どの道に進んでも生涯役立つのは何か

親は子どもの成功を祈るもの。でも「成功」の定義は人によって違う。
ジェフ・ベゾスは、あとで容易に覆せる決断なら、その決断に時間をかけすぎないことを学んだ。ウォーレン・バフェットは、成功とは、自分のことを愛してほしい人に実際に愛されることだと学んだ。
オプラ・ウィンフリーは、どの橋を渡り、どの橋を壊すべきか学んだ。スティーブ・ジョブズは、助けを求めることのパワーを学んだ。
どれも素晴らしいアドバイスだが、あなたの子が成功するために必要なスキルは何か。どんな道に進むのであれ、生涯にわたり大きな配当をもたらしてくれるスキルは何か。以下にそのリストをつくってみた。

1. 売り込みのスキル

「売り込み」と聞くと、相手を操るとか、圧力をかけるとか、おだてるといったことを連想しがちだ。「中古車のセールスマンが言いそうなこと」というイメージだ。
だが、「売り込む」とは「ある決断の背景にあるロジックと恩恵を説明すること」と考えれば、「売り込みのスキル」は誰もが持つべきものだとわかる。
あるアイデアが道理にかなっていると説得すること、あるプロジェクトやビジネスが利益をもたらすと上司や投資家に示すこと、部下に新しい手順のプラス面を理解させること。いずれも「売り込みのスキル」が必要だ。
売り込みのスキルとはコミュニケーションスキルであり、あらゆるビジネス、キャリアで、そして人間関係で極めて重要になる。

2. 助けを求めるスキル

スティーブ・ジョブズは「実際に、電話を取って助けを求める人はほとんどいない。だが、それが何かを夢見るだけの人と、何かをやり遂げる人の違いになることがある」と言った。
実際「手伝ってもらえませんか」というシンプルな言葉には、パワフルな意味がある。
第1に、この言葉には相手へのリスペクトがこめられている。「あなたは私よりもよく知っている。私にない経験やスキルがある」と認めているに等しいからだ。
第2に、この言葉は相手への信頼を示唆している。自分の弱さや不足を認め、相手の知識を信頼しているからこそ助けを求めるのだ。
一方「手伝ってもらえませんか」と言われた相手は、自分の経験や知識をどのくらいシェアするか決める裁量を持つことができる。
この言葉を発することで、あなたの子は本当に必要としている助けを得ることができる。

3. 時間を管理するスキル

「効率的な人」と「できる人」の間には大きな違いがある。
効率的な人は、いろいろなことがきちんと整理されていて、てきぱきこなしていく。「やることリスト」にどんどんチェックを入れて、プロジェクトを完成させ、物事を処理していく。
できる人は、こうしたことすべてができる。ただし、その「やることリスト」には「正しいプロジェクト」がリストアップされている。
子どもには、自分の目標達成の助けになる領域に集中し、仕事に打ち込み、結果を出すことを教えよう。それが時間管理のエッセンスだ。

4. ワークライフバランスの正しいスキル

働き方改革、仕事と生活の調和、ワークライフバランス──。最近誰もがその話をしているけれど、誰もがその実現に苦労しているように見える。
それは多くの人が、ワークライフバランスとは仕事の時間と自分の時間を等しくすることだと思っているからだ。つまり「8時間働いたら、自分の時間を8時間持つべきだ」というわけだ。
でも、そんなことは、ほとんどの人にとって不可能だ。たいていの人は、1日8時間以上働き、1日7時間以上の睡眠時間を取る(というか取るべきだ)。
そこに家事、食事、入浴、通勤、運動など、日々やらなければいけないことを加えたら、「自分の時間」は1〜2時間しか残らない。つまりこの方式では、ワークライフバランスは決して実現できない。
だから子どもには、違う計算方法を教えよう。「自分の時間」の量ではなく、質を重視するのだ。そして、自分の時間を最大限に生かすことに集中するよう教えよう。
それがワークライフバランスを実現する唯一の方法であり、充実した人生を送る最善の方法だ。

5. 心の知能指数を高めるスキル

心の知能指数(EQ)が高いと、仕事の成績がよくなり、報酬が増えて、全体的に成功し、人に操られるのを避けることができる。
EQは私たちの意思決定や態度に影響を与えるとともに、社会の複雑な側面を乗り切る助けになる。仕事ができる人は、自分と他人の感情を認識し、理解することができるものだ。
さらにEQは、仕事やプライベートの人間関係を改善する助けにもなる。

6. プレッシャーを楽しむスキル

米国人の約75%は、ストレスによる心身の不調を日常的に経験しているとされる。とくにZ世代(1995〜2010年生まれ)はストレスの管理や対処が下手で、恐怖や不安、ためらいから実力を発揮できないとされる。
だが、じつのところプレッシャーは歓迎すべきものだ。プレッシャーを感じるということは、自分にとって意義あること、重要なこと、そして本当に大切なことに直面している証拠だからだ。
だから子どもに、プレッシャーを感じるのは、頑張って一定のレベルに達した証拠だと教えよう。プレッシャーは特権であり、自分を追い込んでいるサインなのだ。
それは悪いことではない。努力しなければ大きなことはやり遂げられないし、なりたい自分になることはできない。

7. 賢くなるスキル

ジェフ・ベゾスは「最も賢い人は、つねに自分の理解を見直し、すでに解決したと思っている問題を再検討する。新しいものの見方や新しい情報、新しいアイデア、矛盾、そして自分の考え方に対するチャレンジをオープンに受け入れる」と言っている。
なぜなら知恵は、確実性のなかに存在するものではないからだ。知恵とは、無知の知だ。知恵とは、正しくあろうとすることではなく、何が正しいかを見つけようとすることだ。知恵とは、自分が間違ったときに気づき、それを潔く引き下がることだ。
間違いを恐れる必要はないと、子どもに教えよう。答えがわからないことを恐れる必要はないと教えよう。そうすれば、子どもは学ぶことをやめないはずだ。そして成長をやめないはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jeff Haden/Contributing editor, Inc.、翻訳:藤原朝子、写真:Hakase_/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.