【核心】これからの「日本のスタートアップ投資」の話をしよう

2019/4/21
「原石中の原石」のスタートアップを発掘し、メガベンチャーへと育てる伝説の投資家、DCMベンチャーズの本多央輔。
投資トレンドに背を向ける本多の投資哲学は、ヒットを打ち続けることではない。「ホームラン級」の起業家発掘を、連発することだ。
その本多は今、日本のベンチャー業界をどう眺めているのか。
孤高のベンチャーキャピタリスト、本多央輔の実像を解き明かすロングインタビューの最終回は、その投資哲学の核心に迫っていく。DCMというベンチャーキャピタル(VC)の正体とともに、解き明かしていこう。
*第一回
*第二回
本多央輔(ほんだ・おうすけ)DCMベンチャーズ ゼネラル・パートナー
幼少期を東京、テキサス、カリフォルニアで過ごす。三菱商事で自動車部門の海外営業や機械部門の新規事業開発などを担当。その後グロービス・キャピタル・パートナーズを経て2007年DCMに入社。柔道や極真空手の稽古を楽しみ、両競技の黒帯を保持。

「スピード出資」を生み出す秘密

──昨年、出資を決めたatama plusの場合、最初のミーティングからわずか2週間で出資を決めていますね。ものすごいスピードですが、DCMにおける投資の意思決定に秘密があるのですか。
本多 DCMは各国別のファンドではなく、グローバルファンド1つになっていて、投資の意思決定に関わるパートナーは世界に4人います。
アメリカに1人、中国に2人、あとは日本の私です。前回触れた、中国版ツイッターと呼ばれるWeibo(ウェイボ)の共同創業者の1人、ハースト・リンも含まれます。
この4人は完全にフラット。1票の重みは同じです。
毎週、4人で投資委員会を開きますが、全ての案件が一発勝負です。その場で議論して、その日に決めます。
──なぜそこまで早く決められるのでしょう? 海外のパートナーに、日本の市場環境を説明するだけでも、大変だと思うのですが。
本多 確かに一般的なVCだと、「アメリカではこうだ」「いやいや違うんですよ。日本の場合は……」といった、「教育」のセッションが長くなりますよね。
それがDCMでは起こらない。