目指すは「ヘルスケアのアマゾン」

リボンゴ(Livongo)の共同創業者グレン・トゥルマンが理想とするのは、彼らが提供する「データをベースにしたヘルスケアサービス」が、ネットフリックスやアマゾンのような形で運用される世界だ。
つまり、求められるものをオンデマンドで届け、データ分析を使って必要とされるものを予測し、カスタマーサービスを改善するのだ。
糖尿病の息子をもつトゥルマンは「糖尿病や高血圧の人に尋ねると、『われわれは自分の人生を生きたいだけだ。病気を追い払ってほしい』という答えが返ってくる」と語る。
12万人の糖尿病患者が利用する血糖測定器メーカー、リボンゴにとっては、価値ある目標だ。
リボンゴの測定器では、患者はすぐに自分の血糖データをリボンゴの分析エンジンに送信できる。リボンゴは高血圧の人向けに、スマートフォンと連動させて、カフ(腕帯)で測った血圧をクラウドに送信できる血圧計や、ワイヤレス対応の体重計も発表した。
患者は、こうしたすべてのデータを提供する代わりに、装置や試験紙、薬にさえも費用を払わなくてすむ。一方のリボンゴは、ビッグデータ分析を用いて、患者が自分の病気を管理しやすいようなサービスを提供する。

企業と契約、従業員の健康管理

血糖値を計った結果が正常値を超えている場合は、糖尿病のコンサルタントが90秒以内に電話かメールで連絡をくれ、状況を判断して、次に何をすべきか提案してくれる。
「散歩をしましょう」から「お医者さんに連絡しましょう」まで、アドバイスはさまざまだ。励ましの言葉をくれるだけのこともある。
患者は、リボンゴに毎日24時間いつでも連絡が可能だ。カウンセラーと話をし、より健康的な生活習慣についてアドバイスをもらうことができる。
リボンゴは、アマゾンやターゲットといった企業と契約。顧客企業は、リボンゴがモニターする従業員1人につき、月65~75ドル(約7300~8400円)を支払う。
だが、リボンゴを活気づけるもっと大きな構想がある。デバイスのデータ、さらにはこのシステムが患者たちに関してもっているほかのすべてのデータを、AIを使って絶えず分析するのだ。
そうすることにより、患者全体に見られるパターンを探し出し、新しい発見ができる。信じられないほど貴重な洞察が得られるかもしれない。もっと1人1人に対応したアドバイスを提供することもできる。

進化するデジタルヘルスケア

彼らが「AI+AI:応用健康シグナル」(NP注:AI+AIは、Aggregate〔統合する〕、Interpret〔解釈する〕、Apply〔適用する〕、Iterate〔繰り返す〕の頭文字を取ったもの)と呼ぶこのフィードバックの仕組みでは、リボンゴがすべてのデータをまとめるため、患者へのアドバイスがさらに正確になり、必要に応じて調整される。
リボンゴのジェニファー・シュナイダー社長は「われわれは、医療請求や医薬請求に関する情報だけではなく、食料品はどこで買っているか、通勤時間はどれくらいか、ジムに通っているかなど、健康を左右する社会的決定因子も調査する」と説明する。
「われわれは1人1人に合わせたアドバイスをしており、それは病気の経過や結果に影響を与えている」
シカゴのある病院で行われた調査によると、リボンゴのプログラムを利用した糖尿病患者たちは、血糖値の低下が顕著で、糖尿病関連の医療費も17%減ったという。全医療費の請求も11%減り、救急治療室の利用は21%減った。
全米の医療費は3兆5000億ドル(約390兆5000億円)に上るが、そのうち70%を慢性疾患が占める。つまり、リボンゴのターゲットとなりうる病気はほかにもあるということだ。関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病などが考えられる。
進化するデジタルヘルスケアの世界では、多くの医療問題に関して、患者が医者や救急治療室を必要としなくなるかもしれない。患者に必要なのは、接続されたデバイスと、タイミングの良いアドバイスだけになるかもしれない。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bill Saporito/Editor-at-large, Inc.、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:www.livongo.com)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.