較すると分かりやすいです。
ポールピース(※)を二重構造にすることで、試料面での磁場をキャンセルしているんですね。
※ポールピース
試料周辺に描かれている部品はポールピース(磁極片)と呼びます。金属製の部品で内部にコイルが入っており、電流を流すと強力な磁場が発生します。そこを電子ビームが通過すると、ローレンツ力によって軌道が曲げられ、強力な収束作用を受けます(電磁レンズ)光学でいうところの凸レンズの作用ですね。
なお、磁場を用いたレンズでは、凹レンズを作ることもできます。
凹レンズがあると、各種収差を抑えることができるので、電子線をより鋭く絞ることができ、それにより原子レベルの解像度が得られるのです。記事の装置も(書いてませんが)この収差補正機構付きのものと思われます。原子見えるらしいですし。
僕は普段非磁性のものしか扱いませんが、電顕内で励磁するような試料は、ほんと恐怖です。変形して観察できないだけならまだマシな方で、強力に励磁してすっ飛んでって装置内部のどこかに張り付いちゃった、みたいな話も聞きます。最悪解体整備です。想像するだけで白目です。
<追記>
Yamazakiさんありがとうございます。安心しました。普通の試料なら飛んでく事故はそうそう無さそうですね。どなたの言葉か忘れましたが、基礎科学の分野では「イノベーションは新しい観測技術によって生まれる」という言葉があります。見えることによって新たな学術・産業分野が広がります。