[ワシントン 17日 ロイター] - 来年の米大統領選に向けた民主党候補指名争いは、バイデン前副大統領(76)が支持率で他の候補を大きく引き離し、予想外に好調な滑り出しをみせた。

ただバイデン氏は今後、党内急進左派からの攻撃や過去の失言の蒸し返しに足元をすくわれる恐れもある。対立候補にとってはまもなく始まる候補者討論会がバイデン氏のリードをつぶす最初の好機となる。

リアル・クリア・ポリティクスによると、各種世論調査による民主党候補指名争いの平均支持率はバイデン氏が約40%で、2位のサンダース上院議員を20%ポイント以上上回っている。

大統領選の戦略に詳しい複数の専門家は、他の候補者間で最終的に対抗馬の絞り込みが進むが、バイデン氏は優勢を維持するとみている。

これは(1)民主党の指名争いで候補が乱立し、バイデン氏の対立候補を1人に集約するのが難しい(2)有権者が現職大統領の対抗馬に選ぶ場合にリスクを避けようとする傾向がある─という2つの理由からだ。

近年の米大統領選の指名候補争いは2000年のアル・ゴア氏(民主党)や12年のミット・ロムニー氏(共和党)で見られたように、早い段階でトップを取った候補者が指名を手に入れる例が多い。

また、08年には候補者が比較的少ない中でヒラリー・クリントン氏の対抗馬として支持を集めたオバマ氏が指名を獲得。16年にはやはり候補者が少ない状況でサンダース氏がクリントン氏に肉薄した。

しかし民主党の今回の候補指名争いは20人以上もの候補者が乱立して支持の呼び掛けや資金集めを行っており、候補者にとって状況は急激に厳しさを増している。

民主党のベテランであるジョー・トリッピ氏は、バイデン氏に対抗しようとしている候補者十数人から選挙戦について相談を受けたが、「そのたびにバイデン氏は思っているよりも手ごわいと伝えてきた」と話す。「誰であれ集団を抜け出すのは難しいだろう」という。

またバイデン氏にとっては、一部の有権者はトランプ氏の対抗馬を選ぶ際に知名度の低い他の候補よりもバイデン氏を支持する安全策を取るとみられることも追い風になっている。

しかし2004年の指名候補争いでジョン・ケリー氏の陣営を率いたロバート・シュラム氏は20年の大統領選はまだ流動的だとくぎを刺す。バイデン氏が大統領に就けば、史上最も高齢な大統領となるため、討論会で精力的な姿を見せる必要があるという。

シュラム氏は「指名候補争いはまだいくらでも状況が変わり得る。指名争いはバイデン氏の振る舞いに寄るところが大きい」と述べた。

また、党内の急進左派はバイデン氏の主張は穏健派過ぎるとみており、バイデン氏は過去の発言について釈明が必要となっている。

この1週間だけでもバイデン氏はアフリカ系米国人の大量投獄を引き起こしたと批判されている1990年代の犯罪法や気候変動対策などについて、これまでの姿勢が問題視された。

ロムニー氏の側近だったケビン・マッデン氏は「指名候補選びが最も激化する局面に入り、バイデン氏と真っ向勝負しない限り支持率が伸ばせないと他の候補者が認識するようになってからが本当の勝負だ」と語った。

(James Oliphant記者)