株式上場が噂されるAirbnbの発表

 世界中で一番人気のAirbnbの宿泊先はマンハッタンのロフトでも、バルセロナの海辺のアパートメントでもない。同社によれば、それはカリフォルニア州中部のアプトスにある、ごく小さな「マッシュルーム・ドーム」だそう。
 ホストのキティとマイケルが森の中にあるキノコ型の小屋をゲストに提供し始めたのは、Airbnbがサンフランシスコで設立された翌年の2009年。都市外から初めてリスティング(予約)に加わった宿泊先のうちの1つだという。
 Airbnbは年内の株式上場を計画中とされる。それを意識してか、PR活動を活発化させており、3月下旬には自社の異色の歴史を振り返るプレスリリースを発表した。
 そのなかで、同社はマッシュルーム・ドームについて「(ホスト登録)以来、1300件近いレビューが寄せられ、わずか9平方メートルほどの空間に世界各地からゲストを迎えています」と紹介した(注:レビュー数は現時点では1310件)。
「木々に囲まれたジオデシックドームのロフト&広いデッキ」と部屋の紹介ページでうたう小屋の所在地は、カリフォルニア州の都市サンタクルーズに近い小さな町アプトスにある面積約4万平方メートルの敷地の中だ。
 クイーンサイズのマットレスとシングル用のソファベッドがあり、3人まで宿泊が可能。カリフォルニア中部というエコ意識が高い土地柄らしく、バスルームには自己処理型のバイオトイレが備え付けられている。

従来と一線を画す宿泊体験、という原点

 リスティング(予約)ページには、森の中ならではの物音に関する注意書きもある。
「聞こえてくるのはたいてい、鳥やコオロギ、アマガエルの鳴き声、木々の間を吹き渡る風の音。でも敷地内には人も住んでいるので、人間の生活音がまったくしないわけではなく、ときにはチェーンソーの音もするかもしれません」
 この「居心地が良くて清潔な田舎風の小屋」は、Airbnbの大成功を支えた基盤の一部だ。
 全世界でのリスティング(予約)数が600万件を超え、株式上場を控える今では宿泊先リストに従来型の物件も加わっている。しかしその始まりを振り返ってみれば、ホテルや高級サービスアパートメントでの味気ない宿泊体験とかけ離れた風変りな宿泊先こそ、Airbnbの売りものだ。
 同社によると、現在ではマッシュルーム・ドームをはじめとする極小の家の登録数は約1万4000件。ほかに城が4000件以上、ツリーハウスが2400件以上ある。
 キノコ型ドームに、ぜひ泊まってみたい? それなら、予約はくれぐれもお早めに。既に今年10月まで、ほとんど空きがない状況だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Rosie Spinks、翻訳:服部真琴、写真提供:Airbnb)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with JEEP.