(ブルームバーグ): ソニー株が3カ月ぶりの高値。4月26日に発表した今期(2020年3月期)の連結営業利益計画が3期ぶりの減益となるものの、市場からはゲーム事業や半導体事業の堅調さが評価された。

株価は一時前営業日比5.7%高の5510円まで上昇し、2月1日以来の高値となった。売買代金は東証1部でソフトバンクグループに次いで第2位。

SMBC日興証券の桂竜輔アナリストは26日付のリポートで、今期の営業利益計画が市場の期待を上回り「ポジティブな印象」と評価。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮本武郎シニアアナリストはメモで、半導体の新棟建設への考えが示されているとして「利益成長鈍化への過度の懸念は後退しよう」と指摘した。

26日の発表によると、今期の営業利益予想は前期比9.4%減の8100億円となる見通し。ゲーム事業で前期比311億円の減益となる。プレイステーション(PS)4の販売台数減少や為替の影響に加え、次世代機の開発費が増加する。

スマートフォンを中心としたモバイル・コミュニケーション事業は470億円の赤字となる見込み。音楽事業は前期の子会社連結化の際の再評価益の反動で、975億円の減益。

画像センサー(CMOS)を主力とする半導体は前期並みの1450億円の営業利益となるとみている。工場は4-6月期からフル稼働しているという。

20年度までに6000億円を投資する計画だが、19年度内に生産設備を増設することを決めた場合、設備投資額は1000億円ほど増える可能性があるという。

会見した十時裕樹専務兼最高財務責任者(CFO)は前期に一時的な利益があったことを考慮すれば、今期は「ほぼ前年度並み」と説明。前期については「各事業に対する手応えを感じた一年」だとし、業績低迷時期に比べると次の事業の「仕込みができるようになった」と話した。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は「警戒していたよりはしっかりとした見通しが示された」と分析。ゲーム事業については、もっと低い見通しを出してくるとみられていたとした上で「恒常的に高収益が確保できる分野に育っている」と話した。

また昨年5月に発表した中期経営計画に関連し、エレクトロニクス事業とエンタテインメント事業の2020年度の営業利益目標を取り下げると発表した。最大8080億円としていた。

目標が各事業の長期的なトレンドや方向性を必ずしも適切に示すことができないこともあるためとしている。昨年の発表時から環境が大きく変化し、目標と実態に乖(かい)離が生じている分野があるという。

十時専務は実態との乖離の具体例として、ゲームが予想よりも好調に推移し前期の営業利益が計画発表当初から上振れたことなどを挙げた。主力の画像センサーについてもスマホ向けカメラが多眼化した追い風を受けるため、「20年だけの断面で論じるのはややミスリード」と判断した。

金融分野を除く連結の営業キャッシュフローの20年度までの3年累計値を2兆円以上とする目標については、現時点では2兆2000億円を上回る見通しだ。

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